2005年08月22日     このエントリーをはてなにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク

時間管理術の七つの嘘 その1 : 優先順位をつければうまくいくのか? (5)

前回は、「何を優先するか」についての判断基準について、


  1つですべてをカバーできている考え方は無い

そして、

  複数の考え方を頭に入れておき、
  複数の視点から判断することが重要


ということを述べました。

それでは、いろいろな考え方の紹介をもう少し続けていきます。

今回は「カエル」について考えてみたいと思います。
「カエルを食べてしまえ!」「頭がいい人、悪い人の仕事術」
ブライアン・トレーシー氏です。

ブライアン・トレーシー氏は、著書の「カエルを食べてしまえ!」の中で、
リストアップした仕事にランクをつける方法として、5段階に分ける方法を
提唱しています。

  5段階に分ける・・・? 3段階でもややこしいのに・・・。
  と私は一瞬思いました。

  だって、当時の私は、A5(Aランクの5番目)と、B1(Bランクの1番目)は
  本当にA5が優先でいいんだろうか? なんて悩んだりしていましたから・・・。


この著者が言いたいのは、そういうことではなく・・・、

 (『』内は引用です)

『 「A」は、非常に重要で、これをしなければ重大な支障をきたすもの。
  「B」は、あなたが「すべき」ものである。
  「C」の仕事は「したほうがいい」がしなくても何ら影響がないもの。
  「D」の仕事はほかの人に「任せてもいい」もの
  「E」の仕事は「しなくていい」し、しても何にもならないもの。   』

  (42ページ 9行目、43ページ 1行目、7行目、9行目、11行目より)

この本の中では図では示されていないので、簡単な図にしてみました。

ブライアントレーシー優先順位.JPG

私は前にも述べたように、ABCで分けることは重要ではないと考えています。
しかし、このDとEは重要だと思います。

残念ながら、この本ではこれ以上あまり深く述べられていません。
DとEに分類するために、私がとても重要だと思うことが書かれていないのです。

それは何かと言うと・・・、

DとEへの振り分けは、仕事が来たら、すぐにやること、なのです。

  ※ この本の中で、DとEを、ABC(自分の仕事)と分けているのも、
    最初から、自分の仕事のワクに入れない、という意味がこめられて
    いるような気がします・・・考えすぎだろうか?


では、なぜ、すぐに振り分けた方がいいんでしょうか?


例えば、Eの仕事の中にも2種類あります。
 「ほっといても全然問題のないもの」 と
 「ほっとくと誰かを怒らせたり、迷惑をかけたりするもの」
です。

後者の仕事の場合「やらない」ではなく、「受けない」という意思表示を
しておかないと、あとで面倒なことになる場合があります。


考えてみてください。


  あなたが誰かに仕事を頼んだけど、その結果が返ってこない。
  頼んだ人はやってくれるのかな?と期待をしながら待つわけです。

  そのあげく、相手がその仕事をほったらかしにしていたと分かったら・・・、
  待たされた時間が長い方が、怒りが大きくなるのが普通ではないでしょうか?

  私は、受けられない仕事はすぐに断るように、工夫することをおすすめします。
  仕事を受けないための秘訣にもいろいろあると思いますが、この話は長くなる
  ので、また今度にします。


  ちなみに、ほっといて相手が忘れてくれるのを待つ、という作戦を取る人も
  多いのですが、私はあまりおすすめしません(昔はやってました・・・)。

  その理由の1つは、上に書いたように、相手を怒らせる可能性があることです。
  もう1つは、相手が忘れてくれるのを待ってる間も、少しはその仕事のことが
  気になってしまうからです (罪悪感・・・でしょうか?)。


また、Eへの振り分けと同じように、Dへの振り分けもすぐにやった方がいいと
思います。

  Dの仕事を一度自分の手元に置いてしまうと、「これくらい自分でやって
  しまおうか・・・」という迷いが生まれてくることってありませんか?

  そうなってしまうと、人に振るのが悪いことのように思えてくるんです。
  そして結局自分でやってしまう・・・そういう経験ないでしょうか?


