2009年05月10日     このエントリーをはてなにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク

「言うは易く行うは難し」の○理論と 「無難な」○理論、どっちを取るか?


こんにちは。水口です。

今日は、用語解説でもあり、経営のあり方やリーダーシップにも関連した
話です。


■ 「性悪説」的なX理論と「性善説」的なY理論

こんな記事がありました。

「性善説」経営 vs 「性悪説」経営。あなたの会社は?
(プレジデント) - Yahoo!ニュース


 (『』内は引用です)
 
『 不況で業績が悪化すると統制的な手法で組織を締めつけ、業績を上げよう
と試みる経営者が多くなる。一時的には業績が上がるかもしれない。ただ、長
い目でみると多くの場合、従業員の士気を低下させ、組織を疲弊させるだけ
の結果に終わる。
 この問題を考えるうえで参考になるのがマグレガーの「X理論・Y理論」である』

 
『 X理論とは、単純に言うと性悪説である。人間は生来怠け者でできるだけ
仕事をしたくないと思っている。従って大抵の人間は統制や命令、あるいは
処罰で脅されなければ企業目標の達成に十分な力を出さない。また、普通
の人間は命令されるほうが好きで、責任を回避したがり、安全を望むという
考えである。

 これに対しY理論は性善説である。人間は生来仕事が嫌いということは
なく、条件次第で仕事は満足感の源にも懲罰にもなる。従って統制や命令、
処罰だけが企業目標の達成に力を発揮する手段ではなく、やりがいのある
仕事を与えれば人は自ら働く。また、普通の人間は条件次第で責任を引き
受けるばかりか、自ら責任を取ろうとするという考えである。』

                              (上記サイトより引用)

とあります。

この「X理論・Y理論」というのは割と有名なものですが、そう話題になるもの
でもないので、初耳の方も多いかもしれません。


こちらの本↓に書かれているものです。
―――――――――――――――――――――――――――――――
企業の人間的側面―統合と自己統制による経営
著者:ダグラス・マグレガー
販売元:産能大学出版部
発売日:1970-08
おすすめ度:5.0
クチコミを見る

―――――――――――――――――――――――――――――――
↑古い本のせいか? 写真がありませんね・・・。

※ この新版が刊行されたのが1970年。今のビジネス書ほど字が大きくない
   ですから、ページ数以上にボリュームのある本です。私が読んだのは昨年
   だったと思います(多分)。


さて、X理論、Y理論に話を戻します。

X理論は、「性悪説」的。人をまとめるためには、「アメとムチ」を使わなければ
いけないという考え方に近いです。

Y理論は、「性善説」的。人をまとめるためには、「やりがいのある仕事」や、
「魅力的なビジョン」が重要だという考え方に近いです。


これは、人は本来どちらの性質を持っているか? という議論をするのが狙い
ではなく、「どちらの方針で経営するべきか?」という、思想的な側面が強い
話です。


■ 現在多くの企業が「X理論」に走りがちでは? という話

先の記事では、
 
『 また、経営者が短期的な成果を追いかけると、X理論的な方向へ行き
がちになる。厳しいノルマを課し、裁量は与えず、目標を達成できなかったら
ペナルティで追い立てる。しかし、そんなやり方をしたら会社がおかしくなって
しまう。 』
  
 
『  見方を変えると、
(Y理論のアプローチでは) 時間をかければ会社を良く
できるということでもある。業績が低迷すると短期的な数字を求めX理論
に走りたくなるが、そこを辛抱するのが真の経営者である。

 Y理論に基づいた経営を行えば、社員のミスも出てくるだろうし、すぐV字
回復ということにはならない。だが、それを承知で10年先、20年先には必
ず良くなるという長期的視野で取り組むことが大切だ。
 そうすれば社員も「ここは良い会社」と感じて懸命に働いてくれるだろう。 』

                     (上記サイトより引用。括弧部のみ追記)

とまとめられています。

私も、この考え方には基本的に賛成です。

「どちらのアプローチが業績を上げられるか?」という点について、なかなか
定量的な議論はできないのですが・・・。


「X理論」、つまり、アメとムチ(報酬やペナルティ)によってやる気を引き出す
やり方には限界があると考えています。
(3倍報酬が出ても、3倍やる気になることは実際には無いわけです)


一方、「Y理論」的な、仕事の面白さ、事業の社会貢献や「やりがい」といった
ものが人の力を大きく引き出すことは、大いにあり得る話です。

「Y理論で経営すべきだ」というのは、ある部分「きれいごと」的な面もあります
が、それに近いチームや組織が実際にあるのも事実であり、実現不可能だと
いうわけではありません。

もちろん、働く側から見て「Y理論」的な経営の方が魅力的なのは、言うまでも
ないことです。


しかし現在は、たとえば「成果主義」や「株主重視の経営」「雇用の不安定化」
等々、社会としても企業としても、短期的な側面に注目がいきがちですし、
「X理論」的な側面が強くなっているように思えます。


■ 「言うは易く行うは難し」のY理論と 「無難な」X理論

「Y理論」には「言うは易く行うは難し」の面があります。

たとえば、組織のモラルが低下していたりする場合は、まずはX理論的な
アプローチが必要なこともあるでしょう。

また、ちょっと変な話ですが、仕事自体のやりがいが全然無かったり、
最悪の場合、仕事の中で「人をだます」ようなことをしなければいけない
場合は、Y理論は意味がありません。

つまり、

  最高のX理論経営 < 最高のY理論経営
 
  最低のX理論経営 > 最低のY理論経営

となるわけです。そういう意味では、「X理論経営の方が無難」 ということに
なるわけですね。

実際のところ、「ビジョン」を掲げている企業は多いですが、それが「Y理論」的
に有効に機能している例は、それよりもずっと少ないわけで・・・、そう考える
と、ついついX理論的に走りがちになるのも理由があるわけです。




それはそれとして、「それでも、Y理論による経営を信じる」 そんな経営者が
増えることを望みたいですね。私はまだまだですが、できればそうありたいと
思います。

もちろん、あなた自身もそうあってくれるとうれしいです。
(「今はまだ」という方も将来は分らないですよ)

そのためにも、「X理論・Y理論」という言葉を覚えておいては
いかがでしょうか。




補足です。

こちらも参考になると思います。
ダグラス・マグレガー X理論とY理論
|世界のビジネスプロフェッショナル 思想家編|ダイヤモンド・オンライン



今日の記事作成時間は55分でした。
では、また明日!


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Posted by 水口和彦 at 23:55│Comments(2)TrackBack(0)

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この記事へのコメント
X理論・Y理論による経営手法は、
人のモチベーションに関わる外発的誘引・内発的誘引とも
深い関係がありますよね。
なかなか難しいテーマだというように認識していましたが、
水口さんの解説はとっても分かりやすかったです。
ありがとうございました。
Posted by makoto at 2009年05月17日 17:40
水口です。
makotoさん、おほめ頂いてありがとうございます。

そうですね。
外発的・内発的の違いという見方もありますね。

外発的誘因(給与アップ等々)→ X理論的
内発的誘因(仕事そのものへのやりがい等)→ Y理論的

ですね。


モチベーション系の本を読んだりしていると・・・、

もし、人の「究極のやる気」のようなものがあるとすれば、
それは間違いなく「内発的」なものだと思えてきます。

「Y理論」の目指すところは、その「究極のやる気」をベースにした経営と
言ってもいいのかもしれませんね。

Posted by 水口和彦 at 2009年05月17日 20:01
 

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