2008年07月10日     このエントリーをはてなにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク

意思決定のスピードアップのために: フラット化よりも○○○○


こんにちは。水口です。
今日は昨日の「組織のフラット化」についての補足です。


■ 「組織のフラット化」の一番の目的は

昨日コメントでご指摘頂いたのですが(ありがとうございます!)。
昨日の記事では「フラット化する」目的がそもそも何なのかという話が
抜けていました。

フラット化する目的は、よく言われるように「迅速な意思決定」にあります。
これが第一の目的です。

では、「フラット化」すれば迅速な意思決定ができるか? というと、
実際のところ、どうなのでしょうか・・・?


■ フラット化による意思決定のスピードアップ

組織の中で働いていると、意思決定の遅さにイライラしたり、
がっかりしたりすることがあります。

たとえば、私自身が経験した例では・・・

工場でも研究部門でもそうでしたが、改善やトラブル対策の予算を
取りたいときに、その承認をもらわなければいけない場合があります。

そんなときには、文書を回して承認をもらいます。そういう書類のことは、
私が前勤めていた会社では「起案書」と呼んでいました。一般には
「稟議書」と呼ばれることが多いです(ここでもそう呼ぶことにします)。

この稟議書をはじめとした承認手続きの関係は、時間がかかるものです。
「フラット化」されていなければいないほど、ハンコの数が多くなります。
それだけ、承認する人が多いわけで、その分時間もかかるということです。

そして、その承認手続きが終わらないと、せっかくの改善や対策が進められ
ません(予算が取れないと発注手続きができないため)。 これが困ります。

書類がなかなか返ってこない場合などは、誰のところで止まっているかを
確認するためあちこち電話するのですが、これこそ「ムダな仕事」です。
(これは電子化でマシになりますが・・・完全になくなるわけではありません)


「フラット化」して階層を減らせば、関与する人が減り、意思決定に
かかる時間が短くなります
から、これは大きなメリットになります。


■ 「フラット化」が迅速な意思決定につながらないケースは?

しかし、「フラット化」がすべて迅速な意思決定につながるとは限りません。
たとえば、引き続き予算の話で考えるとして・・・、


フラット化された組織では、決済権限を持った上司までの階層の数が
少なくなります。

部下の立場で見れば、それだけ近い存在になったのだから、より早く
意思決定してもらえそうに思いますが・・・、上司の立場で見れば、
少し違ってきます。

「少階層−多分岐化」を推し進めると、上司の下にはたくさんの部下が
つくことになります。そうすると、1人の上司が承認しなければいけない
案件の数は増えます。

この場合の意思決定のスピードは、上司の能力に大きく左右されます。
極端な例では、「いま忙しいからちょっと待って・・・」と言われたまま延々と
待たされる・・・ということにも成りかねません。


そういう意味では、「フラット化」は、上司の能力が問われる
組織形態
だということになります。決断力や情報解析力が高い上司に
当たればラッキーですが、そうでない場合は困ったことになります。

※ 多階層の組織の場合も、上層にいくと承認する案件数は増えますから、
   これを真面目にやる上司には高い処理能力が必要とされるはずです。
   しかし実態は、あまり深く関わらないケースも多いものです。たとえば
   部長が承認した案件を役員が精査し直すことはあまりないでしょう。
   (いわゆる「めくら判」というやつです)


このフラット化による弊害は、平時(大きな動きがないとき)には、あまり
顕著になりません。

しかし、立て続けに問題が発生したり、進行中のプロジェクトで大きな問題が
発生したときには、上司の意思決定能力がパンクしてしまう可能性があります。
「多分岐化」(=直属の部下の数が多い)ことの弊害が出てしまいます。

※ 逆に言えば、それほど大きな問題が起こらない(今後も起こる可能性が低い)
   部署であれば、フラット化の弊害は少ないということです。


ということは、「組織のフラット化」を考える際には、普段どれだけの頻度で
上司の意思決定が必要になっているか? ということを考えなければいけない
ということですね。

また、その際には、(実際に起こる頻度は少ないにせよ)同時多発的に問題が
起こる可能性も考えておかなければいけないわけです(一種のリスク対策として)。


■ 「迅速な意思決定」のもう1つの手段

さて、話を少し戻しまして・・・

「迅速な意思決定」を行うためには、「フラット化」以外の方法もあります。
「フラット化」しなくても、権限委譲するだけでも意思決定は迅速になります。

たとえば、予算の例だと・・・、

多くの会社では、予算の額に応じて決裁権限を持つ階層が決められています。
○○○万円までは課長、□□□万円までは部長、□□□万円を超えたら役員
会の承認が必要、という感じで決められています。

