『「会社は株主のもの」は誤り』は誤りだけど・・・
こんにちは。水口です。
昨日ののセミナーで頂いたご質問関連の話はまだあるのですが、
その前に、ちょっと気になった話を・・・。
■ 会社は誰のもの?
こんな記事がありました。
「会社は株主のもの」は誤り 与謝野発言、賛否両論で波紋
(J-CASTニュース) - Yahoo!ニュース
(『』内は引用です)
『 与謝野馨大臣が、「会社は株主のもの」という考え方を誤りだと否定して、
波紋を呼んでいる。発言自体には、世界の常識と違う、いややはり社員が
大事などと賛否両論がある。ポスト麻生との期待も高まってきているなかで
のできごとだけに、注目が集まっている。』
(上記サイトより引用)
とあります。
会社は株主のものではない
と取れる発言で、なかなか大胆ですね。 本当のところは、
株主ばかり見て経営していてはいけないのではないか?
ということを言いたかったのではないか? とも思うのですが。
「会社は誰のものか?」と、「所有権」のように問うならば、それは株主のもの
だということになります。
「会社は社員のものだ」と言いたくなる気持ちも分かりますが、そう言うと、
(賃貸で)貸している家が借り主のものだ (= 所有者のものじゃない)と言う
のと同じことになってしまいます。これでは話が変な方向に行ってしまいます。
もちろん、家の所有者が賃貸で借りている人を無下に追い出すことができない
のと同じように、社員を会社から追い出す(解雇する)ことは、むやみに行って
はいけない、という理屈は成立しているわけですが、それと「持ち物」かどうか
は別の話です。
というわけで、会社は株主(達)のものではあるのですが・・・、
株主ばかりを見る(株価ばかりを気にする)経営をしていていいのか?
と現在多くの会社が問われているように思えます。
■ 雇用が保証されていることのメリット
株主の方を向いた経営というのは、短期的な業績を上げることを優先する
経営です。たとえば、最近話題になっているように、内部留保がたくさんある
(この数年に上げた利益がストックされている)のに、解雇を行うのはおかしい
んじゃないか? という話があります。
※ 「派遣労働者の契約延長をしない」というのは、「解雇」とは違いますが、
(法的にも認められた行為で、それ自体が問題だとは思いません)
ここではその話は置いておきます(正社員を減らす会社も出てきてますし)。
「蓄えがあるのに、社員を減らすのはどうしてだ?」と思いたくもなるのですが、
いくら蓄えがあるにしても、その蓄えを食いつぶすような経営をしていると、
株価も下がってきます(配当を減らすのもそうです)。
ですから、株主を向いた経営をしていれば、人員整理もやむなし・・・と
なるわけです。これはこれでひとつの理屈です。
しかし、本当にそれでいいのか? という疑問もわいてきます。
こんな話があります。(『』内は引用です)
『その会社で、紙のデータを電子データベース化する作業に熱心に取り組む
女性がいると聞いた。だれかがその女性社員に「そんなことをしたら、自分
の仕事がなくなるのでは」と言うと、「そのとおりよ」という答が返ってきたと
いう。
「でもきっと、会社はほかの仕事を割り当ててくれるでしょう。そう思えなけ
れば、真剣に仕事なんかできないわ」。この女性は雇用が保障されていると
考えている。この安心感は会社にとって、非常に大きな価値をもっているは
ずだ。もし、いつ解雇されるかわからないという不安が広まっていたら、どう
なるだろうか。』
この一節は、P.ドラッカーと並び称される経営学者、H.ミンツバーグの
書いた記事の一節です。
この指摘はもっともなことで、
雇用が保証されているからこそ、業務の合理化・効率化に取り組める
(自分の「今の」仕事を減らす効率化に取り組もうと思える)
わけで、逆に、
雇用が保証されていない中では、自分の仕事を減らすことにつながる
合理化・効率化に取り組もうとは思えない
ということです。人の心理として、当然これはあるでしょう。
(もちろん、そうじゃない人も、なかにはいるはずですが)
たとえば、仕事のやり方を改善していくことについてもそうですし、人材を
育成することについてもそうです。いつ自分が切られるかもしれないという
不安の中で、部下を育成しようとはなかなか考えられないものです。
つまり、人員整理を行うことは、長期的な改善や効率化の芽を摘んでしまう
ことにもなりかねないわけで・・・まさに諸刃の剣です。
上の文章は初出が'96年なのですが、その中でミンツバーグ氏は雇用に
ついて日本企業に学ぶべきではないかと提言しています。当時の日本
企業の強さの要因は終身雇用にあると見ているわけです。
その日本のやり方は、すでに変わりつつあるのですが・・・。
(↓ちなみに、この本に収録されています)
―――――――――――――――――――――――――――――――
H. ミンツバーグ経営論著者:ヘンリー・ミンツバーグ
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2007-01-13
おすすめ度:
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(↑ミンツバーグ氏の本のマネジメント論を学ぶには読みやすい本です)
というわけで、話を戻しますと、
「会社は株主のもの」というのは、理屈の上で正しいことです。
それはそれとして、 「人員整理をしない」ことにも(ミンツバーグ氏が言うように)
メリットもあるわけで、安易に人員整理に走るのが良いかは疑問も残ります。
「株価を気にして人員整理をする」という選択肢以外に、長期的な戦略として
「人員削減しない」という方針を打ち出す。そして、それを株主が納得できる
ように説明する。 そんな人が現れてこないかな・・・と期待してしまうのですが、
そういう話はあまり聞かないですね。
唯一、永守重信社長の日本電産が、それに近いように思います。
永守社長は、自社社員のハードワーク自慢(?)的な発言で、昨年少し叩かれ
てしまいましたが、今年はいち早く(給与は下げるけど)人員削減しない旨を
発表し、雇用情勢に一石を投じました。
永守社長は、どちらかというと個人的な信念として「人員整理をしない」と
決めているようですが、理由がなんであれ、立派なことです。
業種によって、業績の低迷具合は違ってきますから一概には言えませんが、
信念として、あるいは長期的な戦略として「人員削減しない」という方針を
打ち出す会社はもっとあっていいと思いますし、もっと報道されていいとも
思うのですが。
今日の記事作成時間は63分でした。
では、また明日!
Posted by 水口和彦 at 23:55│Comments(0)│TrackBack(0)
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