2009年08月07日     このエントリーをはてなにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク

「電力の倍額買い取り」は「ムダな仕事」を増やすことにならないか?


こんにちは。水口です。

今日は「時間」の話とは直接関係ありません。

でも、もしかしたら間接的には関係あるかもしれない、
「無駄な仕事」についての考察の例を紹介します。


■ 太陽光発電の普及策はこれでいいのか?

こんなニュースがありました。

太陽光電力買い取り義務化 家庭の余剰分、48円に倍増
(フジサンケイ ビジネスアイ) - Yahoo!ニュース


太陽光発電を普及させるために、電力会社が電気を買い取る価格を上げる
という話です。

 (『』内は引用です)
 
『 経済産業省は6日開いた総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)
の小委員会で、太陽光発電設備を持つ家庭などから、余剰電力を電力会社
に義務的に買い取らせる制度の詳細を取りまとめた。

 家庭の余剰電力は1キロワット時当たり48円で、燃料電池と併用している
家庭からは同39円、事務所や工場など非住宅からは同24円になる。年内
に制度をスタートする。

 電力会社は現在、家庭から1キロワット時当たり24円で自主的に買い取っ
ているが、これを義務化した上で、2倍の48円にする。太陽光発電設備を持
つ家庭は、設置費用の補助金と買い取り制度を利用すれば10〜15年で元
がとれる計算だ。』

                                 (上記サイトより引用)

一般家庭や事業所などで導入した太陽光発電で、昼間に余剰になった電力
を電力会社が買い取る。これは現在も行われていますが、その単価をほぼ倍
に上げるという話です。

「太陽光発電の普及を後押しする」という意図には賛成ですが、二重価格に
するのはどうなんでしょうね? 私はちょっと疑問に感じています。

その理由は、太陽光による電力買い取りの割増分は、結局一般家庭が負担
することになる。「だから不公平では?」という問題がひとつ。

そして、あと2つ問題があります・・・。


■ 倍額で買い取ることの問題

2つめは、こういう二重価格は詐欺的に使われる可能性がある問題です。

たとえば、太陽光発電を設置した家屋に(隣家から)電気を引けば、太陽光
による発電分に通常価格の電力(通常の電力)を上乗せして、多めに買い取
らせることも不可能ではありません(技術的には)。

あるいは、夜間に通常電力で充電した電力を、昼間に(太陽光発電と称して)
倍額で買い取らせることも可能かもしれません。
(価格が二倍ですから、充電のロスは充分カバーできそうです)

そんな手の込んだ詐欺行為は割に合わないかもしれませんし、実際にやる
人はいたとしてもごく少数でしょう。しかし、そういう可能性が表沙汰になって
くると、いろいろ手続きを増やさざるを得ません。

買い取り用に使われる電力が「太陽光発電による電力」であることを証明する
手続き(回路の検査や承認手続き)が必要になったり、定期的に更新が必要
になったりする可能性はあります。

「買い取り価格の方を高くする」という無理のある策のために、こういった余分
な手続き(ある意味「ムダな仕事」)が増えるのは合理的とは思えません。



もうひとつは、この制度が(設備費用が回収できる)10〜15年の間、続いて
くれるかどうかの問題です。

もし、太陽光発電を導入する家や事業所がものすごく増えたとしたら、この
仕組み(買い取り時の割増分を通常の電気代に上乗せする仕組み)が
成立しなくなるのではないか? という懸念があります。

 
『 上乗せ分は導入当初は、標準家庭の場合、月額30円程度で、5〜10
年目は50〜100円となる見通しだ。』


と上記記事では紹介されていますが、もしこれを上回るペースで導入が進み、
割増額が大きくなってくると、「不公平だ」という声が大きくなってきます。
それでも、制度を持続させることができるのか・・・? という点が問題です。

制度が長期間続いてくれるかどうか不安だと、設置に二の足を踏む人が
多いのではないでしょうか。

※ たとえば、「この制度は何があっても2025年までは続ける」と法制化
   するくらいのことをしないと・・・安心できないのではないでしょうか。
   (個人的にはそういう法制化には賛成しませんが)


■ 倍額買い取りよりも有効な手法?

・・・と、この施策にはいろいろ問題があるように思えます。そもそも、この策は
補助金を出すにも限りがある中での「苦肉の策」的なところがあるように思え
ます。

そういう事情も理解できなくはないですが、なんだかまどろっこしく感じて
しまいます。目的に対して、ムダな仕事が多い感じです。


というのは、太陽光発電は家庭用の小規模なものよりも、大規模にした方が
コスト的にはずっと有利なはずだからです。仮にソーラーパネル(セル)の単価
が同じだとしても、設置するコストやメインテナンスのコストは、規模が大きい方
が大幅に下がります。

ですから、土地が確保しやすい地方の場合、一般家庭から電力を買い取る
よりも、電力会社が自前で太陽光発電した方が低価格で発電できることも
充分考えられます。

それが進まないのは、現状、太陽光発電では設備投資に見合うリターンが
得られないということ・・・。その(割に合わない)設備投資を一般家庭や事業
所に、(さらに低いコスト効率で)負担してもらうために、上記の割増買い取り
制度を作ったというわけです。

