2005年08月18日     このエントリーをはてなにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク

時間管理術の七つの嘘 その1 : 優先順位をつければうまくいくのか? (2)

前回は、

優先順位を「つけ」ても仕事はうまくいくわけではない。

個々の仕事に、固定した優先順位をつけることには意味が無い。

ただし、何を優先するか「考える」スキルは重要。

ということを述べました。


では、次に「何を優先するか」を考えるための手法について
考察してみたいと思います。


時間管理について述べられる中でよく出てくるのが、

「重要性」と「緊急性」のマトリックスです。

↓ こういうものです。

重要緊急マトリックス.jpg


ここでは、ものごとを「重要性」と「緊急性」で
4分割して分類しています。

A:重要性、緊急性ともに高い  (目の前の重要な仕事)
B:重要性が高いが、緊急性は低い(将来のための重要な仕事)
C:重要性は低いが、緊急性は高い(目の前の、割とささいな仕事)
D:重要性は低く、 緊急性も低い(「どうでもいい」仕事)

という感じでしょうか。


「7つの習慣」という本にもこれと同様のマトリックスが
出てきます。

スティーブン・R・コヴィー 著のこの「7つの習慣」は、
根強いファンも多く、私も名著だと思う本です。

(注)「7つの習慣」のマトリックスは、上の図と左右方向が
    逆向きになっています。私は、横軸は左が低い側に
    なる方が一般的と考えて、この書き方にしています。
    (この書き方を使っている本もあります。)


「7つの習慣」ではこの中のBを重視することを提唱しています。
(同書の中ではBの相当するものを『第二領域』と呼んでいます。)


なぜ、重要性も緊急性も高いAではなく、Bを優先しているのか?
「7つの習慣」のポイントの一つがここにあります。

この著者は、

 (『』内は引用です)

『第一領域に集中している限り、その面積は拡大し、やがてはそれに
 よって生活が圧倒されてしまうことになる。』

 (214ページ 14行目より)

と述べています。この『第一領域』というのは、
上の図でいうところのAです。重要かつ緊急な部分です。

取引先からの怒りのクレーム!
または、明日提出の資料がまだできてない(汗
といった状況ですね。


  このAに圧倒されている人は、バタバタしている人の
  イメージなので、とりあえず「バタ男」と呼びますね。


「7つの習慣」の中で、非常に鋭い洞察だと思った箇所があります。

この「バタ男」が、Aに圧倒されながら、唯一逃げ込めるのは、
Bでもなく、Cでもなく・・・Dだと述べられているのです。


この本の中では、なぜそうなってしまうかは述べられていません。
おそらく、著者の体験や、たくさんの人を教えてきた中で気がついた
ことなのでしょう。


でも、考えてみてください。


このバタ男は緊急事項に追われて、忙しい状況にあるわけですよ。

「どうでもいい」Dをするヒマがあるのなら、重要性が高いB、
せめて緊急性が高いCをした方が、状況は多少なりとも改善するはずです。

それでもDにいってしまう・・・。それが人という生き物なのでしょうか?

他人事だと、なんでそうなってしまうのか不思議です。


でも、これと似た状況ってあると思うんです。
あなたも経験しているかもしれません。


例えば・・・(注:社会人の方は、学生の頃を思い出してください。)

テスト前に勉強しようとすると・・・、


その前に部屋の掃除や、机の片づけをしたくなりませんでしたか?

なったことある人も多いでしょう。よく聞く話ですよね。
その現象とよく似ているのです。


実際そうしてしまうことがあるわけですから、上記のパターンは
人が行動するときの傾向をうまくとらえているのだと思います。


では、Aに振り回されないためには何をすれば良いでしょうか?

例えば、仕事のやり方を改善したり、自分のスキルを高めたり、
計画的に物事を進めるようにしたり、といったことでしょう。
これらはBに属することです。

著者は、Bをがんばっておけば、自然とAの仕事が減ってきて、
仕事の面でも生活の面でもバランスが取れるようになる、
だから、 AよりもBを重視しろ! と主張しているのです。


確かに、なるほど。と思います。


でも、本当にそうでしょうか?
Bを重視すれば、「できる男」になるのでしょうか?


この考え方には、いくつか無理なところもあると私は思います。

  Bを重視する → 結果として状況が改善していく。

これは私の経験でもありました。いいと思います。


でも、私が気になってしょうがないところがあるのです。

それは、

  Cは、ほっといてもいいんかい!

というところなんです。


Cに属するのは、緊急性はあるが、重要でないこと・・・
私の場合、人から依頼された仕事が多いです。

考えてみてください。


Bを重視する「デキ男」。

そんな「デキ男」は、Aの仕事が飛び込んでくれば
それはそれで、うまくこなしているはずです。

でも、そんな「デキ男」は、

人から頼まれたことは全然やってくれない・・・。


うーん・・・。 やな奴ですよね。


実は、「7つの習慣」の後半には、周りの人とうまく依存
していくことの重要性が書かれています。
その部分も読んでいれば、「デキ男」にはならないでしょう。

私が言いたいのは、上のマトリックスのBを重視するという
考えだけが先行すると、単なるわがままになりかねないと
いうことなのです。

そういう意味で、ちょっと危険な部分があると思います。


もう一つ、気になるところがあるのですが、
長くなってしまったので、次回に言いますね。


参考文献
スティーブン・R・コヴィー (ジェームス スキナー、川西 茂訳)
7つの習慣:成功には原則があった!.キング・ベアー出版,1996

7つの習慣―成功には原則があった!


