『終身雇用制』は、本当に否定すべきものなのか?
こんにちは。水口です。
今日は、昨日の話と関連して、雇用制度について
考察してみたいと思います。
■ 「特殊スペシャリスト」と「終身雇用制」
昨日の話というのは、仕事を3つに分類するという考え方の話でした。
□ 単純労働
(基本的に誰でもできる仕事)
□ 特殊スペシャリストとしての仕事
(その会社以外で能力を活かすのは難しい仕事=やや転職しにくい)
□ 汎用スペシャリストとしての仕事
(会計・人事・マーケティング等の業種に関係ない仕事=転職しやすい)
という3つです。
この3つのうち、「特殊スペシャリスト」の仕事は、終身雇用制と深い関係が
あります。
終身雇用が基本だからこそ、安心してその分野に打ち込めるという面が
あるわけです(狭い業界のスペシャリストは、その会社を辞めると次の仕事
を探すのが大変ですから)。
逆に、雇用が不安定な状況が長く続くと、色々な会社で働ける仕事
(=手に職を持つタイプ)の「汎用スペシャリスト」を希望する人が増えるの
は当然のことです。
しかし、これは日本という国にとっては危険なことです。特殊スペシャリスト
がいなければ、日本の製造業の力は弱体化するのは間違いありません。
(中国やインド、他のアジア諸国などでは作れない高付加価値製品が
日本の会社から消えてしまうかもしれません。そうなると、人件費も
他国並にならざるを得ず、それは製造業以外にも波及します・・・)
というわけで、私は実は終身雇用については肯定的な見方をしています。
むしろ、日本の「強み」であると考えています。
■ 終身雇用制否定論者の言い分
一方、終身雇用制を否定する風潮が、現在目立つようになっています。
その発端は「派遣切り」にあるわけです。
そもそも、製造業などで人件費の安い派遣労働者を増やしたがるのは、
現状の終身雇用の仕組みを守りつつ、人件費を下げるという狙いが
あったのは否定できません。
それが「派遣切り」等の問題を生んだわけだから・・・、
「悪いのは終身雇用制だ」「終身雇用制を見直すべきだ」
という論調があります。
「終身雇用制を見直し、正社員も首を切られるようにすれば、みんな
平等になるからいいじゃないか」という主旨です。
しかし、私はこれには賛同できません。
製造業での派遣労働者の扱いは見直すべきだと思いますが、「終身雇用」
を無くせば解決するというものでもありません。むしろ、弊害が大きいです。
労働力の流動化を推し進めると、製造業は、特に高付加価値製品を作る
製造業は確実に弱体化するはずです。(← 実際に製造業で研究開発を
していた人間の意見です)
私には、「終身雇用否定論者」の方は、日本の製造業をアメリカのように
弱体化させたいという狙いがあるのか、あるいは、日本を「金融立国」化
するという野望があるのか・・・? というふうに見えてしまいます。
(もちろん、そんなつもりは無いのでしょうけど)
しかし、せっかくの「強み」を弱体化させてどうするんでしょうか・・・?
というわけで、先ほどの「終身雇用制が無くなれば、みんな平等」的な
考えは、一見魅力的です。しかし、これを実行すると・・・、みんな平等に
はなるけれど、国としての国際競争力は落ちていく。という結果を導く
と思います。これが良いこととは到底思えません。
(こちらの記事↓の中にある、H.ミンツバーグ氏のご意見もご参考に)
『「会社は株主のもの」は誤り』は誤りだけど・・・
■ 解決策は?
では、どういう解決方法があるのか? という話ですが、
「終身雇用」をもう少し分解して考える必要があります。
むしろ、現在実質的に問題なのは、「終身雇用」よりも「年功給」のシステム
だと思います。
日本の企業は、長く「年功給」的なシステムを取ってきました。
(名目上は「職能給」で、実質的にはほぼ年功給という会社も多いです)
年功給とは、「会社への貢献度」よりも「勤続年数」に従って、賃金が上がって
いくシステムです。これは悪いことばかりでもないと思いますが、現在は少々
無理が来ているように思えます。
これを具体的に改善するには、年代が上の人の賃金を減らし、若手の人数
を増やす。という方向になると思います(派遣よりも直接雇用を増やします)。
もちろん、賃金制度を変えるには、大きな抵抗がありますから、すぐにできる
ものではありませんが、長い目で見ればその方向に行かざるを得ないのでは
ないでしょうか。(こうすうrと流れとして「同一労働同一賃金」にも近づきます)
そして、ここがポイントなのですが・・・、
この2つ、
□ 年功給 → 年齢が上がると賃金が上がる
□ 終身雇用 → 正社員の首切りをするか、しないか
は、実は直接の関係はありません。分離可能なものです。ですから終身雇用
を守ったまま、賃金制度を変えることだって可能です。
※ つまり、先ほどの「終身雇用制が問題」という話は、実は「年功給」の
問題と「終身雇用」をすり替えているわけです。あるいは。終身雇用と
年功給が不可分なものと決めてかかっているということです。
こういう論旨のすり替えは、話がこじれる元です・・・。
というわけで、私の意見は・・・、
確かに、「年功給」は見直していく必要があると思います。「同一労働同一
賃金」に近づけるためにもこれは必要です。
しかし、私は「終身雇用制」に関しては、あくまでも肯定的な見方です。
やめるべきではないと考えています。
もちろん、人それぞれ考え方はあっていいですし、私の考えを押しつける
つもりはありません。ただ・・・、
少なくとも、「終身雇用」と「年功給」の問題を分離せず、ひとくくりのまま
切って捨てるような論調は『眉に唾して』聞いた方がいいと思いますよ。
(確信犯的にごまかして語る人もいますから・・・)
今日の記事作成時間は51分でした。
では、また明日!
Posted by 水口和彦 at 23:55│Comments(0)│TrackBack(0)
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