2009年01月05日     このエントリーをはてなにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク

「プロジェクトマネジメントで克つ!」: プロマネ本ではなく、リーダーのための本です


こんにちは。水口です。

今日は昨日に続いて、年末年始に取り寄せて読んだ本の話です。


■ 「プロジェクトマネジメントで克つ!」

新しい本ではないのですが、最近この本↓を読みました。


プロジェクトマネジメントで克つ!プロジェクトマネジメントで克つ!
著者:宮田 秀明
販売元:日経BP社
発売日:2002-07
おすすめ度:5.0
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著者は東京大学工学系の教授で、海洋工学を専門にされている方です。
レース用のヨットを開発し、「アメリカズカップ」という世界最高峰のレースに
挑んだ経歴を持つ方です。

ちなみに、この本は「プロジェクトマネジメントで克つ!」というタイトルですが、
「プロジェクトマネジメント」について解説した本ではありません。

※ 一般的に、「プロジェクトマネジメント」と言うと体系立った計画作成と管理
   の手法のことを指しますが、この本にはそういう話はほとんど出てきません。

出てくるのは、「プロジェクト」を進めていく中での「マネジメント」の話、言い換え
れば、「チームマネジメント」という感じです。


本の内容は、そのアメリカズカップへの挑戦の経緯の話がメインで、その中に
チームをマネジメントするための考え方が、ところどころに配置されています。

私は元が技術屋なこともあり、全体として面白く読めたのですが、技術的な
話が苦手な方は、ちょっと読みづらいかもしれません(ヨットの開発・レースに
おける戦略の立て方などに興味深い点が多く、役に立つと思うのですが)。


もし挫折しそうな場合は・・・、ところどころに配置されているチームマネジメント
の考え方の部分だけでも読んでみてください。

というわけで、おすすめの部分を紹介しておきます。
―――――――――――――――――――――――
   p.32  「創発パターン」
   p.45  「チーム編成」
   p.55  「スカンクワークス」
   p.67  「リーダーのスキル」
   p.100 「デザイン」
   p.184 「ミーティング」
   p.192 「意思決定」
   p.226 以降 (第9章全部)
―――――――――――――――――――――――

個人的には、これらを読むだけでも、中途半端なビジネス書より役立つように
思います。いずれも著者の経験を踏まえた独自性がある話なので、人によって
は「目からウロコ」になるかもしれません(特にマネジメント経験のある方は)。

どちらかというと、すでにマネージャーやチームリーダーの役割に就いている人
におすすめの本です(そうでない方も、やる気があれば是非ご一読を)。


■ 目標の3つの形

本の内容から1つ紹介します。
著者は、目標には3種類の形があると言います。
『』内は引用です)
 
『一つは数字にできるほど合理的思考の延長上に据えられる目標である。
例えば「5年以内に収入を倍にする」「時速300キロの営業運転を実現させる」
「経費を2割削減する」「パソコン用のCPUで1ギガのクロック数を実現させる」
などだ。

 もう一つは、目標がビジョンとして与えられる形である。「月に行こう」「ガンを
撲滅しよう」「この分野で世界一になろう」などがこの形に当てはまる。

 最後の形は、少しいいかげんである。「何でもいいから楽しいこと、役に立つ
ことをしたい」という具合だ。ランダムな発想で、意欲だけが頼りである。

 三種類の目標の類型に沿って、三つの創発プロセスのパターンがある。
「合理的計算型」「ビジョン駆動型」「ランダム思考型」である。 』

                          (32〜33ページより)


この文章を読むと、1つめが「数値で表せる目標」、2つめが「数値で表せない
目標」のようにも取れますが、著者の言わんとしていることは、そうではなくて、
こういうこと↓だと思います(以下は私の解釈です)。


□ 合理的計算型

1つめは、目標達成の「ゴールまでの道筋が見える」タイプの進み方です。

  (必ずしも成功するとは限りませんが)、どういう課題をクリアすれば目標に
  到達できるかが見えているわけです。

  この場合、ゴールから逆算して計画を立てていくことができます。


□ ビジョン駆動型

2つめは、「遠くに目標があり、方向が見える」タイプの進め方です。

  その目標に到達するのはいつになるか分からないが・・・、進むべき方向
  は見えているわけですから、道をそれることはあまりありません。

  「ゴールまでの最短距離を目指す」というよりは、理想を追い求めて、
  研鑽し続けるというイメージもあります。


□ ランダム思考型

3つめは、「面白そうなら、いろんな方向を試してみよう」という進め方です。

  やってみなけりゃ分からないのを前提に、「いろいろ試してみる」わけです。
  道そのものが初めから無いということです。

  もちろん、失敗も多いわけですが、思いもよらない大きな成果が得られる
  こともあります。



そして著者は、『しっかりした組織は、三つのパターンをうまく組み合わせる』と
述べています。言われてみれば、確かにそうかもしれません。

たとえば、私にとって身近な例で言うと、

   研究開発部門        → 「ランダム思考型」
  (新製品を開発する)

   生産技術部門        → 「合理的計算型」
  (製品を量産化する)

   製造部門・品質管理部門 → 「ビジョン駆動型」
  (製品の品質・生産性を継続的に高めていく)

に近いイメージです (実際には単純には分けられませんが、これらの要素
が強いのは事実です)。

そして、会社全体としての経営方針には、このすべてが含まれるわけです。


■ 「成功法則」の嘘?

ここからは、上記の本から外れた話に入っていきます。
私は、先の話は、会社だけでなく個人でも同じだと思います。


たとえば、いわゆる「成功法則」的な話として、

  ・ゴール(目標)を明確に設定すること
  ・そのゴールから逆算して計画を立てること
  ・その計画を実行していくこと

を行えば目標を達成できる。といった話があります。
これは、上記の「合理的計算型」の考え方です。


「目標の明確化」や、「逆算して計画すること」は、日常の時間管理
でも大事なことですし、理にかなったことです。

ただ、長期的な目標、あるいは「人生」というプロジェクト全体を通して
みれば、必ずしも「合理的計算型」だけでは進まないものだと感じます。


たとえば、「資格を取得する」「会社を立ち上げる」等の具体的な目標には
「合理的計算型」が役に立ちます。

あるいは、「年収いくらになる」という目標を持って、「合理的計算型」で
進んでいくことも大事だと思います。

しかし、人間それだけでは生きていけないように感じます。

「高い志を持つ」という、「ビジョン駆動型」がやる気を高めてくれますし、
「分からないなら、考えるよりもやってみる」という「ランダム思考型」に
チャレンジするのは、それ自体がワクワクするものです。


「合理的計算型」が有効だというのは正しいと思いますし、それが前提に
あって構わないのですが、それがすべてじゃない。と私は考えています。

でも、現在は「合理的計算型」の「成功法則」にとらわれてしまっている
人が増えつつある気がして、ちょっと気になります・・・。

そういう意味で、この3つの分類で考えてみるのもいいかもしれませんね。




※ ちなみに、目標の類型はこの方法が唯一のものというわけでは
   ありません(私自身はこれと似た考え方を使っていますが、分類は
   4つで考えています)。

今日の記事作成時間は91分でした。

では、また明日!


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Posted by 水口和彦 at 23:55│Comments(0)TrackBack(0)

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