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Posted by 水口和彦 at 02:10Comments(0)TrackBack(0)
2005年08月16日     このエントリーをはてなにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク

時間管理術の七つの嘘 その1 : 優先順位をつければうまくいくのか(1)?

         優先順位


時間管理の本や、手帳の使い方でよく言われることです。


優先順位をつければ、重要なことから取り組むことができる。
人生の目標が達成できる。

と言われると、飛びつきたくなる気持ちも分かります。
でも、本当にそうでしょうか?



私は、過去に時間管理に悩み、失敗もたくさんしました。
試行錯誤する中で見つけた、私の考えをまず言っておきます。




  優先順位を「つけ」ても仕事はうまくいきません!




重要なのでもう1回言います。


  優先順位を「つけ」ても仕事はうまくいきません!

  優先順位をつければうまくいきそうな
  気がするのは幻想です!




なぜ、優先順位をつけてもダメなのか、
私の経験談で説明していきますね。


私が時間管理に興味を持ったのは、
仕事が忙しすぎるのをなんとかしたかったからでした。


  当時どのくらい忙しかったか? について、
  語りたいところなのですが、
  過去のこととはいえ、勤務時間についての話は
  差し障りがあるのでここでは言いません。

  超過勤務についてはここ数年で随分厳しく
  なってきたような気がします。


  個人的な思いとしては、密度の高い長時間勤務を
  する時期はあってもいいと思います。

  なぜなら、私の場合、その時期に短期間で
  スキルが大きく向上したのを感じましたし、
  いい経験だったと思っています。

  ただし、それがずっと続くような仕事のやり方を
  していてはまずいというのが、今の私の考えです。


仕事が忙しいという状況にもいろいろあると思いますが、
(楽しくてしょうがない忙しさ、というのもあるでしょう)
この頃の私はまさに、ストレス過積載! という感じでした。

そんな状況をなんとかコントロールできる方向に
もっていきたいと思い、時間管理の本をいくつか読みました。


そんな中で、出会った本の1つがこれです ↓ 
人生は手帳で変わる1
人生は手帳で変わる―第4世代手帳フランクリン・プランナーを使いこなす
(現在は黄色い表紙の改訂版が出ています)








この本は、「フランクリン・プランナー」という
手帳の使い方を解説した本です。

読んでいると、この手帳を使えば、自分の悩みが
解決するような気がしてきました。

で、この手帳を購入。使ってみました。


確かに、手帳を積極的に使うことの効果は高く、
仕事で失敗したなー、と思うことは少なくなりました。

でも、ストレスは減らない・・・というか、
逆にストレスが増えているような気がするのです。



このとき、ストレスが増えていた原因の1つが、
優先順位をつけていたことだったのです。



この手帳では、1日の中でやるべきこと、やりたいことを
ABCでランク分けするよう推奨されています。


   (ちょっと注釈)
   フランクリンプランナーは「7つの習慣」の
   手帳版と言われていますが、このABCランクで
   分けるやり方は「7つの習慣」には書かれていません。

   スティーブン・R・コヴィー氏のお仲間?である、
   ハイラム・W・スミス氏の、
  「TQ―心の安らぎを発見する時間管理の探究
   という本に書かれています。


ABCの分類は、人生は手帳で変わる(上の写真:旧版)では、
 (『』内は引用です)

 『A:必須(その日にしなければならない)
  B:重要(その日にすべきである)
  C:良い(できればいいなあ)    』

  (98ページ7行目より)

「TQ」の中では、

 『A:何が何でも達成しなければならないもの (must)
  B:今日達成すべき課題 (should)
  C:達成できたらいいと思えるもの (could)    』

  (209ページ2行目〜6行目より抜粋)

と、定義づけられています。


さらに、Aに分類されたことの中で、重要なものから
A1、A2、A3・・・と番号をつけることになっています。


私は、言われたとおりにやってみました。

毎日この作業をするのは、結構めんどくさいものです。
でも、それなりに時間をかけてやっていきました。


確かに、このABCで分類すると大半の仕事は
問題なくこなせます。

また、優先順位をつけておけば、
「自分はやれる中で最善の判断をしている。」
という安心感があるのです。

この分類法は効果はある!と思いましたよ。



しかし、落とし穴があったのです。


↓ 例えばある日、3つの仕事があったとします


【1】1週間後が納期のすごく重要な報告書
   (しかも作成するのに時間がかかるもの)

【2】今日が納期の重要度がそこそこの報告書

【3】今日が納期のあんまり重要でない事務処理


どれを優先すべきだと思います?


