「あたらしい戦略の教科書」
こんにちは。水口です。
昨日までの話は今日はちょっと置いておいて・・・、
今日は本の話です。
■ あたらしい戦略の教科書
「はじめての課長の教科書」著者の酒井さんから、新刊を御献本頂きました。
(ありがとうございます!)
新刊のタイトルは「あたらしい戦略の教科書」。
(この本↓です)

あたらしい戦略の教科書
このタイトルを聞くと、「経営戦略」についての本かと思いますが、
ちょっと違います(そこが「あたらしい」ところです)。
ただ、この本、普通に読むと評価が分かれる本だと思います。
この本を読んで勇気づけられる人もいれば、
「これは戦略の本ではない」と思う人もいると思います。
その理由も含めて、紹介したいと思います。
※ 少しネガティブなことも書きますが・・・、それはこの本を
より理解し、活用するために必要なことだと思いますので、
あえて書くことにしました。
■ 「ボトムアップの戦略が必要」 という話
この本の主旨は、今までの「トップダウン的な戦略」よりも、これからは
「ボトムアップの戦略」が重要になってくる、というものです。
そして、そのボトムアップの戦略についての考え方・立て方、実行の仕方
について書かれているのが本書です。
この「ボトムアップ的な戦略」を別の言葉で言うと、「最前線にいて」
「現場の情報を持っている」人が立てる戦略ということです。
確かに、ビジネスの変化のスピードが速くなったり、製品やサービスが
多様化するほど、最前線の情報の重要性は高まると思います。そういう
意味で、著者の主張に「なるほど」と思う人が多いと思います。
しかし、この本を読み進めると、違和感を感じる人も一定数いるはずです。
その「違和感」の理由の1つは、著者の言う「戦略」が、従来の戦略とは
ちょっと違うところにあります。
著者が言う「戦略」は、 (『』内は引用です)
『 現在地と目的地を結ぶルート
=旅行の計画 』
です。
戦略をこう定義すると、戦略とは一握りの経営層が立案するもの
ではなく、課長や係長、そしてすべての社員が立案に参加すべき
ものであるという、著者の主張もうなずけます。
そういう見方をすることで、課長以下すべての社員の意識を変える
ことが著者の狙いだと思います。この見方は素晴らしいと思います。
そして、この本は戦略の「実行」に主眼を置いて書かれているところに
も大きな価値があると感じます。
ただ、1つ引っかかることがあります。
「戦略」を上記のように定義したとしても、(一般的な)部長以上と
課長以下の「戦略」には、大きな違いがあります。その違いとは、
・部長以上が考えるべき戦略
→ 資源の配分を決めること
= 各部署・各事業への予算と人の配分を決めること
(何に注力して、何を「やらないか」決めること)
・課長以下が考えるべき戦略
→ 必要な資源を要求すること
その結果与えられた資源(人・予算)を活用すること
前者は「資源を与えること=一種の投資」であり、
後者は「与えられた資源を活用すること」です。
上記の「戦略=ルート」という概念は、この両者を包括することもでき
ますが、それでも、この2つの戦略が質的に違うものを持っていること
には違いありません。
トップダウン(ピラミッド型)とボトムアップ(逆ピラミッド型)の違いと
言ってもいいと思います。
この本にも、「やめるべきことを常に探す」という項目があったりして、
前者の「戦略」もある程度含んでいます。しかし、書かれているのは
主に後者の「戦略」についてです。
先に、「違和感を感じる人も一定数いるはずです」と書きましたが、
その「違和感を感じる人」は、部長や経営層の人を指していたんです。
(実際、私も最初に違和感を感じましたので・・・)
ですから、この2つの「戦略」の違いを、前提として最初の方で説明
しておいたほうが良かったのではないか・・・と私は考えています。
(ボトムアップ型が重要だということに異論はありませんが、
トップダウン型が必要になる局面もあるというのが私の考えです)
著者はブログの中でこの前者の「戦略」について書いておられたこと
があり、前者の「戦略」についてもわかっている方です。ですから、
この本では、「あえて」その概念を最初に紹介するのを避けたのだと
思うのですが・・・私は書いておいたほうが良かったのではないかと
考えています。
ちなみに、その記事はこちら↓
NED-WLT : 戦略とは何か
↑ 私が考えていること(ブログにも書いたことがあります)と
近いことを書いておられて、共感した記事です。
と、長々と書いてしまいましたが・・・、これはこの本の価値を下げようと
するものではなく、私と同じように(最初)違和感を感じた人にも、
この本を理解し活用してもらいたいために書いたことです。
この本に書かれている「戦略」は、「課長」にとって重要なものです。
(著者はやはり「課長」の味方なのだと思います)
そして、「部長」や「経営者」にとっては、「これが戦略のすべて」では
ないにしても、とても役に立つ内容を含んでいます。
特に、「戦略は一度立てたらあとは実行するだけ」という意識を
少しでも持っている人にとっては必読といってもいいかもしれません。
(その理由は・・・本書を読んでみてください)
■ 戦略立案の奥の深さ
個人的に特に面白いと感じたポイントを紹介しておきます。
『 関係者を十分に巻き込まないで立案した戦略は、それがいかに
優れていたとしても、実行はうまくはいきません。戦略の立案を密室
で行うことは、犯してはならない「現代社会のタブー」なのです。
自分で作った料理はおいしく感じられるものです。戦略の立案でも、
どこかの知らない人が立案した戦略よりも、自分が関わって作った
戦略のほうがおいしく感じられて当然ではないでしょうか』
(135ページ)
『優れた大戦略というのは、民主主義的な方法からは生まれないと
いうことです。』
(140ページ)
・戦略の立案に関係者を巻き込むことが重要
・民主主義的な(どっちつかずの)戦略は失敗する
(どれを取るかという「決断」が必要)
このどちらも分かります。そして、これらをときに両立させたり、
ときに使い分けたりするのが、リーダーの腕の見せどころという
ことになります。・・・奥が深いですね。
この本、読んでみればいろいろ考えるところがある本です。
管理職の方にも、そうでない方にもおすすめします。
今日の記事作成時間は51分でした。
では、また明日!
