2008年11月11日     このエントリーをはてなにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク

部下にタイムマネジメントを実践してもらうために


こんにちは。水口です。

今日は、本日行った講演でのご質問に関連した話です。


■ 講演をしてきました

というのは、本日は某エレクトロニクス・事務機器メーカーで「タイム
マネジメント(時間管理)」についての講演をしてきたんです。

「講演」といっても、少しワークを取り入れたりするなど、内容的には
「研修」に近いものでした(120分のショート研修という感じです)。


私はこれまでも、いわゆる「大企業」での講演や研修を行ってきましたが、
今回は特筆すべき点が2点ありました。


1つは、今回の講演が「社内有志」による開催であること。

これまでに行ってきた講演や研修は、人事部が主催のものや、部門で
主催して頂いたもの、労働組合主催のもの、労使共催のものなどが
ありましたが、「社内有志」主催というのは初めてでした。

そういう活動を承認している、企業としての懐の深さを感じます。


もう1つは、今回の講演中、私がしゃべったことが「字幕」で表示された
ことです。聴覚障害の方に内容を理解して頂けるように、私がしゃべった
ことはその場でタイプされ、横のスクリーンに表示されていました。
(メインのスクリーンとは別のスクリーンに投影されます)

これも初めてで驚きました。これ、とてもいいですよね。


■ 部下に計画を立ててもらうためには?

そんな初めての体験をしつつ講演をしてきたのですが、その講演後に
頂いたご質問を1つ紹介します。


タイムマネジメント(時間管理)の基本となる考え方の1つに、

  「いつまで」にやるかという、仕事の期限だけでなく、
  「いつから」やるかという、仕事の実行日を決めること

というものがあります。

「○日までにやればいい」という「期限」だけで考えていると、結局期限
ギリギリになってしまうことが多いですし、仕事の実行日を決めないこと
には、自分の仕事量が具体的につかみきれません。

ですから、「実行日」を決めていくことは、とても重要なことです。

※ 昔のタイムマネジメントの中には、これを決めないタイプ(毎朝その日
   の計画を考えるタイプ=先のことまで考えないタイプ)もありますが、
   これは先が読みにくいので、私はおすすめしていません。


今日もこの話をしたわけですが、これに関連したご質問を頂きました。

  「いつから」やるかという、仕事の計画を立てることが大事なのは
  理解しており、過去に(部下などに)やってもらおうとしたことがある。
  しかし、なかなかうまくいかない(部下が計画を立ててくれない)。
  どうしたら、やってもらえるだろうか?

という主旨のご質問でした。


このご質問、実はとても深い問題を突いているかもしれません。というのは、
「人にタイムマネジメントをやってもらう」のは、意外に難しいものだからです。


そもそも、人は、他人から指図されて自分の仕事のやり方を変えることは
嫌がるものです。

さらに「タイムマネジメント」には「面倒くさそう」「時間にしばられてキュウクツ」
というイメージを持つ人も多いです。

ですから、やれと言っても、なかなかやってもらいにくいものです。


■ 部下にタイムマネジメントを実践してもらうために

こういった状況を変えるためには、

・ タイムマネジメントを行うメリットを知ってもらう
・ 「タイムマネジメントを行うこと」のハードルを下げる工夫をする
        ↓
・ やる中で、メリットを実感してもらう

と持っていくことが必要となります。


□ タイムマネジメント(時間管理)を行うメリットを知ってもらう

そもそも、タイムマネジメントを行うことにどんなメリットがあるのか?
これを知ってもらうことは重要です。

というのは、中には、

  タイムマネジメント = スキマなく仕事を詰め込むこと
                (とにかく仕事量を増やす。一種の労働強化)

というイメージを持っている人もいるからです。こういうイメージがあると、
上司からすすめられても、なかなか実践しようという気にはなりません。


また、実際にそういうタイムマネジメントを推奨する方もいるので、ますます
イメージがそうなってしまうわけですが・・・。私はそうは考えていません。

経験談として、「詰め込み」や「がんじがらめのスケジュール」にすることは、
かえって仕事の能率を落としてしまうことがあると感じています。
(融通が利かなくなるし、計画変更のたびに手間がかかる。「計画通りに
 いかない」ストレスを感じるなど、デメリットが多いです)

むしろ、「仕事を整理する」こと、頭をスッキリさせることを目的として
取り組むべきであり、その結果として効率が上がってくる、というのが
私の基本的な考え方です。

これを理解して頂くことが、まず必要だと思います。
実際にそういうタイムマネジメントを行う姿を見てもらうことも有効です。


□ 「タイムマネジメントを行うこと」のハードルを下げる

そして、「計画を立ててから仕事をしなさい」といっても、なかなか計画に
手がつかない人もいます(私もそういうタイプでした)。

この「計画を立てる」というハードルを越えるためには、

  「計画は一気に立てるもの」というイメージを変える

  (時間を取って計画を立てるという、少しかしこまったイメージを変える)

ことが有効です。

具体的には、「計画は一度に立てるのではない」こと、つまり、

  仕事が1つ決まるたびに1つ「書く」
  そのくり返しで
(特別なことをしなくても)計画はできてくる

ということを知ってもらうことが第一です。


また、日常的にタスクやアポイントメントを「書く」習慣をつけるためには、

  ツール(手帳など)を使っているか?

