2009年08月09日     このエントリーをはてなにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク

「サマータイム」導入は、本当にメリットがあるのか?


こんにちは。水口です。
今日は「サマータイム」についての話を。


■ 「サマータイム」とは?

「時間」をテーマにしているこのブログですが、「サマータイム」についてはこれまで
特に取り上げたことはなかったので、ちょっと整理しておきたいと思います。

ご存じの方も多いと思いますが、「サマータイム」というのは、主にアメリカや欧州
各国で行われている時間の制度で、「夏時間」の時期は、時間を1時間早くする
という制度です。(例: 冬場の正午が夏は午前11時になる)

「サマータイム」という名前がついていますが、夏だけというわけではありません。
約半年、大体4月から10月までが対象です。
(実施期間は週単位で区切られ、各国で制度が違います)


■ サマータイムのメリット

このサマータイム、日本でもこれまで何度も導入が検討されたことがあります。
(戦後の米国占領下では実際に実施されていましたが、それは別として)

昨年(2008年)も政府でサマータイム導入の議論がありました。
(「2009年(今年)から導入させたい」なんて話もありました)


サマータイムを推進する(人がいる)理由の1つは、それが「省エネにつながる」
からというものです。朝早く起きて行動するので、明るい時間帯を有効に使え、
照明が節約できたり、夏場は冷房費が削減できる(かもしれない)というもの。


また、別のメリットとして、仕事が終わった後の明るい時間が長いので余暇に
使えるとも言われています。


そしてもう一つ、隠れたメリットとして、明るいうちに仕事を終えて帰る人が
増えれば、消費者がお金を使う機会が増える(需要促進)というメリットが
あると言われることもあります。


また、欧米の先進国にはサマータイムを採用している国が多いので、それに
合わせたいというニーズもあるかもしれません。


■ 本当にメリットがあるのか?

逆に、サマータイムを導入することによるデメリットですが、
これはちょっと置いておいて・・・ (後述します)。


上記の「サマータイムのメリット」とされているものが、本当にメリットになり得るか
どうかが、検討すべき最初のポイントだと思います。

というのは、私はあまりメリットは多くないという気がしているんです。


まず「省エネ」ですが、確かに夏場は、涼しい早朝に活動開始するのは合理的
なように思えます。

でもそれは7月〜8月頃の話であって、4月〜10月の残りの期間で冷房削減
の効果があるかどうかは疑問です。そもそも、現在のように夜でも冷房が使わ
れる中では、夏場の省エネ効果も疑問です。
(実際、サマータイム導入国でも、省エネ効果は無いと言う国もあります)

このように、あまり根拠のない「省エネ」を理由にサマータイム導入を推進する
のはどうかと思います・・・。


次に「仕事が早く終わって余暇ができる」という話ですが・・・、ここでいう「余暇」
というのは屋外で楽しむタイプのもの。たとえばテニスやゴルフなどでしょうか。

しかし、実際にサマータイムが導入されたとしても、仕事の後にゴルフができると
いう人(近くにゴルフ場があってすぐ行ける人)は少ないはずです。

※ ゴルフの「打ちっ放し」は別です。あれはナイター対応しているところが
   多いですから、サマータイムじゃなくてもできますので

つまり、日本では近隣で屋外スポーツを楽しんでいる人が元々少ないわけです。
(屋外スポーツは移動時間がかかり、もともと休日じゃないとできない人が多い)
ゴルフもマリンスポーツ系もそうです。サマータイムで仕事の余暇を楽しめる人は
環境に恵まれた一部の人と、後はかろうじてテニスをする人くらいでしょうか。
(釣り好きの人も喜ぶ? いや、釣りは夜釣りもありますから違うかな・・・)

というわけで、この面でのメリットは意外に少ないと見るべきでしょう。


■ 「サマータイム制」が議論されるワケ

というわけで、日本ではサマータイムのメリットって、実際のところあまり無いよう
に思えます。(同様に感じる方は多いのではないでしょうか)


それなのに、サマータイム導入を推進する層が確実にいるのは・・・、
上記で「隠れたメリット」と書いた、

  明るいうちに仕事を終えて帰る人が増えれば、
  消費者がお金を使う機会が増える(需要喚起・景気対策)

というメリットに期待しているからではないでしょうか。
「内需拡大」というスローガンにも合いますし。



でも、これは実は変な話です。

先ほど述べたように、日本では、サマータイムが導入されたからといって
屋外レジャーへの消費は、それほど増えないはずです。

じゃあ、どこの消費が伸びるのか・・・ 飲み屋さんでしょうか・・・?
(「まだ明るいから、もう1件」とか言って・・・(笑) )
その効果が無いとは言い切れませんが、終電までの時間が長くなるわけでは
ないので、効果は限定的でしょう。


