「ゆがんだインセンティブ」と「正当化する大義名分」
こんにちは。水口です。
ちょっとタイミングが遅い感もありますが・・・(汗)
asahi.com(朝日新聞社):
弁当値引き制限、セブンイレブンに排除命令へ 公取委 - 社会
このセブンイレブンの「見切り販売」は、意外に根が深い問題ですし、コンビニ
だけでなく、どんな職場にも共通する「ある問題」と深くかかわっています。
たとえば、日頃仕事をしていて感じる
「上司の意思決定が遅いので仕事が進まない」
といった問題と、共通する原因(メカニズム)があります。今日はこの話を。
■ 「見切り販売をさせない本部」の一番の問題は?
セブンイレブンの件は、収束に向かいつつあるので、今さら文句を言いたい
わけでは無いのですが、いろいろ考えてみると結構参考になる点があります。
まず、このニュースの一般的なとらえられ方は、
コンビニのフランチャイズ本部が、加盟店に対し、
値引き販売を許さなかった
という点が問題だと言われています。
そのため、こんな意見もあります。
「捨てるよりも、値引きしてでも販売した方が、
本部も儲かるはずなのに、何で値引きさせないの?」
「いやいや、値引き販売してしまうと、ブランドイメージが
傷つく(安売りのイメージがつく)から、ダメなんだよ」
しかし、この意見はちょっと的外れです。
実際は、お弁当を廃棄しても、本部側は儲かる仕組みになっていたそうです。
(一部の加盟店が怒っていたのは、この仕組みのせいでもあります)
どういうことかというと、仕入れたお弁当に対し、それが売れても売れなくても、
その商品に対するロイヤルティー(本部の取り分)が発生する仕組みになって
いたそうです。
【解説:すでにご存じの方はスルーしてください】
―――――――――――――――――――――――――――――――
コンビニのフランチャイズの仕組みは、基本は粗利益(売価ー原価)を、本部
と加盟店で分け合うようになっています。(本部の取り分=「ロイヤルティー」)
商品を廃棄すると、粗利益が無いのは当然として、原価の分も損します。
しかし、その商品のロイヤルティー(本部の取り分)は、しっかり取られてしまう
仕組みになっていたそうです。
つまり、「売れても捨てても本部は儲かる」「見切り販売より廃棄の方が本部
が儲かる」という仕組みになっていたわけです。
(※ 見切り販売→粗利減 なので本部の取り分は減ります)
―――――――――――――――――――――――――――――――
【解説終わり】
ですから、本部側が見切り販売(値下げ)を渋るのは当然と言えば当然のこと。
極端に言えば、「どんどん仕入れさせて、捨てさせれば本部は儲かる」という
仕組みになっているわけですから。
こうなると、
「会社の利益を上げよう」と考えている真面目な社員ほど、
「見切り販売させない」「廃棄を増やす」方向に加盟店を指導する
そういう「インセンティブ」(動機づけ)が働くことになります。
※ 実際にそういう社員がいたかどうかは別として、インセンティブの
構造としてそうなっているという話です
このインセンティブは、ちょっといびつですね。
こういうゆがんだインセンティブ構造があると、「真面目な社員」が変なことを
してしまう・・・というのは、今回の問題に限らず、いろいろある話です。
ただ、「インセンティブ」だけでは物事はそう大きく動きません。この問題の場合、
「食品を廃棄する」ことの罪悪感は、多かれ少なかれ誰もが持っています。
でも、廃棄させた方が(本部は)儲かる・・・。ここに葛藤があります。
この葛藤から解放されるためには、「大義名分」が必要です。
コンビニの場合には、
品揃えが充実しているからこそ、お客さんが来てくれる
仕入れを減らして品切れが出れば、加盟店のためにならない
(だから、廃棄が増えるのもやむを得ないのだ・・・)
というのが「大義名分」になります。
(※ この大義名分は、理屈上間違いではありませんが・・・)
上記のゆがんだインセンティブ構造に、この大義名分が加わると、
物事は急速に悪い方向に進み出すものです。
その本人は、「真面目ないい人」である場合も多いのですが・・・。
本人の自覚なしに変な方向に進んでいってしまうわけです。
■ なぜ上司は「上司の上司」の意向をそんなに気にするのか?
「上司」と呼ばれる人がすべてそうではありませんが、日本の会社では一般的
に「ムダな会議が多い」と言われますし、「上司が決断してくれない」という話は
よく聞きます。
たとえば、
本来は課長(または部長)権限で決済していいことなのに、
部長(または役員)におうかがいを立ててからでないと決められない
という例、これは組織の仕事のスピードを低下させますし、良くありませんよね。
しかし、こういう話は本当によく聞きます。
これにも上記と同じような問題があります。
まず、なぜ意思決定が遅いかというと・・・
もしも失敗したときに、責任を追及されたくない
だから、色々な人におうかがいを立てたり、会議を重ねておいて、
「自分の責任」ではなく、「みんなの責任」になるようにしたい。
というのが、意思決定を遅くしてしまう原因になっています。
なぜそんな責任回避をするかというと・・・、そこにゆがんだインセンティブ構造が
あります。それが、
多くの会社は「成功した」社員よりも「失敗しない」社員を高く評価する。
だから、(真面目な人ほど)「失敗しないように」行動するようになる
というインセンティブです。
しかし、これを後押しする『大義名分』が無ければ、物事はそう悪い方向には
いきません。
その大義名分に当たるのが、いわゆる「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」の
文化です。
「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」は重要
物事はマメに報告や相談した方がいい
という考え方です。
もちろん、「ホウレンソウ」自体はもちろん悪いことではないのですが、それが
上記のゆがんだインセンティブ(決断しない上司)を後押しする大義名分・・・
つまり、言い訳になってしまうと、変な方向に進んでしまうわけです。
そして・・・、この問題を根本的に解決するには、「大義名分」の方を攻撃する
のではなく、元にある「インセンティブ」を攻撃しなければいけません。
上司の例だと、会社が「失敗しない社員」を評価する傾向を変えない限り、
「根本的な」解決は難しいのです・・・。
似たような「インセンティブ」と「大義名分」の話は、よく見ると世の中のいたる
ところに存在します(政治の世界なんか典型的かもしれません)。
この話は、突き詰めていくと大きな話になってきますが・・・
今日はこのへんで。
今日の記事作成時間は68分でした。
では、また明日!
Posted by 水口和彦 at 23:55│Comments(0)│TrackBack(0)
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