  (仕事中はすぐ見られるようにツールを開いているか)

という点に注目するのが有効です。

「書く」ことを習慣にしてもらうために、まずその前段階の「ツールを置く」
ことに注目するわけです。

自分自身の経験としても、ツールを使わなくなる(書かない・見ない)と
いう危機(挫折の危機)は、「ツールを開かなくなる」ことから始まります。
ですから、「ツールを開くことを習慣にする」ことがとても重要です。

※ これは、人にやってもらう場合だけでなく、自分自身が
   タイムマネジメントを継続するためにも大事なことです。


また、「ツールを開いているか、使っているか」というのは、第三者が見ても
判断しやすいものです。ですから、ここに注目するのは難しくはありません。

※ そういう意味でも、一緒に仕事をするチーム全員でタイムマネジメントに
   取り組むことはとても有効です。「他の人がツールを使っているから自分
   もやらなきゃ」という意識を持ちやすくなります。


昨日の話にも関連しますが、結果として仕事の期限に間に合わないことを
ガミガミ指導するよりも、「ツールを使ってない」ことに対して指導した方が
より効果的だということを、意識してみてください。


□ 実践して、メリットを実感してもらう

タイムマネジメントを実際に実行すると、必ずメリットが感じられるはずです。
そのメリットとは、

・ 「書く」と、仕事のことを安心して忘れられる

  (「これ覚えておかないと・・・」というプレッシャーから解放される)

・ 「先が読める」安心感が得られる

  (その仕事のための時間が確保できているという安心感)

・ 仕事の期限に追われるのではなく、計画的に進められる

・ 自分がやったことが確認できて、達成感が得られる

・ 「何をやるんだっけ・・・」と迷うことがなく、仕事がスムーズに進む

・・・等々、いろいろあります。

その人がどこに一番メリットを感じるかはわかりませんが、継続すると、
必ず何かメリットは感じるはずですし、本当に仕事が忙しい人ほど、
そのメリットは大きなものになります。

このメリットを感じられると、タイムマネジメントを行うことの意味が、
納得できますから、より継続しやすくなります。

※ それでも、挫折の危機がおとずれないとは限りません。そのための
   対策は、やはり「ツールを開く」ことが続いているか、見ることです。


【余談です】
これは、以前から感じていることですが・・・、

多くのタイムマネジメント(時間管理)本や、講師が指導していることは、
「マメな人」「本人がとてもやる気がある人」にしかできそうもないことが
多いです。

「毎朝タスクを書き出して、優先順位をつける」というのは、余程マメな
人でなければ続きません。(特に忙しい時期に挫折しやすいです)。

「スキマなく時刻を決めたスケジュールを立てる」というのは、マメな人で、
なおかつ突発の仕事が少ない人でなければ続きません。
(普通の会社勤めの人で、そういう人は少ないです)

「タイムマネジメント(時間管理)」が限られた人のものであった時代なら、
そういうやり方でも構わなかったのかもしれません。しかし、現在のように
多くの人が「時間不足」に悩んでいる状況に、こういう手法は合わないと
思うのですが・・・。

【余談おわり】



私はできるだけ「誰にでもできる」「継続しやすい」やり方を追求している
つもりですが、それでも、なかなか実践してもらえないこともあるかと思い
ます。

今日の記事は、私が(講演などで)直接お伝えする場合に意識している
ことです。間接的に(お聞きになった方が部下に指導されるなど)実践
してもらう場合には、上記のポイントを意識してみてください。


タイムマネジメントには「会社のため」という面もありますが、
「自分のため」にも、とても役立つものです。ぜひ、実践を!




今日の記事作成時間は79分でした。

では、また明日!


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Posted by 水口和彦 at 18:40│Comments(3)TrackBack(0)

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この記事へのコメント
前例がなくやってみないとわからないことや、検討項目が多くて規模の見積もりに時間がかかる場合に、着手したばかりのタイミングで、「いつまでにできるの?」と、他人から聞かれることに対して、強いストレスを感じます。
「今、調べているところです」と答えると、「では、いつ調べが終わるの?」と、せっかちに聞かれます。

こういった状況へのよい対応方法はないでしょうか?

よろしくお願い申し上げます。
Posted by さ at 2008年12月18日 19:55
水口です。
ささん、コメントありがとうございます。

かなり、せっかちな方(上司?)のようですね。
私もこれに近い経験があります。

(上司かどうかわかりませんが、一応上司だと仮定して・・・)
おそらく、上司としては「見通しを立てたい」という思いもあるのだと思います。
上司自身も、さらに上の上司から「いつできるんだ」と突っ込まれたりすることもありますので。

ただ、これは相手のタイプによって対処法は少し変えないといけないかもしれません。

1−見通しを立てたいので「ざっくりと」完成時期を知りたいというタイプの上司
(正確な見積りよりも、早い見積りを好むタイプ)

2−一度「○日までにできます」と言ってしまうと、後で変更を許さないタイプの上司
(後で変更しようとしても「できると言ったじゃないか!」と突っ込んでくるタイプ)

このどちらかで対処方法はかなり変わってくると思います。

これは長くなりそうなので、続きはまた記事本文の方で・・・。
Posted by 水口和彦 at 2008年12月18日 20:38
ご返答ありがとうございます。
上司ではなくてクライアントなので、対応は慎重にしています。
今日は、逆に早めにこちらから報告するようにしたら、少しは気が楽になりました。

Posted by さ at 2008年12月20日 02:10
 

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