2006年10月21日     このエントリーをはてなにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク

目標達成や習慣形成にも役に立つ・・・PDCAサイクル


こんにちは。水口です。

今日は、まず訂正をさせてください。

昨日の記事で、間違っている箇所が一ヶ所ありました。
申し訳ありませんでした。

■ このブログの訂正箇所

昨日の記事で、
 
   (解説)
   Planの前に、「目標」 があることに注目してください。
   
   PDCAの 「P」 は「計画」、つまり「やり方」 を決めることです。

   PDCAサイクルの「P」 は、 事前に目標が立てられた上での、
   目標に近づくための「手段」 です。
   (ここも誤解されがちなポイントです。)
 

と書きましたが、正しくは

   (解説)
   Planの中には、「目標」 と「計画」 があることに注目してください。
   
   PDCAの 「P」 は「計画」、つまり「やり方」 も含まれます。

   PDCAサイクルの「P」 は、 目標を設定することだけではなく、
   目標に近づくための「手段」 や「仕組み」 が含まれます。
   (ここも誤解されがちなポイントです。)

と書くべきでした。間違いを伝えてしまい、申し訳ありませんでした。
(昨日の記事は修正しておきます。)


■ 訂正の解説

PDCAの「P」 は、「目標」 と「手段」 の両方を含むことがあります。


  P(Plan) = 「目標」 + 「プロセス」 


とされている場合が多いです(ISOでもそうです)。

  ここで言う「プロセス」 とは、
  業務の「仕組み」 (=目標達成のための手段) です。


私は、目標はそうそう変えるものではなく、手段・仕組みを改善していくのが
PDCAだというイメージを持っていたので、上記の発言になってしまいました。

しかし、 P(Plan) = 「目標」 + 「プロセス」 という解釈の方が、
一般的ですので、訂正させて頂きます。


■ 書籍も「誤訳」だらけ?

私の間違いを訂正するついでにというわけではありませんが、
書籍によくある間違いについて解説しておきます。


昨日、書店に行く機会があったので、いくつかの書籍を見てみましたが、
ISO9001の「誤訳本」 が多いのに驚きました。

↓この本には、原文が併記されています。


対訳ISO9001 品質マネジメントの国際規格

この本には、
『』内は引用です)

『Act : take actions to continually improve process performance. 』

(26ページより)

『Act : プロセスの実施状況を継続的に改善するための処置をとる。 』

(27ページより)

と書かれています。この訳は(一応)正しいです。

  process performance を 「プロセスの実施状況」 と訳すことに
  異議のある方もおられると思いますが・・・。


しかし、書店に並んでいる多くのISO9001の参考書的な本では、

Aは、「(目標を達成するための) 処置と継続的改善 」 という書き方が
されている本が、非常に多いのです。

これは、明らかに誤訳です。

 「継続的改善のための 処置」  と

 「処置 継続的改善」  では、全然意味が違います。


そもそも、PDCAが継続的改善のサイクルなのに、
その中で「継続的改善」 できるはずがありませんし・・・。


  (解説)
  PDCAの A=「処置」 という考え方もあります。

  例えば、プロセスではなく製品を主体に見た場合、
  (今は主流ではない考え方ですが)
  
  P (設計)  → D (製作)  →  C (検査・測定)  → A (処置)

  と見るPDCAもあります。

  実例で言うと、製品を検査したら、寸法が規格よりも大きかったので、
  その製品を処置(修正)して、使えるようにした。 といった感じです。

  この「処置」 という考え方自体は間違いではないですが、
  ISOの解説文としては、誤訳ですし、内容的にも適切ではありません。


「ISO9001」 とか「TS16949」 とか銘打った本なのに、原文の意図を
曲げた誤訳が多いのは、ちょっと悲しいですね。

  ※ TS16949は、自動車業界版ISO9001みたいなものです。
     16949という数字は覚えにくいのが難点です(笑
    私は以前、「広く良く(16949)」 という語呂合わせで覚えました。

  ※ もう少し補足しておきますと・・・、
    このPDCAの部分は、全体の概念の解説として用いられていますので、
    「誤訳本」 を使ったからといって、業務に直接の支障はないと思います。
    そこは、ご安心ください。


すみません。話がそれていますが、本題に戻ります。

今日の本題は、

PDCAサイクルでの「A」 では、何をするべきなのか?  という話です。

以下の例は、「プロセスを継続的に改善する」 という視点で、
私の考えを述べたものです。
(これがスタンダードというわけではありません)