ですから、純粋に「太陽光発電の比率を増やす」という目的から考えると、
上記の策は「無駄な仕事」ばかり増やす施策に思えてしまいます。
(※ 「無駄な仕事を増やす」のも一種の景気対策ではありますが・・・)


これを、もっとすっきり考えるならば・・・、

・ 「(国策として)太陽光発電の比率を上げたい」という前提で

・ 通常電力は少し値上げしてもいいとする
  (上記の割増買い取りも実質的に同じです)

という前提として、

・ 総発電量に占める太陽光発電の比率を必達目標として
  各電力会社に義務付ける

とした方が、合理的だと思います。


太陽光発電の比率が目標を達成するなら、電力会社が自前で太陽光発電所
を設置してもいいし、家庭や事業所からの買い取りを強化してもいいとします。

買い取りに関する手続きが煩雑になる可能性があるのは、上記と同じですが、
それを含めてコスト効率が高い方式を取り入れていこうという主旨です。
(実際にこうしたら、大規模発電の方に流れそうな気がしますが)

「それでは、一般家庭の太陽光発電導入が進まない!」という意見もあると
思いますが、本来の目的は国全体で太陽光発電の比率を上げることであって、
そのために大規模発電が合理的ならそちらの線を取るべきでしょう。


どうやって(電力会社に)義務付けるか等々、この案も難しい面はありますが、
「ムダな仕事を増やし、そのコストを利用者に負担させる」というやり方よりは
いいと思うのですが・・・。いかがでしょうか。

※ この話に限らず・・・ 一般的に、どうも「エコ」系の話になると、合理的で
   ない話であっても、メディアや世論であまり文句が出ない気がするのは、
   私の気のせいでしょうか? 

  


この案が正解かどうかは分かりませんが・・・、それは置いておいて。

会社という組織の中にいると、いろいろな制約や前例、しがらみ等々が
からみあって、ムダな仕事が増えてしまっていることが多々ありますよね。
そういうのは、「本来の目的」に立ち戻ってやり方を見直すことも必要です。

もちろん、せっかく考えても、いろいろな反対にあってうまくいかないことも
あります。それでも考えることはやめてはいけない。そう思います。
(考えることをやめると「考えない」のが当たり前になってしまいます)


上記の電力の話のように、「これってムダじゃない?」と思ったことについて
改善案を考えてみるのは、一種の「頭の体操」にもなっておすすめですね。



今日の記事作成時間は80分でした。
では、また明日!


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Posted by 水口和彦 at 23:55│Comments(9)TrackBack(0)

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この記事へのコメント
はじめまして。
貴殿のブログを拝見いたしました。
たしかに、一般の方にしてみると様々な疑問点はあろうかと思います。しかし、じつはこの制度は古くからあり、海外では自然エネルギーの導入には非常に効率のいい方法であることが実証されています。貴殿の仰るような非効率なものではありませんので、ご安心下さい。(むしろ今の日本の設置に対する補助金の方が非効率)また、たしかに一般の方の負担が増えるという意見もありますが、もし、このまま石油依存でいくと昨年のようなエネルギーの高騰が継続することとなります。そのほうが国民の負担は増えることとなります。また、太陽光発電が増えていけば導入コストはいずれ現在の電力より安くなり、(おそらく5年〜10年後、ヨーロッパではすでに一部達成)それによってトータルのエネルギーコストは下がっていきます。いずれにしても貴殿の心配は杞憂に過ぎませんのでご安心下さい。
すべてのことはこちらのサイトに記述があります。(厖大な情報量のため読み込むに苦労するかもしれませんが)⇒http://ks.nwr.jp/

ちなみに電力の他の系統から引っ張ってきた電気を違う系統に流すことは犯罪行為というよりも非常に危険な行為で一つの建物に異なる系統を繋ぐこと自体現状厳しく禁じられています。
Posted by ほりほり at 2009年08月08日 23:30
水口です。
ほりほりさん、サイト拝見しました。ありがとうございます。

「杞憂にすぎません」と言われても、にわかに納得はできないところがありましたが、
それだけ一般に情報量が不足しているところもあるんでしょうね。

FIT制度がどういうものか理解できたので納得できたところもあります。
実際は「先に買うほどお得」(買い取り額は設置年度で決まる。その額は年々下がる)
ということなんですね。

確かに、民間の資本を引き出すために(買い控えしないために)
有効な仕組みだと思います。



誤解してほしくないのですが、私は太陽光発電を増やすことには賛成ですし、
そのために社会全体でコスト負担することがあってもいいと思っています。

ただ、同じコスト負担をするなら、同じコストで発電量が多い
(相対的に設置コストが低い)大規模の方が理想形だと思うわけです。
その方が、同じ費用負担でより多くのセルが売れることにもなりますから、
よりコストダウンも進むでしょうし。

