「ワンランク上の問題解決」とは、どんな技術なのか?
こんにちは。水口です。
今日は本の話です。
■ 「ワンランク上の問題解決の技術」
こちらの本↓ディスカバー・トゥエンティワン社さんよりご献本頂きました。
(ありがとうございます)

ワンランク上の問題解決の技術《実践編》
視点を変える「ファンクショナル・アプローチ」のすすめ
タイトルは「ワンランク上の問題解決の技術」。
最近、「問題解決」に関する本が多いですから、そのなかで「ワンランク上」と
いうのはどんな問題解決法なのか、興味をそそられる方も多いかもしれません。
本の帯には、「2000億円のコスト削減を実現した」とか、
「GE流 問題発見+解決メソッド」とあり、ものものしい感じです
本書を読んでみるとわかりますが、その問題解決手法とは、
「VE」のことなんです。
■ VA/VEとは?
「VE」とは、「Value Engineering」の略です。
これと似た言葉に「VA(Value Analysis)」という言葉もあります。
※ 「VA」と「VE」の違いは・・・
「VA」と「VE」という言葉は、基本的に同義のもの(一体のもの)と
して扱われることもあるようですが、昔私が学んだときには、別の
ものとされていた記憶があります。
Web上にいい解説がないか探してみたところ、やや難解ですが、
↓こちらの解説が良いかと・・・。(分かりにくかったらごめんなさい)
VA(Value Analysis)、VE(Value Engineering)とは
| グロービス・マネジメント・スクール
こう聞いて、「なんだ、問題解決手法って、VA/VEのことかよ・・・」 と
思った方もいるはずです。
「VA/VE」は、特に製造業の中で、一時よく耳にした言葉で、現在は
やや下火になったというか・・・あまり聞かなくなっています。
(ちなみに著者は建設業界の方です。建設業界では現在VE活動が
活発なようです)
さて、このVEとは製品の価値を高めるために、その製品の「機能」を
分析し、それを実現するためのコストを考慮して最適解を得ようと
する手法です。
低コストの材料を使って安くするのは、単なるコストダウンです。
VEはそうではなく、求める機能を得るために、製品の設計や構造
そのものを変更することも含めて検討するところに特徴があります。
※ 製造業などでは、「VA」が「コストダウン」の同義語として使われて
いるケースもあると思いますが、それは本来の意味とは違います。
実際、これは使いやすい言葉で、仕入先に「値下げしてよ」と言う
代わりに「VA提案してよ」というと、ずいぶん聞こえがよくなるという
効果があります (← もちろん、間違った使い方です(笑) )
さて、製造業にお勤めの方のなかには、「VA/VE なんて、問題解決
の手法としては使えないよ・・・」 とお思いの方もおられると思いますが、
判断するのはまだ早いかもしれません。
本書で主張されているのは、VEの中の「機能」に注目すること、つまり、
「ファンクショナルアプローチ」を、コストダウン手法としてだけではなく、
もっと広く適用しようという考え方です。
簡単にいうと、仕事の中でやらなければいけないこと(=タスクと考えて
構わないと思います)を、さらに一段さかのぼって、
何のために(どんな機能を果たすために)それが必要なのか?
