2009年04月01日     このエントリーをはてなにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク

「特殊スペシャリスト」と「汎用スペシャリスト」 どちらの仕事を選ぶべき?


こんにちは。水口です。
今日は「キャリアプラン」に関連した話です。


■ 労働力の3つの分類

終身雇用制が崩壊しつつあり、派遣労働などの不安定な仕事に就く人も
多い(しかも、その不安定さが現在はとても不利なものになっている)中で、
自分の「仕事の選択」について考えることは重要になっているわけですが・・・、


この記事↓に、仕事を3つの分類に分けるという考え方があります。

雇用危機・サバイバル術/堀 紘一(ドリームインキュベ−タ会長)
(Voice) - Yahoo!ニュース


この記事の前半には、こうあります。
 (『』内は引用です)
 
『 ここで「労働力」とは何か、を根源的に考えたい。労働力とは基本的に
3つに大別される。1つ目は単純労働で、いわば機械や馬の代わりである。
右の物を左に動かしたり、何かに穴を開けたり埋めたりする。誰かがやらね
ばならないことは確かだが、ある意味、誰にでもできる仕事だ。こうした労
働力の多くをいま、日本は中国やベトナムに発注している。』


こうした単純労働以外に、「スペシャリスト」的な仕事↓があります。

 
『 2つ目は、業界知識を必要とする仕事である。ホワイトカラーの仕事の
たいていは、これに該当するだろう。たとえばテレビ局であれば「カンパケ
(完全パッケージ、そのまま放送に出せるもの)」、出版界なら「著者責了
(著者の校正がすべて終わった状態の原稿)」といったような、他の業界
では絶対に使われない用語を覚え、そして業界常識をマスターして仕事に
従事する。しかしその知識は終身雇用制の下、同じ会社でずっと働くには
役に立つが、他の産業に移ればまったく通用しなくなってしまう。』


 
『 そして3つ目が、機能的な仕事である。「人事評価に詳しい」「マーケティ
ングが得意」といった類で、これは他産業においても広範囲に役立つ知識
であり、技能だ。たとえば人事のオーソリティになれば、業種を超えた横移動
が簡単にできる。マーケティングもしかり。開発力を必要とする企業なら、どの
産業でもマーケティングのプロが必要だ。あるいは銀行員でもお客さま係を
やっているような人間には専門性は根付かないが、たとえば融資を専門に
やってきた人なら、その銀行がダメになってもリース会社などに転職できる。』

                               (上記サイトより引用)

ここで「2つ目」とされているのが、特定の業界や業種の中でのスペシャリスト
的な仕事です。

  私が以前行っていた、「自動車用ブレーキパッド材料の開発」という
  仕事は、まさにこのタイプのスペシャリスト業務です。

  特に、「ブレーキパッド」の材料は、(特殊な)樹脂を使って成形するもの
  の、一般的な樹脂成型品とは、組成も製法もまるで異なっていて、かなり
  特殊な分野です。

  どのくらい特殊かというと・・・、この分野の中で、実際に材料の配合設計
  ができる人は、現役でおそらく日本に100人いるかいないかというレベル
  です。

こういうタイプのスペシャリスト業務は、会社にとってみれは貴重な存在でも
ありますが、働く人個人としては「つぶしがきかない」というデメリットも
あります。

「つぶしがきかない」というのは、その会社以外で、その能力を活かすの
がなかなか難しいということです。特殊な仕事であればあるほど、その能力を
活かして働ける場は限られています。


上記の「3つ目」は、同じく「スペシャリスト」的な仕事ですが、こちらはもっと
汎用性の高い仕事。「つぶしがきく」仕事です。

たとえば、経理や人事などはどの会社にもありますし、業界が違ったからと
いって、必要知識がまるっきり異なるというわけでもありません。そういう意味
で、培った能力を活かす場を探しやすい仕事です。

「手に職を持つ」というのも、このタイプに近いですね。


この3分類を、別の言い方をするとすれば、1つ目の単純労働は、最近時々
言われるように「コモディティ(日用品)」的な存在と言えます。

2つ目は特殊な分野でのスペシャリスト、3つ目はもっと一般的な業務の中
でのスペシャリストと言えます。勝手に命名すると、前者は「特殊スペシャリスト」、
後者は「汎用スペシャリスト」と言ってもいいでしょう。

※ 「スペシャリスト」というのは、そもそも特別な仕事ができる人を指すわけ
   ですが、単に「スペシャリスト」とひとくくりにするよりも、こう分けた方が
   分かりやすくなる事象が多いと思います。


■ 「特殊スペシャリスト」と「汎用スペシャリスト」のどちらを選ぶ?

同じ「スペシャリスト」でも、時代の流れによって注目され方は違ってきます。


従来は、終身雇用が前提だったことや、いろいろな産業が右肩上がりに成長
してきた時期のなごりなどで、「特殊スペシャリスト」に注目が集まることが
多かったわけです。たとえば、「プロジェクトX」的なものもそうです。


一方、現在、ビジネスパーソンの注目は、かなり「汎用スペシャリスト」の方に
向いています。「資格」を取得しようというのもそうですし、「コンサルタント」的
な仕事に注目が集まるのもそうです。


こういう変化が起こるのは、理由ははっきりしていて・・・、

雇用が不安定になればなるほど、「特殊スペシャリスト」は安泰ではなくなって
くるのが、その大きな理由です。

たとえば、特定の業界では、極めて高い能力を発揮した人であっても、その会
社がその事業から撤退したら・・・その仕事はできなくなります。最悪のケース
では、その業界そのものが無くなることもあります。