【1】と【2】はどちらを優先すべきか?
これは誰でも優先順位を

【2】>【1】 とするでしょう。


では、【1】と【3】はどちらを優先すべきか?

ここで、Aの定義の「その日にやらなければならない」
を考えると、

【3】>【1】 となってしまいます。



そうこうしているうちに、日は過ぎていき、
【1】の納期が迫ってきます。
でも、まだできていない・・・。

その結果、長時間残業をすることになってしまいました(涙)
そんなことが何回かありました。



この経験で、教訓として得られたことは、


それぞれの仕事は、

・その仕事の重み(重要性)

・納期(今日やるべきかどうか)

だけで判断していると失敗する。

ということだったのです。




  で、こういう場合、どうすればいいと思います?




私の経験談を続けますね・・・


結局、手帳を使って優先順位をつけても、
問題が起こることがあったわけです。

上に書いた以外にも、次のような問題がありました。

・わざわざ時間をとって優先順位をつけているのに、
 急な仕事が入ったら、予定通りに進まなくて
 かえってイライラしてしまう。

・優先順位の低い仕事は、ついつい先送りにしてしまい
 いつまでたっても片付かない。

・先送りにした仕事を次の日のページに転記するのが
 無駄な手間になって、虚しい・・・。


で、私はどうしたか?


数ヶ月使ったこの手帳を使うのをやめてしまいました。
いわゆる挫折です・・・。

最初は、手帳をうまく使いこなせていないのは、
自分の能力が足りないからだ。と思いました。


凹みましたね。「俺ってダメだぁー・・・」って思いました。


と、一人で凹んでいても、仕事は許してくれません。
忙しい状況は変わってないですから。


次はどうしたものか・・・、と考えました。

手帳で時間管理をすること自体はメリットを感じて
いましたので、何か代わりの手帳が必要でした。

このとき考えたことは、「フランクリンプランナー」で
挫折した教訓を活かさないといけない!ということでした。

そこで、仕事が前後の流れでつかめるように、日程表的な
もので管理することにしてみました。


最初は、日程表でもABCランクの優先順位をつけていました。
でも、そのうちめんどくさくなってしまいました。


ABCランクの優先順位をつけるのをやめたのですが、
その結果どうなったか・・・




  結果は・・・、何も問題はありませんでした。




個々の仕事に優先順位をつけることよりも、

 ・個々の仕事にどのくらい時間が必要か考えること

 ・その時間が取れているか確認すること

の方が、ずっと重要だったのです。




  話は戻って、さっきの【1】、【2】、【3】の仕事での
  私の失敗は、どうすれば回避できたのでしょうか?



私はこう考えます。


このときに私がやるべきだったのは、

 ・納期はまでの日数はあるが、時間がかかる仕事【1】
  について必要な時間を見積もる。

 ・3日間の間にどれだけ時間が取れるか、
  【1】の時間を確保できているかどうかを確認する。

 ・また、どれだけの余裕が残っているか確認しておく。

 ・時間が確保できていないならば、他の仕事をやらないで
  済むように、先手を打って行動する。

ことだったのです。

  実は、このやり方はプロジェクトマネジメントの
  やり方に通じるものがあります。

  ただ、個々の仕事についてプロジェクトマネジメント
  を適用するのはめんどくさすぎるので、それに代わる
  やり方を探すことが必要だと思います。



と、ここまでは

仕事に優先順位をつけると仕事がうまく回るようになる

というのは嘘である。
ということを述べてきました。


こう言うと、時間管理の本などで述べられている優先順位の
考え方も嘘なのか?という疑問を持たれる方もかもしれません。


それは、嘘ではないです。。
私は優先順位を判断するための考え方は必要だと考えています。

決して、矛盾したことを言っているわけではありません。


私が言いたいことはこうです ↓


ダメなのは、

 ・その仕事の重み(重要性)

 ・納期(今日やるべきかどうか)

だけで仕事に優先順位をつけて安心することです。



必要なのは、

 ・個々の仕事に必要な時間も考えること

 ・仕事の流れの中で、その時間をうまく割りつけること

 ・あまり重要でない仕事は先手を打って切っていくこと

なのです。


そして、これらの作業の中では、何を優先するか? と
いう考え方は非常に重要です。

そのため、何を優先すべきか? という考え方を知ることは
重要なことだと思います。

また、一つではなく複数の考え方を知っておいた方がよいと思います。
色々な要素をもとに判断できた方が有利だからです。



最初に言った、

  優先順位を「つけ」ても仕事はうまくいきません!

というのは、個々の仕事に、固定した優先順位をつけること
には意味が無い。ということを言いたかったのです。

  上の文章にカギカッコをつけてあるのは、何が優先か
  「考えること」は必要ですが、順位を「つけること」には
  意味がないと言いたかったためだったんです。




次回からは、いくつかの本をピックアップして、それぞれの
優先度の考え方について、考察してみたいと思います。

次回は「7つの習慣」を取り上げる予定です。


      【続きへ】   
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Posted by 水口和彦 at 07:17Comments(0)TrackBack(0)

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