「サンクコスト」と「時間術」の関係とは?
こんにちは。水口です。
今日は、昨日も話に出た、「サンクコスト」の話です。
■ 「サンクコスト」と「時間」の関係
「サンクコスト」は、時として時間の使い方に
大きな(時として悪い)影響を与える
というのは、個人や組織の時間の使い方を考えるときに必要な考え方です。
(それもあって、私も昨年の「宝くじ」本にそのことを書いています)
そして最近、「サンクコスト」と「時間」についての本が出版されています。
この本についてどう思いますか? というご質問を
(ブログ読者の方から)頂いたこともあり、紹介させて頂きます。
■ 「時間どおりに来ないバス」を待つか?待たざるか?
この本の冒頭に、こんな例え話があります。
・ バス停でバスを待っているけど、20分以上待っても来ない
・ このまま待ち続けるべきか、それとも別の方法を考えるべきか?
これをどう判断すべきか?
このときに、「せっかく20分も待ったのだから・・・」 と発想してしまうことは、
良くない結果を招く可能性がある。という話です。
そして、さらに条件があったとします。
・ 現在、バス→電車→飛行機という移動をしようとしている途中
・ 所要時間を考えると、あと30分で最寄りの駅まで着く必要がある
そして、選択肢は、
・ このままバスを待つ
・ すぐにタクシーに乗ってしまう
・ 今すぐ駅まで歩き出す
(それでも何とか間に合う計算なので)
が考えられます。
このときに「過ぎ去った過去」はないものとして考える(判断材料に加えない)
べきだというのが、著者の主張です。
「20分も待ったのに、もったいない」「歩き出した途端にバスが来たら悔しい」
といった思いは、この状況下で最善の判断をする妨げになってしまうという
ことです。
過ぎ去った過去=サンクコスト であり、それにとらわれてはいけないという
主張は、私もまったくその通りだと思います。
個人的には、いわゆる「大企業病」と言われるものの何割かは、この
「サンクコスト」に引きずられていることが原因だとも感じています。
【余談】 ちなみに、上記の状況で、私はどうするかと言えば・・・
多分、駅に向かって歩きながら、タクシーを探すと思います。
(「タクシーを拾う」と決めても、なかなかつかまらないこともありますから)
ただ、その前に、考慮すべき点は、バスの運行間隔です。
たとえば、「20分間隔」で運行しているバスなら、20分待って来ない場合は、
数分以内には来る可能性が高いと考えられます。20分間隔のバスは、
(均等に遅れているとすれば)、全体のダイヤが乱れていても、20分待てば
やってくるわけなので。
一方、「1時間に1本」のバスなら、もっと大きく遅れる可能性もあります。
そもそも、すでに(時刻表よりも早く)行ってしまっているかもしれません。
(これだと、次の時刻まで来ないことになります)
【余談おわり】
■ では、「サンクコスト時間術」とは?
では、著者の言う「サンクコスト時間術」とはどんなものか?
ということになりますが、その考えの基本は、上記の「バス待ち問題」に
あるように、「過ぎ去った過去」はないものとして考えることが基本に
なるわけです・・・
著者はそのために、
(『』内は引用です)
『 1 Situation (状況判断)
2 Time Left (残り時間)
3 Best Answer (最善の答え)
4 Action (アクション) 』
という、『SーTiBA』 というフレームワークを使うと良いと言います。
「状況」は、過ぎ去った過去は考えに入れずに状況分析し、どんな手を打つ
べきか、複数のシナリオを考えるという意味です。そのシナリオの選択時には、
「残り時間」を考慮した打ち手を考えなければいけない。
さらに、「絶対的な正解」を求めるのではなく、その状況でベストな答を探す
こと、そして、シナリオを決めたら「実行する」ことがとにかく大事。
そういう主旨です。
お気づきの方もおられるかもしれませんが、これは「時間術」というよりは、
「仮説思考」に近いものです。具体的な時間術・時間管理というよりは、
その前段にある「意思決定」についての考え方を示したものです。
そういう部分を鍛えたい方にはいいと思うのですが、「時間術」という
タイトルは、ややマッチしていないかもしれません。
もちろん、「時間術」的なものはすべて、「意思決定」がともないますから、
「広義の時間術」と考えれば矛盾はありませんが。
書かれていることは、(私は)各論としては「違うんじゃないの?」と思うところ
もあるのですが、総論(全体)としては、納得できる話です。
普段、頭の中で考えているシミュレーションを、意識的に行ったり、
そのシミュレーションの精度や幅を広げるための頭の体操的な面も
あります。
■ 「毎日リスト見直し」はちょっと・・・
ちなみに、本の後半には「時間術」系の話(Tips系の話)もあるのですが、
こちらは参考になる人、ならない人が別れると思います。
たとえば、著者は『毎日リスト見直し術』として、スケジュールやタスクリストを、
毎日の状況変化に応じて、見直し、組み替えるべきだと述べています。
私は基本的に「優先度」をつけた「タスクリスト」での管理は推奨していない
のですが、それは置いておくとしても・・・、この考え方は、ちょっと「コンサル
タント業」に寄りすぎの手法です。
普通の人(※)がこれをやると、「先が見えない」ことをストレスに感じたり、
「期限前にバタバタ」になったりする。そして結局続かない・・・。となる
可能性は高いです (←私も過去に経験しています)
※ この「普通の人」というのは、知識や能力のことではなく、
どのように仕事が発生して、それをどのように実行していくか、という
仕事の流れ方のことを指しています。
全体に、やや散漫な印象もある本ですが・・・、一種の「頭の体操」として、
そして、自分の「仮説思考力」「仮説行動力」を磨くために、読んでみるのも
良いかと思います。
今日の記事作成時間は65分でした。
では、また明日!
