2009年03月20日     このエントリーをはてなにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク

「日本型ワークシェアリングはこれ」 と誰が決めたのか?


こんにちは。水口です。
今日は「ワークシェアリング」関係で。


■ 「日本型ワークシェアリング」って、何なの?

こんな記事がありました↓

日本型ワークシェア、政労使合意へ 不協和音も痛み分け
- FujiSankei Business i./Bloomberg GLOBAL FINANCE


『』内は引用です)

『 仕事を分け合い、雇用を維持するワークシェアリングの導入に向けて、政府
と日本経団連、連合の政労使3者が23日に合意する見通しとなった。労使
は「日本型ワークシェア」を推進する一方、政府は雇用調整助成金を活用した
ワークシェア導入企業の支援制度を新たに整備。労使の取り組みを後押しする』


「緊急避難型」と呼ばれるワークシェアリングを導入する企業のニュースをよく
耳にしますが、その動きがさらに広がることになりそうです。

ちょっと気になるのは、「日本型ワークシェアリング」という、あいまいな言葉を
使っている点・・・。素直に「緊急避難型」あるいは「雇用維持型」と言えばいい
と思うのですが・・・。


■ 「日本型ワークシェアリング」という言葉が意味するもの

記事にはこうあります↓

『 合意案は「政労使の3者が雇用安定・創出の実現に向けて一致協力して
取り組む」と明記。「日本型ワークシェア」を休業や残業削減、出向などで雇用
維持を図る取り組みと位置付けている。職業訓練の推進や雇用保険の失業
手当をもらえない人への支援強化も盛り込む。 』



  「日本型ワークシェア」
   = 休業や残業削減、出向などで雇用維持を図る取り組み

ということです。

これはオランダで行われているような「多様就業型」「雇用創出型」と呼ばれる
ワークシェアリングとは別物です。


こういうワークシェアリングを行うこと自体は、それはそれでいいと思います。
『職業訓練の推進』や『失業手当をもらえない人への支援』は、必要なもので
意味があると思います。

また、緊急避難型のワークシェアリング自体もむやみに人員削減しないために
有効なものであり、こうした合意があることによって、各企業が導入しやすく
なるのであれば、それなりに意味のあることです。
(本来は企業ごとに労使が話し合うべきでは?とも思いますが)


しかし、これをあえて「日本型ワークシェアリング」と呼ぶのは、ちょっと理解
できません。


■ 「日本型ワークシェアリングはこれです」 と誰が決めたんでしょう?

うがった見方をすれば、

  日本は「日本型ワークシェアリング」を行うという宣言
  = オランダ型のワークシェアリングは日本には不要という宣言

     (検討する気すらありません・・・という意味)

と取れなくもありません。

ワークシェアリングを本当に検討していくなら、もっと議論を重ねる必要が
ありますし、実際に導入するとなったとしても、導入までに長い時間が必要
です。(その辺の話はこちらの記事でも書きました)

ですから、それとは別に「緊急避難型ワークシェアリング」を導入するのは
いいのですが、なぜそこにあえて「日本型」なんて名前をつけなきゃいけない
のか、そこは理解できませんね。(というか、変な意図がありそうな気もします)


■ 「多様就業型ワークシェアリング」のメリット・デメリット

オランダ型のワークシェアリングは、「雇用の維持」にとどまらず、ワークシェア
リングという言葉の本来の意味である「仕事を分け合う」ための施策として
機能しています。

いままでよりも短時間(たとえば週4日勤務など)働く。収入は減るけど子供
と過ごせる時間が増える。そういう施策です。


もちろん、このタイプのワークシェアリングも良いことずくめではありません。
1人当たりの収入は確実に減りますから、現在期待されている「内需拡大」
には逆行することになりかねません。

そういう意味で、日本経団連はオランダ型のワークシェアリング導入には
賛成しかねる部分が多いでしょう。

経団連だけでなく、各労組もそうです。現在の組合員の利益を重視する立場
で見れば、賃金の減少につながる(※)オランダのワークシェアリングを日本に
導入することに反対して当然です。

※ 単に労働時間の分、賃金が下がるということではなく、
   「同一労働同一賃金」を実現すると、大部分の組合員の賃金は
   時給としても下がることになります。(特に年齢層が高いほど)


■ 本当の「日本型ワークシェアリング」を探すべきではないか?

確かに、日本でオランダ型のワークシェアリングを導入するのが良い結果を
生むかどうかは分かりませんし、反対する立場があるのも理解できます・・・。
(収入減→内需減→GDP低下となる可能性も高いですから)

ただ、そういったことをちゃんと議論しないままに、いつの間にか「日本型
ワークシェアリング」という新語?を作るのは、多様就業型ワークシェアリング
から目をそらさせようとしているようにも見えます・・・。これはちょっと変です。


つまり、この「日本型ワークシェアリング」という言葉自体が、中立性を欠いた
言葉だということです。

本当の「日本型」がどうあるべきか、(今の緊急避難型とは別に)、長い目で
議論していく必要があると思います。

ちょっと変な話ですが、テレビや新聞などのメディアは、本来この言葉を使う
べきではないと思います。逆に言えば、この言葉を積極的に使うメディアは
政府や日本経団連の「御用記事」を書いているとも言えるかもしれません。
(あくまでも、この問題に関してのみの判断ですが)

※ 私は日本経団連が嫌いなわけではなく、日本の経済を牽引する存在
   として期待しています(経団連の仕事をさせて頂いたこともあります)。
   ただ、今回のこの言葉に対してだけは、違和感を感じるという話です。



今日の記事作成時間は54分でした。
では、また明日!


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Posted by 水口和彦 at 23:55│Comments(3)TrackBack(1)

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相変わらず お茶を濁したような言葉遣いが気になってしまいました。 日本版ワークシェアリングと 他のワークシェアリングの違いが 働きエビ...
曖昧な言葉遣いで騙してないか?【博士課程の学生が私企業に就職するまで】at 2009年03月24日 00:18
この記事へのコメント
はじめまして、働きエビと申します。

このたび「日本版ワークシェアリング」という言葉が
あまり理解できなくて
私のブログにてこちらのページを紹介させて頂きました。

本来ならば事前に承諾を得てからの
リンク貼付け等が筋だとは思うのですが
申し訳ありません。
もしも私のブログが
水口様の意図に反するようなサイトであった場合
速やかに記事の削除など
対処をさせて頂きます。
Posted by 働きエビ at 2009年03月24日 00:19
水口です。
働きエビさん、ありがとうございます。

ご紹介ありがとうございます。ページの紹介は承諾無しでも構いません。
(出所表示無く引用(転載)する以外はOKです)

「日本型ワークシェアリング」という言葉は、ちょっと変ですよね・・・。
同じ疑問をお持ちだったようで、共感致します。

今後ともよろしくお願い致します。




Posted by 水口和彦 at 2009年03月24日 06:37
コメントありがとうございます。

私のブログの今日のアクセス数から考えると
皆さんに非常に興味を持って頂いたようです。
(これまでもyahooニュースに
リンクを貼ってもらう事はありましたが
その中でもトップクラスです。)

言葉の定義をきちんとしないで
使い始めた言葉なので
違和感を禁じ得ませんよね。

私の方こそ
今後ともヨロシクお願いします。
Posted by 働きエビ at 2009年03月25日 00:03
 

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