と、ここまでABCDE法のDとEの使い方について述べてきました。

このように、ブライアン・トレーシー氏の考え方もなかなか魅力的なところが
あります。そして、この人は、優先順位について、もう1つ言っています。


それは、タイトルにもなっている「カエルを食べてしまえ!」ということです。

ここで言う「カエル」とは、『最も難しくて重要な仕事』という意味です。
難しくて先送りしたくなる仕事から先に取り組め! ということですね。


  でも、本当にそうした方がいいのでしょうか?


私は2つのパターンに分けて考えた方がいいと思っています。

1つは「嫌な仕事」を「カエル」と見た場合。

  このときは確かに、とっととやっつけてしまった方がいいと思います。
  「案ずるより生むが易し」になることの方がずっと多いです。


もう1つは「大きな仕事」「手間のかかる仕事」を「カエル」と見た場合です。
この場合はちょっと危険です。

  「カエル」を食べるまでは、他のものを食べない、と決めてしまったことで、
  どっちも食べられなかった、という不幸な人を知っています・・・・私です。

  というのは、こういう仕事の場合、不確定要素、つまり、やってみないと
  分からないことが多いものです。何回もつまづいたり、待たされたりすること
  もあります。

  よくよく考えたら、「カエル」の間に他のものを食べる時間もあった。
  なんてことが起こりがちなのです。



では、大きい仕事と小さい仕事は、小さい仕事から片付けた方がよいのでしょうか?


この問題については、結構真剣に考えたこともあるのですが、
現在の私の現在の考えはこうです。





  「どっちでもええやん・・・」



いやいや、決していいかげんに言っているわけではありません!


時間管理関係の本の中にも、この問題について、
「大きな方からいくべきだ!」「小さな方からいくべきだ!」 
の両方の意見があります。確かに、ケースバイケースのような気もします。


ですが、自分の経験に照らしてよくよく考えてみると、これはいずれも、
「いかに目の前の仕事に集中できるか」という問題が根本にあるのです。


「やりかけの仕事がこんなにたくさんある・・・」 と気になっているのに
大きな仕事には集中できません。

また、「あの仕事、気が重いなあ・・・」 と心配事をかかえた状態で、
小さな仕事をテキパキこなすのは難しいです。


どちらにしても、「目の前の仕事に集中する」ことが必要です。

そして、私は、

「小さな仕事」対策としては、
やりかけの仕事のことを安心して忘れられるためのしくみ
(いわゆる To Do リスト的なもの)

「大きな仕事」対策は
大きな仕事のすべてを考えずに、分割して1つずつに集中するためのしくみ

が重要と考えています。


この「しくみ」をどうやって作るか? ということが重要であり、
それに比べれば、

「大きい仕事と小さい仕事のどっちを先にやるか問題」
は、ささいなことだと私は思います。

「このやり方がいい!」と決めつけている人は、それがたまたま
その人の置かれた状況や性格にあっていただけなのに、
すべての人に当てはまると思い込んでいるわけです。


ちなみに、ブライアン・トレーシー氏はどうか?

実は、「カエル」よりも後に刊行された、「頭がいい人、悪い人の仕事術」
では、どっちのやり方も「あり」ということを言っています。

考え方がいつの間に変わったんや・・・? (ーー;)
これはこれで、「どっちもあり」と言い切っている人は少ないから、
すごいことだと思いますけどね。



(気になったので、少し補足します!)
どっちでもいい。と言いましたが、一つだけ補足しておきます。

できれば、まとまった時間が取れるときに「大きい仕事」を
割り当てた方がうまくいくことが多い。と思います。
これは意識してみる価値はあると思います。


次回は「GTD」について考えます。
そもそも、このシリーズは「7つの習慣」と「GTD」の比較を
するのが目的だったのですが、なかなかたどりつきませんでした・・。



参考文献
ブライアン・トレーシー(門田 美鈴訳)
カエルを食べてしまえ!.ダイヤモンド社,2002

カエルを食べてしまえ!

ブライアン・トレーシー(片山 奈緒美訳)
頭がいい人、悪い人の仕事術.アスコム,2005

頭がいい人、悪い人の仕事術


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Posted by 水口和彦 at 23:20│Comments(0)TrackBack(0)

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