Posted by 水口和彦 at 21:37│Comments(2)│TrackBack(0)
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この記事へのコメント
水口先生
すばらしい書評をありがとうございます。おっしゃるとおり、資源ベースの戦略の定義は、本書では軽めに取り上げました。その理由は、私自身が資源ベースの戦略に疑問を持ち始めているからです。
本当の意味で戦略が優れていれば、資金が世界的に余っている現在、資源の多くは社外から調達できます。最近では、たとえばネット生保のライフネット生命保険がそれに相当するでしょう。ベンチャーでありながら、その優れた戦略によって、あたかも資源など問題になっていないかのようです。
現代社会では、もはや限られた資源が戦略を決めるのではありません。戦略の良し悪しが、資源の量までをも決めてしまうという面を無視できないと思うのです。資源が先か、戦略が先かという問いにおいて、私はもはや資源とは答えられないという部分が、本書には反映されています。
もちろん、こうした視点は万能なものではありません。とはいえ、全てをカバーしようとすれば、やはり「辞書」になってしまうので、そうならないようにエッジをきかせました。
今後とも、よろしくお願い致します。
すばらしい書評をありがとうございます。おっしゃるとおり、資源ベースの戦略の定義は、本書では軽めに取り上げました。その理由は、私自身が資源ベースの戦略に疑問を持ち始めているからです。
本当の意味で戦略が優れていれば、資金が世界的に余っている現在、資源の多くは社外から調達できます。最近では、たとえばネット生保のライフネット生命保険がそれに相当するでしょう。ベンチャーでありながら、その優れた戦略によって、あたかも資源など問題になっていないかのようです。
現代社会では、もはや限られた資源が戦略を決めるのではありません。戦略の良し悪しが、資源の量までをも決めてしまうという面を無視できないと思うのです。資源が先か、戦略が先かという問いにおいて、私はもはや資源とは答えられないという部分が、本書には反映されています。
もちろん、こうした視点は万能なものではありません。とはいえ、全てをカバーしようとすれば、やはり「辞書」になってしまうので、そうならないようにエッジをきかせました。
今後とも、よろしくお願い致します。
Posted by 酒井穣 at 2008年07月18日 01:00
水口です。
酒井様、お久しぶりです。
コメントありがとうございます。
なるほどです。
現代において、本当にいい戦略は、ボトムアップで生まれてくる
ということですね。
ベンチャーにおいては当然そうですし、大企業においてもそれを拾い上げる取り組みをし始めていますね。
(企業内起業という仕組みもそうですし、「アメーバ経営」も近いです)
そして、
多くの人にとって「戦略」はもはや「他人事」ではない
ということですね。
2冊目のご著書に「戦略」を持ってこられた理由が分かる気がします。ありがとうございます!
酒井様、お久しぶりです。
コメントありがとうございます。
なるほどです。
現代において、本当にいい戦略は、ボトムアップで生まれてくる
ということですね。
ベンチャーにおいては当然そうですし、大企業においてもそれを拾い上げる取り組みをし始めていますね。
(企業内起業という仕組みもそうですし、「アメーバ経営」も近いです)
そして、
多くの人にとって「戦略」はもはや「他人事」ではない
ということですね。
2冊目のご著書に「戦略」を持ってこられた理由が分かる気がします。ありがとうございます!
Posted by 水口和彦 at 2008年07月18日 17:39
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