では、昨日の記事のダイエットの例えを使って考えてみます。

■ 結果が良かった場合の 「A」 

PDCAの「A」 の内容は、「C」 の結果によって変わります。

C(評価)の結果が良かった場合の「A」 は、
最初のP(計画)を続けていくための「仕組み作り」 になります。

  例えば、「摂取カロリーの計算は、効果がありそうだ」 となったとしたら、

  ・毎日の摂取カロリー値を手帳に記録していこう
  ・1週間ごとに体重を記録していこう

  ということを決めるわけです。


最初にやってみようと決めたこと(計画)を、
今後も継続できるように(習慣化するように)仕組みを作るわけです。

もし、最終的な目標(体重)にまでは達していなくても、
それなりの効果があったのだから継続する。
そのための「仕組み」 を作る。 ということです。


習慣化できれば、この計画に対しては実行完了です。

次に来るPDCAは、同一路線でも、別路線でもいいわけです。

  「カロリー計算の精度を上げる」 という計画でもいいですし、 
  「運動してみよう」 という、別路線の計画を立ててもいいわけです。

  ※ 目標と計画は、同じ「P」 の中にあっても、別物です。
     目標はそのままに、計画だけを変更することも多いのです。
 

■ 結果がダメだった場合の 「A」 

C(評価)の結果がダメだった場合の「A」 は、
計画の修正であったり、新たな計画を立てることだったりします。


評価の結果がダメだった、というのは、

・D(実行)したけどだめだった
 → 「このP(計画)をやれば目標に近づく」 という仮説が間違っていた

・D(実行)できなかった
 → P(計画)に無理があった

という2つのパターンがあります。


前者の場合、

・計画の破棄 → 別の計画を立てる(全く別のアプローチを取る)

ことが必要であり、後者の場合、それに加えて

・計画を修正する(同一路線上でやり方を変える)

というのも考えられますので、どちらかの選択肢を取ることになります。


例えば、ダイエットの場合、

(当初の計画) : 毎日の総摂取カロリーの計算を習慣にしよう!

→(結果) : 計算が面倒だったので、出来なかった。

→(アクション1) : 計画の破棄 → 別の計画を立てる
            (「これはやめて、運動するダイエットに切り換えよう」 など)

というアクションもありますし、

→(アクション2) : 計画(やり方) を修正
            (「カロリー表を持ち歩くようにしよう」 など)

というアクションも考えられます。



■ 結局、A(Act) って何?

こういう実例で考えると、一般的に言われている、A = 「改善」 という解説と、
実際の「A」 は全く違うことが分かると思います。

A(Act)は、

(「P」 で計画したことに対して)

・維持、定着させるための「仕組み作り」 (結果が「○」の場合) 

・計画の修正 (結果が「?」や「×」の場合)

・計画の破棄 (結果が「?」や「×」の場合)

のいずれかを行うわけです。


  PDCAサイクルには、2つの役割があります。

  ひとつは、「仮説−検証サイクル」 としての役割。
  もうひとつは、「仕組み作り」 としての役割です。

  特に、結果が良かった場合は、「仕組み作り」 が重要です。


そして次のP(計画)は、

・同路線でレベルアップした計画 (結果が○だった場合)

・別のアプローチに切り換えた計画

・同じ路線で実行しやすくした計画 (実行に無理があった場合)

のいずれかを選択することになります。
そして、新しい計画に基づいた、次のサイクルをスタートするわけです。


■ 個人的目標にPDCAサイクルを応用する

文章では表現しきれないので、図を作ってみました。
(クリックで拡大図がでます。)

新版PDCAのフロー<br>

個人的な目標にPDCAサイクルを応用する場合、
このフロー図を参考にするとやりやすいと思います。

  しかし・・・「A」 を何と呼んだらいいのか?

  「処置」 にすると、最初の方に書いた別のニュアンスが入ってしまうので、
  上の図では「アクション」 と書いています。そのまんまですが (笑


この「アクション」には、

  ・結果を受けて、どうするか判断すること (選択すること)

だけでなく、

  ・結果が良かった場合、それが定着するための仕組み作り

というアクションもあることが重要です。


自分の目標や、習慣を見直すときには、これを参考にしてみてください。


■ この記事を書いたきっかけ

実は・・・この記事を書くきっかけになったのは、

ある書籍で、PDCAサイクルは欧米的手法なので、日本人には合わない
というようなことが書かれていたのを見つけたんです。

これはとんでもない話です。


ここは強調しておきたいのですが、

  現在主流のPDCAサイクル(プロセス改善の視点)の考え方は、
  自分の目標達成や習慣を見直すためにも、非常に役に立ちます。

  また、プロセスを改善していくという視点は、決して欧米型ではなく、
  日本的なアプローチです。


  ※ 例えば、日本を代表する自動車メーカー(T社)は、
    ISOは嫌いなようですが、やっていることはプロセス志向です。
    (というか、こちらが元祖です。)


上記の「PDCAは日本人に合わない」 的発言は、

PDCA =  計画 → 実行 → 評価 → 改善 → ・・・    または、

PDCA =  目標 → 実行 → 評価 → 改善 → ・・・ 

と見てるから、出てきた発言だと思います。

しかし、こういう見方では(一昨日、昨日述べたように)、
日本人だけでなく誰にも合いません・・・ (笑


ということで、PDCAを擁護するために、この記事を書いてみました。


  例えばISO9001は、実際にやった経験の無い方にとっては、
  非常に難解なものです。

  品質管理を仕事にしていた人間でさえ、
  「もう少し分かりやすく書いてよ」 と言いたくなります(笑

  ですから、業務上必要な方以外は、ご存知ないと思いますし、
  別に知らなくてもいいのかもしれません。

  それはそれでいいのですが・・・、
  不明瞭なPDCAの解釈が氾濫している気がするので、
  それに一石を投ずることができれば、と思います。



 すみません。長い記事になってしまいました。
 ここまで読んでいただいた方、ありがとうございます!