ということを考えたり、書き出して系統図化してみたりするという手法です。
一般に、「VE = コストダウン手法の一環」、と捕らえられがちですが、本当は、
「VE = 物事の本質をつかむ手法」であり、だからこそ「問題解決」にも役に
立つのだ、というのがこの本の主旨です。
ですから、VA/VEがわかったつもりになっている人も、読んでみると新鮮に
感じるかもしれません。
■ そして、読んでみると・・・
本書に書かれた「ファンクショナルアプローチ」とは、ある仕事(や物)に
必要な機能を考え、整理・体系化していく手法です。
そしてその「機能」とは、「名詞+他動詞」で表されるものとされています。
つまり、「○○を□□する」というものです。
すごく簡単にいうと、こういうことです。
たとえば、今私がやっている「ブログを書く」 というのは、あくまでも
1つの行動であって、その機能は「読者に私の考えを伝える」と考える
ことができます。(機能は1つとは限らず、他の機能も考えられます)
そうやって、機能にまでさかのぼると、「じゃあ、ブログ以外にも伝える
手段はあるよね」 ということもわかりますし、「分解した機能それぞれ
の効果をより高めるためにはどうすればいいか?」 という分析も
しやすくなってきます。
くわしく知りたい方は、本書を読んでみてください。
さて、皆さんがこの本を読んだとして・・・その中には、こういうご感想を
持つ方もいると思います。
「・・・こんなの、当たり前のことじゃないか!」
というのは、ある仕事を、それが果たす機能にさかのぼって考えると
いう手法を、すでに頭の中で行っている人もいるからです。
それは別の言葉で、
物事の本質を見抜く
「何をやるか」ではなく、「何のためにやるか」を考える
「手段」よりも「目的」を重視する
先例にとらわれずに、仕事の本質を考えてやり方を変えてみる
と表されるものです。
私がこれまでに出会った人のなかでも、「この人はできる」と思える人は、
こういう思考方法を(傍から見ると)自然に行っています。
また、自分自身が過去に仕事で「ブレークスルーできた」と思えた経験を
振り返っても、「目的」や「機能」に目が向いていたことが多いと感じます。
(私の場合は、苦労してそこに辿りつくタイプかもしれません)
そんなふうに、「ファンクショナルアプローチ」をすでに実践している人は
少なからずいます。
それなら・・・、書き出して整理する「ファンクショナルアプローチ」が不要か
といえば、そういうわけではないと思います。
■ ファンクショナルアプローチが有効な理由
これが有効な理由の1つは、1つ1つの機能を考えていくことで、
着実に「できる人」的に思考できるようになる可能性を秘めている
ことです。
ですから、思考のトレーニングとしても有効ですし、思考過程の視覚化
にもなるので、参加者全員への教育効果が期待できます。
もう1つの理由は、いくら「できる人」とはいえ、問題や解決の過程が
入り組んでくると、頭の中だけでは処理できなくなります。
(その理由は「筆算理論」で説明できます)
ですから、複雑な問題に対しては書き出すことも必要です。
そのための方法論としてヒントになると思います。
最後に私の考えを述べておきますと・・・
基本的に、この手法自体はKJ法などと同じく、グループで実行するときに
特に効果を上げる手法だと思います。1人で行う手法としては、冗長すぎて
手間の割には効果は薄いと思います。
※ 野口悠紀雄さんがKJ法に対して指摘していたのと同じ理由です。
(くわしくはこちらを↓)

「超」発想法 (講談社文庫)
しかし、KJ法にしてもそうですが、ベースとなる考え方を知っているのと
いないのでは大きく違いますし、できれば一度はきっちりやってみた経験が
あると、もっと違います。
そういう意味でも、知っておく価値がある手法だと思います。
いろいろヒントになる部分もありますし。
ご興味のある方は、ぜひ。
↓
ワンランク上の問題解決の技術《実践編》
視点を変える「ファンクショナル・アプローチ」のすすめ
今日の記事作成時間はトータルで83分でした。
では、また明日!


Posted by 水口和彦 at 23:58│Comments(4)│TrackBack(0)
時間管理術研究所の無料メールマガジンで
モチベーションアップしてみませんか?
バックナンバーはこちら
Copyright (c) 2005-2014 BizARK Inc. All rights reserved.
http://trackback.blogsys.jp/livedoor/k_minakuchi/51689362
この記事へのコメント
> 物事の本質を見抜く
> 「何をやるか」ではなく、「何のためにやるか」を考える
> 「手段」よりも「目的」を重視する
> 先例にとらわれずに、仕事の本質を考えてやり方を変えてみる
↑
HWY → WHAT → HOW
なんでやるの? 何をやるの? どうやってやるの?
この順で考えるべし ってことですね。
> 「何をやるか」ではなく、「何のためにやるか」を考える
> 「手段」よりも「目的」を重視する
> 先例にとらわれずに、仕事の本質を考えてやり方を変えてみる
↑
HWY → WHAT → HOW
なんでやるの? 何をやるの? どうやってやるの?
