「発明の報酬」の応用で「成果主義」の問題点を解消する
こんにちは。水口です。
今日は「発明に関する報酬」の話と、
「成果主義の問題点を解決する」話です。
■ 職務発明に対する対価をもらいました
先週、前にいた会社の特許管理部門(別会社ですが)から、
1通の封書が届きました。
特許管理部門からの連絡というと、いつも内容は決まっています。
以前に開発した製品の特許に関する支払いです。
ちなみに、私は自動車のブレーキに使う部品の開発エンジニアをしていました。
その仕事で、入社して1、2年の頃に取り組んだある製法が特許になっています。
それで、その特許を使った製品が作られると、それに応じた特許使用料が、会社
から支払われるようになっています。
その額は、いつもは1件あたり数千円〜1万数千円、合わせて1万数千円か
多くて3万数千円くらいだったのですが・・・
今回は、一瞬目を疑いました。額が一桁多いのです(汗)
よくよく見ると、特許の使用料ということではなく、特許の「譲渡対価」という
ことでした。前にいた部門は、住友電気工業から切り離され、トヨタ系の会社と
くっつきましたから、それにともない特許が譲渡されたということでした。
(今後、使用料の支払いは無くなる代わりに、譲渡対価として一括して支払い
ますよ、ということです)
■ 「職務発明の対価」は不公平のもと?
こういう発明関係の報酬については、複雑な思いがあります。
先の特許使用料や譲渡対価は、会社に在籍していた頃から、
「本当にもらっていいのかな?」という思いがありました。
どういうことかというと・・・
先の特許は、私が入社してすぐに取り組んだ研究開発に関するものです。
その仕事はその仕事で、自分なりに考えたり苦労したりした結果のものです。
一方、その数年後に取り組んだ某社向けの開発では、それよりもさらに力を
注ぎましたし、頭も使いました。そして、その仕事は先の特許になった開発
よりも、さらに大きな利益を会社にもたらしたはずです。
(※ 製法開発と材料開発なので厳密に比較するのは難しいのですが)
しかし、後者の仕事は「特許」にはなっていないので、当たり前ですが、
発明の対価としての報酬はありません。
つまり、同じように会社に利益をもたらした仕事であっても、特許になって
いるものと、なっていないものでは、扱いが違うということです。
自分がもらっておいて言うのもなんですが・・・、
同じように仕事をして、同じように会社に利益をもたらしたとしても、
研究開発部門だけに、こういう特別な報酬があるというのは、なんだか
不公平感があるように思えるのです。
確かに、特許は会社にとって一種の資産ですし、場合によっては他社から
特許使用料を受け取ることもできるなど、将来も継続してリターンが得られる
ものです。
しかし、先の材料開発の話も、最初の車種に採用が決まった後も、その車が
生産されている間(と補給部品としてのニーズがある間)は生産されますし、
他の車種にも追加で採用されたりして、私が某社向け開発を離れてからも
何年もの間、会社に利益をもたらし続けます。
あるいは、たとえば人事や経理の仕事で、社内の業務効率を改善する
システムを開発・導入するような仕事なら、そのシステムを使い続ける間
は会社に利益をもたらし続けている、と見ることもできます。
話が長くなりましたが、働く者の実感や、会社にとっての利益を考えても、
特許になる仕事と、それ以外の仕事は特に変わらないわけです。
それなのに、特許になっているものだけが、特別に報酬が支払われる
というのは、(理屈はわかるけれど)感覚的には納得できないのです。
不公平感があるように思えます。
■ 「職務発明の対価」の良い点
というように、私は「発明」に対してだけ特別な報酬が付加されることは、
従業員に不公平な扱いをすることになる、と考えているのですが・・・、
その反面、良い点もあると思っています。
それは、「成果主義」のデメリットを補うことができる点です。
「成果主義」がなかなかうまく機能していないという会社は、まだまだ
多いと思います。それには、日本企業的な「責任と権限の不明瞭さ」も
関係しているでしょうけど、それ以外に、もっと根の深い問題があります。
※ ちなみに、私は日本企業的な「責任と権限の不明瞭さ」は
悪いことばかりではないと考えています。その話は別の機会に・・・
その問題とは、「評価される期間」の問題です。
「成果主義」は、基本的に1年ごとに評価が行われます。しかし、
「研究開発」などの業務は、1年という期間で見るのは短すぎます。
もちろん、その年度の「目標」として掲げたことが達成できたか否か、
という意味での評価はできます。しかし、その仕事が会社にどれだけ
利益をもたらしたか、という見方をするには、1年では不充分です。
もっと長い期間で見なければ、本当のところはわかりません。
たとえば、ある年度に3件の発明をした人と、1件の発明をした人
では、その年度には前者がより評価されるでしょう。しかし、後者の
発明が、会社に大きな利益をもたらしたとしたら、その人はもっと
評価されるのが筋です。
しかし、成果主義では普通、「前年度以前の仕事が現在もたらして
いる功績」は、評価の対象になりません。
一方、先の「職務発明の対価」は、実際に使われる発明をするほど、
後に報酬が返ってくるという仕組みですから、成果主義よりも長い
視点で、仕事の成果が報酬に反映されるというわけです。
これは、より「使われる発明」、「利益をもたらす発明」をしようという
インセンティブ(動機づけ)につながりますし、長い目で見て会社に
貢献した人の報酬を増やすという公平性もあります。
■ 成果主義の「要改善」ポイント
このように発明の対価を従業員に還元する仕組みは、成果主義の
問題点を補う効果があります。
(通常はその額が小さいので、効果は少ないですが)
これはこれで、公平性があるのでいいのですが、問題なのは、これが