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今日の記事作成時間は、ここまで95分でした!
(昨日と合わせると、長いなあ・・・)



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Posted by 水口和彦 at 14:27│Comments(5)

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PDCAとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(点検)、Act(改善)の4段階を一周させ、業務改善をして行くことを言う。これは、仕事の基本であり、管理マネージメントや経営でも活用される。ISOでもこの考えが反映されており、繰り返し、繰り返し回す...
スパイラルアップ【HottaWorld::「活・喝・勝」】at 2006年12月18日 08:51
この記事へのコメント
Planには「目標」も含まれるというご訂正、すっきりしました。(笑)

おぼろげな記憶なんですが、「PDCAサイクルの上にはmission(あるいは上位目的)が存在する。」という内容のものを随分前に読んだことがあるような気がします。

それにしても"A"は、「改善に向けた処置をとること」なのでしょうが、うまく一言で言い表せる言葉はないものでしょうか?ベストマッチな言葉が見つかったら、ちょっとした発見かも、、、失礼しました。
Posted by makoto at 2006年10月22日 20:28
makotoさん、こんばんは。

すいません。間違えてしまいました。
この話、ほんと複雑ですね。

ご指摘の、missonが存在するというお話は、まさにその通りです。
今回は、言及しませんでしたが、ISOを例に取ると、
(品質)目標の上に「(品質)方針」が存在します。

これを個人的な目標設定として考える場合は、
「ヴィジョン」(将来こうなりたいという姿) があって、その下に
「目標」(期限や達成基準が具体的な目標) がある。

と考えるのが、しっくりくるように思います。


さて「A」ですが、日本語で解説されたものから選ぶとすれば「処置」なんですが・・・
ホント、いい言葉ないですかねえ。

「選択」、「分岐点」でもあり「仕組み作り」や「定着」でもある
というイメージで・・・うーん(汗
Posted by 水口@時間管理術研究所 at 2006年10月22日 22:27
 大変参考になる記事、ありがとうございました。
 いきがかり上、Aの意味を業務としてちゃんとつめないといけなくなったのですが、あやふやな記述ばかりで困っていました。
 さて、この件、私的にはActが持っている議決する、立法するというニュアンスが最も近いと思っています。
 アメリカ人自身でもISOの書き方はわかりにくいらしく、Act:Decide on changes needed to improve the processという、比較的平易な表現の解説が結構ありますね。おそらく、「さらなる改善点について方針を決めて、それをオーソライズする。」みたいなニュアンスなんだろうと思ってます。
 是非そういった感じで書き物にしていただければ、引用にも使えるのでありがたいです。
Posted by pon at 2006年10月30日 15:19
ponさん、こんばんは。
コメントありがとうございます!

Act = 議決する・立法する

という解釈、なるほどと思いました。

「さらなる改善点について方針を決めて、それをオーソライズする。」

という解釈も納得です。

こういう解釈を盛り込んで、書き直してみようと思います。
書けたら、また報告しますね。


Posted by 水口@時間管理術研究所 at 2006年10月30日 20:43
こんにちは。
拝読いたしました。

記事から12年経ちました。

未だにPDCA回してるの見た事ありません。
PDCA一直線が並列で並んだものなら見たことありますが、それはどう見てもサイクルには見えません。

書店にはPDCAの本が氾濫してます。
大半がactの事actionと誤解している状況もまだ変わってません。まあそれはajustでも何でもいいのですが。

私は、サイクル回すのにactは要らん。が回答かと考えています。

理由1。現実にはcheckの結果が丸の方が少なく、その時actは用が無い。
NG判断はcheckの中で済んでいて、手段変更はplanでやるのでactは不要。
なのに何で無理して入れるのか不明です。

理由2。仕組みづくりはactで全部をやるには重過ぎるしまた一発でやろうとしても的を射ないし、何より次のplanとも必ずしも連動しない。
むしろactを待たずに次に行くべきだ。
そしてもし仮に一発で仕組みづくりをやらないとするなら、次に一周回って来た時には、前回の続きの仕組み作りと二周目で出た課題の仕組み作りが混在して混乱する。
これをどうやってまわすというのか。

したがって、サイクルを回すなら、plan do seeで充分。そもそも誰も解釈に迷わないし、回転速度も早いはず。

では仕組み作りは?というと、もう一つ新しい目標を立てて新しいPDSを回す。

逆にこれで何が問題なのか、世の中が回せもしないPDCAにこだわる理由は何なのか、私は理解ができません。
Posted by チャイコフ at 2018年08月31日 01:15
 

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