サマータイム制で「仕事が終わった後の日照時間が長くなる」としても、
終業後の「時間」そのものが長くなるわけではありません。(当たり前ですが)
ですから、実際は需要拡大の効果もあまり(またはほとんど)期待できないと
見るべきではないでしょうか。

なんとなく、「日が長くなる」「夜が長くなる」→「需要拡大する」というイメージ
に踊らされている気がするのですが・・・。


■ サマータイム導入のデメリット

というわけで、私はサマータイム制の導入は基本的に反対の立場を取りたいと
思います。冷静に考えてみると、「あまりメリットないなあ・・・」 というのが率直
な意見です。


一方、デメリットの方は、いろいろあります。

たとえば、時計の時間を変更する(年に2回)のに手間がかかったり、混乱を
招いたりするという問題があります。

電波時計(私も使用しています)は自動で対応しますし、携帯電話の時刻表示
もおそらく大部分は自動で大丈夫なはずです。パソコンの方も基本は大丈夫な
はずです。・・・とはいえ、その他の機器も含めれば、多少の手間や混乱は避けら
れないでしょう。


また個人的な感覚として、そもそも4〜10月という期間設定に無理があると
いう気がします。

実際、もしサマータイムを導入すると、10月頃には子どもたちが日の出前に
通学しなければいけなくなる地域もあるそうです。これはダメですよ・・・。

日本の気候に合わせて、もっと限定して7〜9月だけ実施するとか、または
割とみんながなじみ深い「(学校の)夏休み期間」に合わせて実施するとか
ならいいかもしれませんが・・・ それならサマータイムという制度にせずに、
各企業などで考えればいい話ですね。


サマータイム導入のデメリットは、他にも色々あるのですが・・・、私自身は
「デメリットがあるから反対」というより、「メリットが無いので反対」という意見
ですので、デメリットへの言及はこのくらいにしておきます。
(知りたい方は、下記リンクをいろいろ見てみてください)


―――――――――――――――――――――――――――――――
【余談】
ちょっと違った取り組みとして、日本経団連(経団連の本部)が実施している
勤務時間短縮の取り組みもあります。こちらは面白い試みだと思います。

これは夏期は勤務時間自体を短くしてしまうというもので、これなら本当に
景気対策としても有効かもしれませんね。

(こちら↓で紹介しています)
「ワーク・ライフ・バランス」のための取り組みをしている企業の方に
―――――――――――――――――――――――――――――――



最後に参考になるサイトをリストアップしておきます。

ドイツマスコミスキャン〜サマータイムなんかいらない(上)-JanJanニュース

ドイツマスコミスキャン〜サマータイムなんていらない(下)-JanJanニュース


サマータイム法案の上程に反対する意見 (日本労働弁護団)

サマータイム問題を考える (個人のサイトですが参考になります)

http://jssr.jp/oshirase/summer_time.pdf (日本睡眠学会声明文)


サマータイムの導入はサラリーマンを苦しめるだけ
/ SAFETY JAPAN [森永 卓郎氏] / 日経BP社
 (反対派意見)

サマータイム導入を面倒くさがる日本
/ SAFETY JAPAN [大前 研一氏] / 日経BP社
 (推進派意見)


夏時間 - Wikipedia (導入国・非導入国が分かります)

ITmedia エンタープライズ:3週間早い夏時間切り替えでIT製品に問題多発
(米国で導入時期変更に伴い混乱があった事例)



今日の記事作成時間は90分でした。
では、また明日!


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Posted by 水口和彦 at 23:55│Comments(1)TrackBack(0)

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この記事へのコメント
江戸時代は、夏の長時間労働・冬は短時間労働でした。
※電気のない時代、農業・建築などは暗いと話になりません。
でも昼寝があったので、夏の長時間労働に耐えられました。
逆に冬は、夜にたっぷり寝てました。

例えば春秋を、8:30〜17:15(昼休み45分)とします。
5〜7月は、8:00〜17:45(9時間)、昼寝すると遅くなる・・・
12〜1月は、9:00〜16:45(7時間)
※加えて標準時を1時間早めれば、冬でも日没前(実質15:45)に帰れます。
研修・改善・新規開拓など急がない仕事を、夏にすると良いでしょう!
Posted by 江戸農民 at 2017年03月12日 02:15
 

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