「特許」とからめた場合にのみ適用されることです。
(最初にあげた「不公平感」のことです)
特許は取得できない種類の仕事であっても、後に会社に利益を
もたらすことになった仕事は、同様に評価すべきではないでしょうか。
つまり、
「前年度以前の仕事が現在もたらしている功績」も評価の対象にする
ということです。
こういう評価尺度を設けることで、不公平感も減りますし、何よりも
目先にとらわれすぎず、「後々、会社のためになる」仕事をやろうと
いう意識が高まるはずです。
もちろん、そんな制度があろうとなかろうと、後々のことを考えて仕事を
している人もいるわけですが、そういう人だって、過去の仕事がきちんと
評価されれば、うれしくないはずはないでしょう。
※ 特に明文化されているわけではないでしょうが、「終身雇用制」での
評価基準には、こういう視点もあったのではないでしょうか。
それが逆に、「過去の栄光」だけで評価されるという問題を生んでいた
可能性もありますが。そうならないためには、過去の仕事を過大に評価
しすぎないように尺度を明確にする必要がありますね。
※ こういう仕組みを取り入れたとすると、実績と評価の間にタイムラグ
が生じることになるので、人の入れ替わりが多い場合に難しさがあります。
しかし、それは実際に利益が生まれるまでの間にタイムラグがある以上、
ある程度仕方のないことではないでしょうか。つまり、タイムラグがあっても
いいから、より公正な評価をする、という考え方です。
この制度は、私が前の会社の仕事で何となく感じてきた矛盾を解消する
ために・・・という思いつきの話だったのですが、考えるほどに良い制度
だという気がしてきました。
どなたか、本当にやってみませんか?
「発明に対する対価」というと、「青色LED」に関する200億円の支払い
という判決が出たことが以前ニュースになりましたが、私はあれは発明者
の取り過ぎだと考えています。
その理由は、研究開発に対して金銭的なリスクを取っているのは、
あくまでも会社であり、研究者ではないという点にあります。
もちろん、発明者にも還元されるべきですが、利益の何割も持っていく
のは取りすぎだと思います。
(追記)
記憶違いしておりました。すみません。
200億円は一審の判決です。その後高裁で和解していますね。
和解金は遅延損害金含め8億円余り。これは少なすぎると
見るべきでしょうか・・・。
(※ その件はその件として、発明者の中村修二さんは尊敬しております。
『成果を生み出す非常識な仕事術』はかなりいい本だと思ってます)
今日の記事作成時間は96分でした。
では、また明日!
Posted by 水口和彦 at 23:55│Comments(2)│TrackBack(0)
時間管理術研究所の無料メールマガジンで
モチベーションアップしてみませんか?
バックナンバーはこちら
Copyright (c) 2005-2007 BizARK Inc. All rights reserved.
http://trackback.blogsys.jp/livedoor/k_minakuchi/51643732
この記事へのコメント
またまたタイムラグで失礼します。
昨今の成果主義の問題点、おっしゃるとおりだと思います。
○評価期間における短期的成果にフォーカスした評価
○目に見えやすい成果に対する評価
が元凶のようにも思えます。
この結果、将来の長期的成果の達成、
目に見えにくい、でも組織として必要な潤滑油的な成果など、
へのインセンティブが働かないしくみになっているような気がします。
このままでは、長期的に見て企業にとっても
決して良い結果には結びつかないような気がするのですが。
いかがでしょうか。
昨今の成果主義の問題点、おっしゃるとおりだと思います。
○評価期間における短期的成果にフォーカスした評価
○目に見えやすい成果に対する評価
が元凶のようにも思えます。
この結果、将来の長期的成果の達成、
目に見えにくい、でも組織として必要な潤滑油的な成果など、
へのインセンティブが働かないしくみになっているような気がします。
このままでは、長期的に見て企業にとっても
決して良い結果には結びつかないような気がするのですが。
いかがでしょうか。
Posted by makoto at 2008年06月13日 02:42
水口です。
makotoさん、こんにちは。
「短期的成果にフォーカスした評価」
「目に見えやすい成果に対する評価」
というのは、通常の制化主義の制度上、どうしても
抱えてしまう問題点のように思えますね。
少々「プロセス」の評価を導入しても、あまり変わらないかと・・・。
研究開発の場合は特に、結果が出る期間と、評価期間に
時間的な差が生まれますから難しいと思います。
(まったく違うところで、人事などもそうかと思います)
「長期的に見て企業にとっても決して良い結果には結びつかない」
というのは私も同意見です。うまくいく部署もあるとは思いますが・・・
makotoさん、こんにちは。
「短期的成果にフォーカスした評価」
「目に見えやすい成果に対する評価」
というのは、通常の制化主義の制度上、どうしても
抱えてしまう問題点のように思えますね。
少々「プロセス」の評価を導入しても、あまり変わらないかと・・・。
研究開発の場合は特に、結果が出る期間と、評価期間に
時間的な差が生まれますから難しいと思います。
(まったく違うところで、人事などもそうかと思います)
「長期的に見て企業にとっても決して良い結果には結びつかない」
というのは私も同意見です。うまくいく部署もあるとは思いますが・・・
Posted by 水口和彦 at 2008年06月16日 17:57
※ スパムコメント対策として、半角の「!」は使用不可の設定にしています。
申し訳ありませんが「!」は、全角文字を使用していただけますよう、
お願いいたします。




(参照リンクの無いトラックバックは受け付けておりません)