将来に不安を感じるほど、「汎用スペシャリスト」の方が魅力的に見えますし、
そちらに人が流れていくのは、当然のことだと言えます。


ただ・・・、

私はここに少し割り切れないものを感じています。

将来の安定や、仕事の幅を広げるために「汎用スペシャリスト」としての
キャリアを築くことは、1つの方向として賢いやり方だと思います。

しかし、そうはいっても、世の中は「汎用スペシャリスト」だけで動いている
わけではないわけです・・・。

特に、付加価値の高い製品やサービスを作り出すには「特殊スペシャリスト」
の力が必要です。世の中の「汎用スペシャリスト」志向の人が増えると共に、
会社として(大きく言うと国として)弱体化していくという面もあるのでは
ないかと思っています。

また、 「特殊」な道には、その道ならではのやりがいや充実感もありますし、
それだけ大きな仕事に関われることもあります。



今は、「特殊」はダメで、「汎用」を目指すのが正しいように言う人も多い
のですが、本当にそれでいいのか? と私は思ってしまいます。

勉強熱心なビジネスパーソンは、みんな「汎用スペシャリスト」を目指す。
なんて状況がきたら、まずいと思うんですけどね・・・。
(今は、実際にそういう流れがおきつつあると思います)

今は「汎用」を目指すのが「賢いやり方」なのは確かにそうで、それは
「特殊スペシャリスト」がなかなか評価されないという会社の制度上の
問題もあると思います。これは長い目で見て、考えるべき問題がある
ような気がします・・・。


とにかく一つ言っておきたいのは、

特殊な「つぶしがきかない」業界で、がんばっている人も立派ですし、
社会にとって必要な存在です。

ということです。そこが、今軽視されているような気がして・・・。



今日の記事作成時間は60分でした。

では、また明日!


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Posted by 水口和彦 at 23:55│Comments(4)TrackBack(0)

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この記事へのコメント
 「特殊」と「汎用」とどちらを選ぶか、との事ですが。私の知る範囲に於いては実際のところ、この二つに明確な線引きをするのは難しいのではないかと思います。
 まず「特殊技能【のみが秀でている】スペシャリスト」と云う方はまずおられないのではないかと。

>この分野の中で、実際に材料の配合設計ができる人は、現役でおそらく日本に100人いるかいないかというレベル

 と云う例を引いてくださっていますが、ではその方は「ブレーキパッドの材料の配合設計【しか出来ない】」のでしょうか。そんな事は無いであろうと想像します。突出したピークとなる特殊技能の裾野には必ずベースとしてソレを支える(つぶしの利く)汎用技能をお持ちであるはずです。裾野を持たずごく一部にのみ高いピークを持つスペシャリストなど、「このメーカのNCマシンは触った事無いから使えません」等とほざく派遣のマシンオペレータと大差ないと思うのです(若しそう云う人をして特殊スペシャリストと定義されるなら、そもそもそんなもの目指してなるべきものじゃありません)。

 職業人は(或いは主婦も含め)プロフェッショナルで在るべきと思います。そして「自分の得意はコレ」とピークを高めて行きつつ、裾野を広げベースアップも必要であると、それが理想であると考えます。
Posted by gato at 2009年04月03日 14:53
 すいません。書いてたら長文になってしまい、斬ることも出来ず分割しました。

 ピーク部分は異業種へ容易にスライド転用できる物ではないでしょう。だから(その業種での)ピークと云えるのですし。しかし、特殊技能を高める為の方法論やその為の経験値の積み上げは転用可能であろうし、裾野を広く持てば支脈からマグマを噴いて新峰を生む事も可能です。
 得意技、必殺技は絶対に必要です。しかし、必殺技へつなぐ為の小技と基礎体力も重要です。変身するなり跳び蹴り一発、これが効かなきゃバイク乗って逃げるしかない。そんな仮面ライダーはイヤだ。でも決め技を持たずヘトヘトになっても相手が参ったするまで地味にドツキ続けるしかないライダーはもっとイヤだ。

 長文失礼致しました。
Posted by gato at 2009年04月03日 14:56
会社とゆう屋根の下で生かす…とゆう事を考えると、特殊スペシャリストであっても、今の時代は自分を売り込む姿勢が必要かもしれませんね。
なんと言うか…目先の利益が早急に必要な会社が多く、特殊スペシャリストを手元に置いて一から自社で!とゆう事が難しいとゆう現状もあるのかと。。
数少ない貴重なスペシャリストであればあるほど、それなりの場所も会社が準備しなければいけないと思いますし。
ただ、特殊スペシャリストとして、会社の屋根が無くても自分はこの道を!とゆう夢を抱えた人は多く出てほしいですね(^^)!
Posted by 大熊ねこ at 2009年04月03日 17:32
水口です。コメントありがとうございます。

gatoさん
おっしゃることはよく分かります。私も同じように考えている部分もあります。

・「特殊」と「汎用」の明確な区分線は無い
・「特殊」分野で秀でている人は他にも応用が利く能力を持っている

私もそう思います。

ただ、世の中からの見られ方(評価?)や、具体的な職の探しやすさには差があり、
今はそれが顕著になっているようで・・・、そこが気になるところです。

「つぶしがきかない」からといって、「特殊」側の仕事が学生さんから
敬遠されるようなことにはなってほしくないものです・・・。


大熊ねこさん
なるほど、確かに「特殊」な仕事の方も、流動性が高まる傾向はあるかもしれません。
(IT系は特にありそうです)
「スペシャリスト」個人のあり方として「専門」を持っているだけでなく、
「売り込む」ことを含めた、たくましさのようなものが求められるのかもしれませんね。



Posted by 水口和彦 at 2009年04月04日 18:38
 

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