2010年09月13日     このエントリーをはてなにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク

「絶版堂」が超えられなかった壁:絶版書籍の電子化について


こんにちは。水口です。

現在は毎日多数の新刊書籍が発行されているわけですが、その陰で絶版に
なる書籍もあります。本が絶版になるかどうかは必ずしも内容で判断されて
いるわけではありませんので、絶版になった「幻の名著」もあるわけです。

以前、日経ビジネスアソシエさんの本特集で(タイムマネジメント本の)選者を
させて頂いたときも、私の選んだ本に絶版本が多く、入手しにくくて申し訳ない
と思ったこともありました。

そんな「絶版本」に関連したこんな記事↓がありました。

絶版書の電子化サービスがオープンできずに終了 | web R25

『』内は引用です)
 
『絶版となった書籍を電子化して販売するサービス「絶版堂」が、実際に販売を
開始する前にサービス終了を発表した。

このサービスは、絶版となった書籍の著者もしくは著作権所有者が、「絶版堂」
に委託する形で、実物の絶版書をスキャンして電子化。販売価格は委託者が
設定し、売り上げから「絶版堂」が受け取る販売手数料(価格の35%+決済
にかかる実費)を引いた額が委託者に支払われる、という仕組みだ。

サービス終了の理由については、「現在のご委託状況からサービス継続が困難
と判断したため」とのこと。詳細は不明だが、思うように絶版書電子化の委託
が集まらなかったということなのだろうか。(中略)

ちなみに、「絶版堂」以外の絶版書電子化サービスとしては、漫画家・永井豪が
率いる漫画プロダクション・ダイナミックプロが開設した「ダイナミックアーク」が
存在している。絶版したライトノベルやSF小説を中心に電子化するサービスで、
作者と直接交渉して作品を集めているという。(中略)

いずれの絶版書電子化サービスも、特定のジャンルに特化したものであり、いわ
ゆる固定ファン向けサービスだといえるだろう。そう考えると、特定の読者を想定
しなかった「絶版堂」のサービス終了は仕方ないことだったのかもしれない。』


                                   (上記記事より引用)

とあります。

こういうサービスがあった(やろうとしていた)んですね。
私も絶版本が1つありますから、使えるものなら使いたかったのですが・・・。

とはいえ、こうした「スキャン→電子書籍として再流通」というビジネスモデル
には超えなければいけない(そして超えるのが困難な)壁があります。
委託が集まらなかったのも、そのためではないでしょうか。


■ 絶版本の再流通にともなう壁

たとえば、私の絶版本の場合、私が書いた文章だけでなく、図版やイラスト
も掲載されています。文章に関しては、書籍が絶版になれば使用権は私に
戻ってきますが、図版やイラストを使用する権利は私にはありません。

※ 私の場合、図版の元図は私自身が(けっこう詳細に)作成してますが、
   掲載されているものは、それを元にイラストレーターやデザイナーが作成
   したものです。これをそのまま使用する権利は私にはありません。

「それなら、イラストレーターやデザイナーに許可を取ればいいんじゃね?」
と思うかもしれませんが、それもややこしい話なんですね・・・。

書籍のイラストなどは、本文原稿(印税方式)とは違い、作成した時点で
出版社が制作費を支払うことが多いです。つまり、使用する権利は出版社
にあるケースが多いわけです。ただし、契約内容によっては、出版社が別媒
体での再流通の権利を持っていないケースもあると思います。

※ 本文の契約に関しても、電子書籍などでの使用について規定するように
   なったのは最近の話です。絶版本では、そこらへんを規定していないもの
   の方が多いはずです。こうなると、権利者が誰かすらはっきりしません。

しかも、著者ですら、そのあたりの権利関係、契約内容は分かりません。
私も自分の本のイラスト関係がどういう契約になっているかは知りません。
(もちろん、自分の本文の契約は分かりますよ)


ですから、絶版本を電子化、再流通させる場合には、まずはイラストや図版
の権利者を特定するところから始め、さらに、再利用に際しての使用料に
ついて交渉する必要があります。買い取りにするのか、売上に応じて支払う
のか、どうやって支払うのか等、前例がないところで決めることになります。

※ 買い取りになった場合、著者がその費用を負担するわけで、せっかく
   再流通しても収入にならない(持ち出しになる)ケースも考えられます。


これらをクリアして、電子書籍で再流通させるのも大変なわけです。
それで、上記の絶版堂さんで委託する著者が少なかったのだと思います。


逆にいえば、これらの調査や交渉、契約までセットでやってくれるなら、
絶版本を委託したいという著者は多いはずです。

そこまでやってくれる会社が出てくれば、(著者から見て)絶版本を電子化
して再流通することが現実的になってきます。しかし、それがビジネスとして
成立するかどうかは分かりませんし、もし成立したとしても、各出版社が
電子書籍の販売に力を入れ始めれば、出番はなくなります※。あくまでも
この時期だけの「つなぎ」のビジネスなので、やろうという企業は出てこない
のではないでしょうか・・・。

※ そもそも、出版社が本を「絶版」にするのは、在庫の保管や管理に
   コストがかかるためです。電子書籍ならば早々に絶版にする必要が
   ないので、いずれは「紙の本は絶版だけど、電子書籍は販売継続
   する」という出版社が多くなると考えられます。


うーん・・・。なんだかちょっと残念な気もしますが、絶版本をそのまま
電子化して再流通するビジネスは厳しそうですね。

可能性があるのは、(以前にも少し書きましたが)本文だけを再利用して、
イラストや図版は新しく起こすという方法です。レイアウトやデザインも刷新
してしまえば、権利関係は完全にクリアになります。

ただ、こちらはかなり費用がかかります。これをやるくらいなら、本文も
書き換え(または書き下ろし)して、新しく電子書籍を作る方が良いの
かもしれません。

結局、読み手の「絶版本を入手したい」という思いに答えられるのは、
多くの出版社が電子書籍の販売を始めることなのかもしれません。
(これもなかなかまとまらず、いつになるのか分かりませんが・・・)



今日の記事作成時間は50分でした。
では、また明日!


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Posted by 水口和彦 at 07:00│Comments(0)TrackBack(0)

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