「うっかり」してはいけないという発想、「うっかり」をカバーするという発想
こんにちは。水口です。
今日は仕事につきものの? 「ヒューマンエラー」についての話を。
■ 「ヒューマンエラー」は必ず起こる
JRについて、気になる記事がありました。
といっても、停電の話ではなく・・・
千葉のJRでオーバーラン相次ぐ 運転士が「考えごと」
- MSN産経ニュース
(『』内は引用です)
『 29日午前8時半ごろ、千葉県茂原市のJR外房線新茂原駅で、千葉発
上総一ノ宮行きの普通電車(8両編成)が停止位置を約240メートル過ぎて
停車した。乗客約300人にけがなどはなかった。
JR東日本千葉支社によると、運転士が通過駅と勘違いし、気づいた車掌が
ブレーキをかけた。電車を停止位置まで戻し約17分遅れで運転を再開、上下
線2本が遅れた。
また午前7時55分ごろ、同県柏市のJR常磐線柏駅でも、電車(15両編成)
が停止位置を約250メートル過ぎて停車、上下線2本が遅れた。東京支社に
よると、運転士が考え事をしていてブレーキをかけるのが遅れた。 』
(上記サイトより引用)
という記事です。
ここで言う「オーバーラン」とは、電車がホームの停車位置を通り過ぎてしまう
ことです。4年前の脱線事故以来、オーバーランが話題になることが増えました
が、これが無くなる気配は無さそうです・・・。
このオーバーランについては「運転士がけしからん」的な扱いをされることが
あります。通過駅と勘違いするとか、考え事をしていてブレーキが遅れるとか、
「運転士の教育(やその他)に問題があるんじゃないか?」という意見もあるの
ですが・・・ 私はそうは思いません。
逆に、運転士にだけ頼る仕組みの方に問題があると見るべきです。人間の
やることですから、「絶対にミスしない」ということはあり得ないという前提で、
いかにミスを防ぐ仕組みを作るか頭を働かせるべきです。
実際、オーバーランは決してゼロにはなっていないわけで、その対策が毎回
「運転士への指導」では進歩がありません。
※ 生産技術関係の仕事をしたことのある方は同意見ではないでしょうか。
工場の製造設備では、事故や品質不良を起こさないために、間違った
操作ができないように様々な対策が取られています。
(「フールプルーフ」とか「ポカヨケ」と呼ばれるものがその例です)
もちろん、物によっては「絶対にミスが起こらない」というところまでの
対策が(設備的には)できない場合もあります。ただ、そういう項目は
できるだけ数を減らしていくのが基本です。
年間に何百万も何千万個も作る製品で、ミスの発生を0%にするのは
本当に大変なことです。電車も基本は同じだと思うのですが・・・。
もちろん運転士さんのスキルは高いとしても、人間である以上「何万回
と行っても絶対にミスしない」というのは不可能と考えるべきです。
※※ また、「オーバーランぐらいでガタガタ言わなくていいんじゃない?」と
いう意見もあると思います。これはダイヤの状況や遅れに対する許容
度によっては一理ある意見です(オーバーランがあっても他への影響が
無い場合)。JRの場合はそうではないようなので、それならちゃんと
対策を考えるべきだということになります。
・・・というか、
「もうすぐブレーキ開始位置」とか「次が通過駅(または停車駅)」という情報を
運転士に知らせるシステムはその気になれば作れるはずで、それが無いという
ところに・・・驚いてしまいます。
■ 「ヒューマンエラー」を防ぐ仕組み作りに「頭」を使う
私鉄でそういう取り組みをしているところはあるようです。
(これは一昨年の記事です)
GPSでオーバーラン防止/近鉄が運転支援システム―四国新聞社
(『』内は引用です)
『 近畿日本鉄道は19日、停車駅でのオーバーラン防止のため、衛星利用
測位システム(GPS)を使った国内初の運転士支援システムを開発したと発
表した。2007年度後半から一部路線を除き全線に導入する。
オーバーランの経緯を近鉄が調査したところ「ほかのことを考えていた」という
のが半数に上った。電車ごとに現在位置をつかみ、停車駅などについて細か
く注意喚起する必要があると判断、GPS利用を思い付いた。
運転士は、乗車時に端末(縦約9・5センチ、横16センチ、幅約4センチ)を
セット。次の停車駅やブレーキをかけ始める位置、駅のホームの停止目標接近
を音声や画面で知らせる。制限速度に近づいたことや徐行、工事区間も分か
る仕組み。 』 (上記サイトより引用)
電車の運転を自動化するとかそういう話ではなく、「そろそろブレーキ開始」、
「次は通過駅」といった情報を音で伝えるだけでも、ミスはぐっと減ります。
ちょっと厳しい言い方になりますが、なぜ、こういうのをそれまでしなかったのか
(今もしていない会社があるのか)、疑問です。
ちなみにこの記事で紹介されているシステムの仕組みはポータブルタイプの
カーナビと基本は同じです。本当にカーナビのハードウェアを流用してるかもしれ
ません(実際流用出来るはずです)。
頭を使えば、意外に低コストでできるということですね。
あまりお金をかけられないという事情もあるでしょうが、その分「頭を使って」
対策を考えれば、こういうアイディアは出てくるわけです。
しかし、他の鉄道会社では「運転士はミスを起こしてはいけない」とか、「運転士
は訓練を受けた特別な人間だ」というプライドがあるせいで、対策に目が向かな
くなっているのではないでしょうか?
■ 「うっかり」してはいけないという発想、「うっかり」をカバーするという発想
私がこういうヒューマンエラー系の話にこだわるのは、生産技術や品質保証の
仕事をした経験があるためです。こういったヒューマンエラーの話は奥が深いの
ですが、特に大事なことの一つとして、
「うっかり」してはいけないという発想
「うっかり」をカバーするという発想
この2つの発想のどちらから出発するか?という違いがあります。
そして、前者の発想を取っている人は、後者の発想に目が向かないことが多い
です。この2つの考え方の間には、深い溝があるのです。
その一つの要因が、「プロなんだからミスしてはいけない」という考え方です。
ミスを防ぐための装置を設置することは、「運転士がミスを起こす」ことを認める
ようなもの。それはプライドが許さない・・・。根っこの部分にそういう考えがある
と「うっかりをカバーする」という発想は出てきません。
※ もちろん、プロとしてミスすべきでない、ミスの無いように心がけるのは
当然のことです。しかし、何万回に1回起こるレベルのミスを根絶したい
なら、ミスをカバーする考え方も本来は必要なものです。
(もちろん、ミスを容認してもいいというわけではありません)
こういう発想の違いは、決して他人事ではありません。
デスクワークにも同様の考え方の違いはあります。
特に、ミスをした部下を「指導」するだけで問題を解決したと思っている上司の
方は要注意・・・。頻度は少なくても、くり返し起こるミスであれば、「うっかりを
カバーする」発想が本来は必要なのです。
今日の記事作成時間は60分でした。
では、また明日!
Posted by 水口和彦 at 23:55│Comments(0)│TrackBack(0)
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