この順で考えるべし ってことですね。
Posted by kakobon at 2008年07月25日 20:45
水口です。
kakobonさん、こんにちは。
ありがとうございます。
まさに、その通りですね。Whyが大事だと。
個人的には順番はどっちでもいいのかなと思っていますが、最終的に
「なぜやるのか」を考えないと、よくある「手段と目的の取り違え」に
なってしまいますよね。大きな組織にいると、よくあることですが・・・
kakobonさん、こんにちは。
ありがとうございます。
まさに、その通りですね。Whyが大事だと。
個人的には順番はどっちでもいいのかなと思っていますが、最終的に
「なぜやるのか」を考えないと、よくある「手段と目的の取り違え」に
なってしまいますよね。大きな組織にいると、よくあることですが・・・
Posted by 水口和彦 at 2008年07月26日 15:22
はじめまして、横田尚哉です。
『ワンランク上の問題解決の技術《実践編》』の
著者です。
取り上げていただき、有難うございました。
そして、丁寧にお書きいただき、感謝申し上げ
ます。
> たとえば、今私がやっている「ブログを書く」 というのは、あくまでも
> 1つの行動であって、その機能は「読者に私の考えを伝える」と考える
> ことができます。(機能は1つとは限らず、他の機能も考えられます)
さすがです。ファンクショナル・アプローチを
理解していただいています。というよりも、元々
そういう視点をお持ちだったのでしょう。
なるほど。だから、このブログ自体がワンランク上
なのですね。
kakobonさんのコメントも、本質を見抜いています。
ここに集まる人は、みんなランクが高いですね。
どうも、有難うございました。
『ワンランク上の問題解決の技術《実践編》』の
著者です。
取り上げていただき、有難うございました。
そして、丁寧にお書きいただき、感謝申し上げ
ます。
> たとえば、今私がやっている「ブログを書く」 というのは、あくまでも
> 1つの行動であって、その機能は「読者に私の考えを伝える」と考える
> ことができます。(機能は1つとは限らず、他の機能も考えられます)
さすがです。ファンクショナル・アプローチを
理解していただいています。というよりも、元々
そういう視点をお持ちだったのでしょう。
なるほど。だから、このブログ自体がワンランク上
なのですね。
kakobonさんのコメントも、本質を見抜いています。
ここに集まる人は、みんなランクが高いですね。
どうも、有難うございました。
Posted by 横田尚哉 at 2008年07月27日 21:55
水口です。
横田様、はじめまして。
コメントありがとうございます。
良い本をご執筆頂きまして、ありがとうございました。
実は私はエンジニア(製造業)の経験が長かったので、
ファンクショナルアプローチにはなじみがあるんです。
今回ご著書を拝読させて頂いて、この考え方がもっと幅広く適用できること、
エンジニア以外の方にも伝えるべきだと教えて頂きました。感謝しております。
> kakobonさんのコメントも、本質を見抜いています。
> ここに集まる人は、みんなランクが高いですね。
ありがとうございます。このブログは日頃、良いコメントを頂くことが多く、
私も勉強になることが色々あります。
では、横田様、今後ともよろしくお願い致します。
ありがとうございました。
横田様、はじめまして。
コメントありがとうございます。
良い本をご執筆頂きまして、ありがとうございました。
実は私はエンジニア(製造業)の経験が長かったので、
ファンクショナルアプローチにはなじみがあるんです。
今回ご著書を拝読させて頂いて、この考え方がもっと幅広く適用できること、
エンジニア以外の方にも伝えるべきだと教えて頂きました。感謝しております。
> kakobonさんのコメントも、本質を見抜いています。
> ここに集まる人は、みんなランクが高いですね。
ありがとうございます。このブログは日頃、良いコメントを頂くことが多く、
私も勉強になることが色々あります。
では、横田様、今後ともよろしくお願い致します。
ありがとうございました。
Posted by 水口和彦 at 2008年07月29日 06:55
※ スパムコメントがあまりに多いため「http://」は使用不可の設定にしています。
URLをご紹介頂く場合は「http://」を省くか全角文字を使用して頂けますと
幸いです。
(参照リンクの無いトラックバックは受け付けておりません)