ただ、実際問題として民間企業は(電力会社は)そういう投資が出来ない。
投資額の問題というよりは、回収期間の問題で・・・。
(現状は太陽光発電に投資するとROAが下がり、株価も下がってしまう)

だから、一般家庭を含めた(回収期間にそこまでこだわらない)資本を
引き出すための策を取る。そのために最適なのがFIT制度。
という理解をしております。


Posted by 水口和彦 at 2009年08月10日 08:39
太陽光発電の普及は地球温暖化対策の目玉施策として、
注目されてますよねー。

でも、「太陽光発電の設備を作るエネルギー損失と、
太陽光発電自体の発電効率を考えると、
決してエネルギー効率が言い訳ではない。」
という学者の方もいらっしゃるようです。

原子力発電もCO2は排出しないとのことで、
その辺のところはよくコマーシャルされていますし、
確かにそのようなのですが、
それ以上に排出される核廃棄物の危険性が心配なところです。
このことに関しても、原発反対の団体などはよく言いますが、
電量会社や政府機関はあまり分かりやすく説明していません。

太陽光発電についても、
そういったトータルな面でどうなのかと
いったことをもっとよく知りたいところです。
Posted by makoto at 2009年08月17日 00:34
水口です。
makotoさん、いつもありがとうございます。

おお、そのご意見。私も感じております。

太陽光にしても、原子力にしても「推進派」の人と「反対派」の人の意見は
いつも結構食い違いますよね。

どちらも都合の悪いことはあえて言わなかったり・・・。
お互い小さなことで揚げ足の取り合いをしたり・・・。

やるにしても、やらないにしても、メリット・デメリットはあるはずなので、
それをちゃんと並べた上で比較できるといいのですが。


私も詳しくはないのですが、太陽光発電はシリコンのウェハーを使うところが
気になります(作るのに結構電力かかるはずなので・・・)

他の手法(シリコン薄膜だけでなく有機系、あるいは太陽熱含めて)の
開発にもお金が回るようになっているといいのですが。
(↑現状どうなってるかよく知らないので無責任な意見です)

Posted by 水口和彦 at 2009年08月18日 18:24
私もこのYahooニュースをみて、太陽光発電ではない電気を倍額で購入させる詐欺が発生しそうだなと思いました。
知らないうちに多くの人が被害者になる可能性があり、管理が難しいと思います。

そもそも電気は貯められないため個人の太陽光発電のように非安定、低電力のものは、電力会社は購入してもまともに使えません。エコにもならず無駄にお金を負担するのだけに制度になるのではとちょっと心配しています。
Posted by masa at 2009年08月21日 02:46
水口です。
masaさん、ありがとうございます。

同じもの(電力)の値段を、出所(発電方法)によって変えるというのが、
この方法のややこしいところですね。

実際のところ、あまり多くの額を取れるわけではないので、詐欺をはたらこうという
人はほとんどいないとは思いますが・・・。

こういう手法を取らなくても、太陽光発電が割に合う日が早く来ることを望みますね。

買い取り制度は大量生産を促すという意味でこの役にも立つわけですが、
さらに先の技術的なブレークスルーにも期待したいですね。
Posted by 水口和彦 at 2009年08月21日 07:19
水口様
拝見させて戴きました。
水口様が書かれた
「総発電量に占める太陽光発電の比率を必達目標として各電力会社に義務付ける」と有りますが、
これは、すでに施行されていまして RPS法となります。

各電量会社の総発電量の○%を風力、太陽光等の自然エネルギーで補わないといけないと言う法律です。
Posted by yaamaag at 2009年09月07日 18:27
水口です。
yaamaagさん、コメントありがとうございます。

RPS法とFIT制度が、太陽光発電促進の二大制度なんですね。

あくまでも個人的な意見ですが・・・、
私はRPSによる太陽光発電の比率を上げる方法にも期待したいです。

もうひとつはFIT制度で、法人からの買い取り価格も上げてもいいのでは?
と思っています。(個人向けほど上げなくてもいいですが)

どちらにしても、大規模な施設であれば、さらに発電効率を上げるための
改善の余地が生まれる可能性もありますので、そこに期待したいと
個人的には思っています。

大規模な太陽光発電所を作るのは、イメージ上もいいと思うんですけどね。


たとえば、ミラー等で集光してからセルに当てれば、同面積のセルで
より多くの発電が可能になります。

これは可動機構が必要で個人向け設備では実現しづらいのですが、
大規模な発電所ならできるのではないか?とも思うのですが。
Posted by 水口和彦 at 2009年09月14日 06:35
太陽光発電はスケールメリットが少ないので、オンデマンド発電に向いているという話があります。
だから個人住宅や事業所の屋根などに設置するわけです。
スマートグリッドもそんなオンデマンドシステムを活かす仕組みですし、変な売電もチェックできるように思います。

普及促進で、イニシアティブを日本が握りたいという思惑などがあるのでしょうけど、安すぎる石油で潤ってきた産業が邪魔をしているように思います。
Posted by まさたか at 2010年02月04日 16:35
 

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