2008年02月11日     このエントリーをはてなにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク

マクドナルドの残業代訴訟について、もう一度考えてみる


こんにちは。水口です。

先月、こんな記事を書きました。

「店長」はプレイヤーか?マネージャーか?

マクドナルドの店長に対し、「時間外手当を支払うべき」という
判決が出たことについて書いたものです。

その判決を受けて、こんなニュースもありました。

<セブン−イレブン>店長に残業代支払い マック判決受け
(毎日新聞) - Yahoo!ニュース


店長の残業代、悩む外食・流通 セブン−イレブンも支払いへ
(フジサンケイ ビジネスアイ) - Yahoo!ニュース



私はその判決に対しては、妥当だと思うのですが、※
ちょっと複雑な思いもあります。

 ※ 判決が妥当だと考える理由は・・・

    マクドナルドの店長は、自ら調理に入ったりすることもあるそうなので、
    純粋なマネージャーではなく、いわゆる「プレイングマネージャー」と
    いうことになります。

    たとえば、24時間営業店舗で従業員が確保できない時間があると、
    店長が店に入らざるを得ないという状況も、おそらくあるでしょう。

    「マネージャー」業務ではなく、そういう「プレイヤー」業務として
    働いている時間もあるのに、時間外勤務を支払わないのは、
    無理がある。 ということです。


■ 「時間外手当」は必要なのか?

先ほどの「複雑な思いがある」というのは・・・、こういうことです。

働く者にとって、「時間」ではなく「成果」で評価される環境に
身を置くことは、本人の成長につながります(と私は考えます)。

そういう環境に、早くから身を置くことができるのは、長い目で
見れば、本人のためになるのではないか。

とも思えるんですよね。


そもそも、「仕事」の価値は、費やした時間ではなく、その仕事に
よって生まれた「価値」にあるわけです。※

 ※ 「だから、時間はどうでもいい」のではなくて、(笑)
    「だからこそ時間を有効に使うべき」です。

それが本質である以上、残業代を請求する事例が増えてきたり、
残業代の割増率を上げる(これはもう決まりましたが)という話が
クローズアップされるのは、しっくりこないところがあります。
本質には逆行する話であり、悪く言えば「甘え」のようにも思えます。


■ 時間外労働における2つの問題は切り分けて考えよう

ここで、少し頭を整理しておきます。

サービス残業の問題などで、いっしょくたにしてしまい、
議論が混乱するもとになるのが、

・過重労働(長時間労働)による問題(健康上の問題など)

・残業代を支払うべきかどうかの問題

の2つの問題です。


マクドナルドに限らず、「店長業務」において、より問題なのは、前者の
過重労働(長時間労働)に対する歯止めがかかっていないことでは
ないかという気がします。
(実際に、それに近い例を見聞きすることもありますし)

「管理監督者」扱いで、時間外勤務を管理しない場合、上記の2つの
問題は一緒に扱われることになるわけですが、本来はこれらは
分けて考えるべきです。

たとえば、昨年に頓挫した「ホワイトカラーエグゼンプション」論議では、
後者(残業代)については賛成論も結構あったように感じましたが、
前者(長時間労働)が不安なので反対だという人が多かったのでは
ないでしょうか。

(もう1つ、カットされた残業代が労働者側に還元されることはない
 だろう。という悲観的な予想も反対の理由としてあるのですが)


■ 「残業代」よりも「長時間労働」を優先して対処すべきでは?

そこで・・・

ちょっと乱暴な意見かもしれませんが、まずは労働時間に対する
規制を今よりも強めてしまえば、こういう問題は少なくなるのでは
ないかと思います。

たとえば、ドイツでは労働時間に対する規制が強く、
「お隣さんはいつも仕事で帰りが遅い」と気づいた隣人が、当局に
通報するなんて事例もあるそうです。

ドイツ並みにするのも考えものですが、労働時間そのものに対する
法的な規制を思い切って強めてしまうほうが、問題の解決に近づく
ような気がします。

法的な規制を強めた場合、過酷な労働を強いられている人は、法に
助けを求めることができるでしょうし、好きでやっている(働きたい)人
は、(ヤミで)文句言わず働くか、終業後に自分のスキルを上げるべく
社外で勉強したりするので、別に困らないわけです。


そんな規制が当たり前になり、労働時間が適切な範囲に収まっている
という前提があれば、「店長が残業代を請求する」という反逆(?)も
少なくなるでしょうし、世論でも会社側の味方が増えるのではないで
しょうか。

今回のマクドナルドの事例は、過酷な労働を強いられている店長が
その代償として残業代を請求する、という構図に見えます。
(それしか戦い方がないので仕方ないのですが・・・)
そのせいで論点がずれてしまっている(本当の問題がぼやけている)
ような気がします。


この流れで、残業代を請求する事例がどんどん増えていくとしたら、
私は、企業側に対して同情的な見方を強めるかもしれません。

なにか、いびつな構造になっているような気がするんですよね・・・。



私たち1人1人が、「会社で働いた時間」よりも「仕事で生み出した価値」を
重視するようになること。これも、長い目で見ると社会を変えていくのかも
しれませんね・・・。そう思いたいです。


今日の記事作成時間は75分でした。
(結構考えてしまう話でした)

では、また明日!



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Posted by 水口和彦 at 23:52│Comments(2)TrackBack(0)

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この記事へのコメント
そうですね。残業代を軸にするのではなく、労働時間の適正化を軸に考える。この視点のシフトはすごく良いですね。妙に感情的にならずに議論が出来そうですし、ドイツのように労働時間をきっちり守れば雇用の適正化にもつながりそうです。
Posted by G頑張ろう、N日本の、J人材! at 2008年02月12日 17:22
水口です。コメントありがとうございます。

この2つの問題を切り分けないせいで、
潜在的なホワイトカラーエグゼンプション賛同者(私もそうかも)でさえ、
賛成できなかったのが、昨年の議論だった・・・。そんな気がしてきます。

ホワイトカラーエグゼンプションも、もう一度考え直してみたらいいのでは?
とも思うのですが・・・

その反面、労働時間を法的規制を強めるのは、企業側にデメリット
(というかリスク?)も多すぎるので、やれないような気もしますね。

Posted by 水口和彦 at 2008年02月14日 13:51
 

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