こうした基準を見直すことができれば、1つの意思決定に関与する人の数が
減り、意思決定は確実に迅速化します。

※ その分、決裁権限者にかかるプレッシャーは高まるかもしれませんが、
   そういうケースは案外少ないような気がします。より現場に近い人間
   (より分かっている人間)のほうが、より自信を持って決済できるケース
   が多いのではないでしょうか。


これは予算に限った話ではなく、意思決定のスピードを左右するのは、
権限の所在そのものにあり、迅速な意思決定のためには「権限委譲」
が欠かせません。


そして、こうした権限委譲を行えば行うほど、上層に近い上司の仕事が
減ってきます。それに応じて適切な人員配置をしたとしたら、結果的に
「フラット化」になってくるはずです。

※ 「上層に近い上司を減らす」というのは、情報の流れの観点でも正しい
   ことです。部下10人を抱える課長と、部長3人を抱える役員のどちら
   のほうが「抜いても支障のない存在か」と言えば・・・明らかです。


そして、ここが大事なところですが・・・、
もし、その人員配置の見直しができなかったとしても、権限委譲さえ
進んでしまえば、(形式上フラット化していなくても)意思決定の
スピードは上がります。

ですから、組織の構成として「フラット化」しているかどうかよりも、
「権限委譲」、つまり、意思決定の権限をどの階層に置いているか
のほうが、実際にはより重要だということです。


また、「フラット化」のために無理に「多分岐化」すると、上記のように
弊害があるわけですが、権限委譲そのものには、この弊害はありません。
(上司の決断力、という意味で人材育成は必要ですが)


少しまとめると・・・ 迅速な意思決定のためには、

□ 組織構成上の形よりも、意思決定までの階層数を減らすこと。
   そのためには組織構成よりも先に、権限委譲を考えるべき。


□ 権限委譲したあとの業務に応じて組織構成を見直せば、
   本当に必要な「フラット化」の形が見えてくる。

□ 「フラット化」にともなう「多分岐化」には要注意。
   かえって意思決定のスピードを遅くしてしまうこともある。


ということになりますね。

これを元に考えると・・・、
・権限委譲が伴わない「フラット化」はあまり意味がない。

・「課」の数を減らして「フラット化」と称するのは良くない。

 (課長はもともと分岐数(部下の数)が多いのが一般的なので)

・むしろ分岐数の少ない部長以上の階層を減らすべき。


というのが正しい方向ではないでしょうか。

※ ただし、過去に「課」を増やしすぎた経緯のある会社の場合、
   「課」の数を減らすことに問題はないでしょう。しかし、これは
   「フラット化」と呼ぶべきではなく、普通に「組織構成の見直し」と
   呼ぶべきだと思います・・・。



フラット化が「目標」ではなく、権限委譲を進めたことによる「結果」と
して達成されるべきものなんですね。本来は。

これらは、冷静に考えれば当たり前のことですが、なかなか実行されない
ことでもあります。そして、こういうところに手をつけずに、「フラット化」と
いう言葉(イメージ)だけが先行していることが多いようにも思えます。

(私はこれまで「フラット化」という言葉の使われ方に、微妙に違和感を
 感じることがあったのですが・・・その違和感の原因はこれでした。)


※ ちょっと余談ですが・・・
  企業全体を見た場合の権限委譲の1つの形に、事業部制にして
  事業部長に権限を持たせることや、分社化することがあげられます。
  しかし実態は・・・分社化しても、親会社の意向をうかがってからで
  ないと何も進まないというケースも多いのではないでしょうか。
  (ときどき耳にする話です・・・)
  これは、権限委譲しているようで逆に意思決定のスピードを遅くする
  悪い事例のように思えます。


■ 権限委譲を進めるためには?

では、権限委譲を進めるためにはどうすればいいのか? ということに
なりますが、これはなかなか奥が深い問題です。

好意的に解釈すれば、従来のスタイルは「慎重に判断する」ために、承認者
の数を増やしていたとも取れますし、違う見方をすれば、問題が起こったとき
に糾弾されないように責任を分散させているだけとも取れます。※

※ さらにうがった見方をすれば、年功序列制を維持するためにポストを用意
   してしまったので、そのポストの存在意義が無くならないように、各ポストに
   いろいろな権限を付与しているとも取れます。(← これが実態?)


これは突き詰めれば、
「部下を信用するかしないか」
「慎重に慎重を重ねるか、スピードを重視するか」、
「性善説か性悪説か」
という違いにまでつながってくる話です。

と、話がだんだん大きくなってきました・・・(汗)

これは、「そもそも上司は何のために存在するのか?」という問いにも
つながってきます。これについては、最近気になっていることがあるので、
その話は明日か明後日にでも・・・



今日の記事作成時間は95分でした。
では、また明日!



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Posted by 水口和彦 at 22:11 │Comments(0)TrackBack(0)

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