「残業ゼロ」の人生力: タイトルにこだわらず、ぜひ一読を!
こんにちは。水口です。
今日は本の話です。
■ 「残業ゼロ」の人生力
今月出た本です。↓
「残業ゼロ」の人生力
トリンプの前社長であり、『デッドライン仕事術』 『残業ゼロ」の仕事力』
等々の著者でもある吉越浩一郎さんの新刊です。
同じ「残業ゼロ」でも、今度は「人生」についての話、
「ワーク・ライフ・バランス」で言う「ライフ」の部分の話です。
初めに言っておきますと・・・
この本はすべてのビジネスパーソンにとって「必読」と言っても
いいかもしれません。考えさせられることが多いですよ。
・・・というのが、私の率直な感想です。
でも、ちょっと抵抗がある人もいると思います。特にタイトルに
ある「残業ゼロ」という言葉に抵抗を感じる人は結構多いのでは
ないでしょうか。
「残業ゼロ」を推奨する人には共通するロジックがあります。
・ 残業をなくして、その分、仕事への集中力を上げよう
・ 逆にいえば、残業しているようでは、仕事の時間に
100パーセントの集中をすることはできない
・ 「残業しない」ことと「仕事に集中する」ことの両方に
取り組めば、仕事のアウトプットは決して減らないし、
人生も充実する
と、こんな感じです。
私も基本的にこのロジックには賛成です。
※ ただし、そういった「集中して仕事をする」「生産性の高い仕事をする」
という意味での「いい見本」になる人が企業の中に不足している
問題があり、これは結構深刻なことだと考えています。
しかし、「がんばって仕事をしているけれど、残業がゼロにはならない」と
いう人もいるでしょうし、「ゼロ」にすることにばかりこだわるのは何か違う
と感じる人もいると思います。この気持ちは私もよくわかります。
しかし、そういう人も、「仕事だけで人生終わっていいのか?」 という
疑問がどこかにあるのではないでしょうか。
この本(「残業ゼロ」の人生力)を読むことによって、それを少し考えて
みるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
■ 人生の価値は「本生期」にある?
著者の主張は、基本的にシンプルです。
・ 人の一生は「学生期」「仕事期」「本生期」の3つに分けられる。
・ いくら仕事で成功しても、定年後の本生期が充実しなければ
成功した人生とはいえない
(実際、仕事で成功しても定年後に寂しい人生を送る人もいる)
・ 定年後から何かを始めようと思っても遅い(夫婦の関係も含めて)
だから「仕事期」にも「本生期」の準備に使う時間が必要だ
というものです。
※ 定年後を「本生(ほんなま)期」と呼ぶのは、
「本当の人生、本番の人生、本来歩むべき人生」と
いう思いを込めたネーミングだそうです。
こうまとめてしまうと、「当たり前だ」と思われるかもしれませんが、
実際自分自身が「本生」のために何をしているか(できているか)、
この本を読むと考えさせられることが多いですよ。
「定年」とは、ある意味恐ろしいものです。私自身は「定年」のない仕事に
変わるという戦略を取りましたから、今はちょっと違うのですが・・・、
サラリーマンを続けていたとしたら、定年後に充実した人生を送るべく、
「仕事期」に何ができただろうか? と思うことはあります。
(『』内は引用です)
『 これまでは、マスコミが積極的にアナウンスしてこなかったこともあって、
そうも日本のサラリーマンは、定年後に控えている現実を正しく理解して
いないような気がします。定年後の生活を甘く考えすぎているといっても
いいかもしれません。
どんなに仕事が好きで、愛社精神にあふれている人でも、定年は来ます。
仕事が生きがいという人も、そこでその生きがいは終わりなのです。』
(62ページより引用)
こう聞くと、ちょっとドキッとしませんか?
「定年後はなんとかなるだろう」と甘く見ていたり、
「今はそんな余裕ない」と考えることを拒否している
自分がいるのではないでしょうか?
実は、私も(定年がないとはいえ)考えさせられるところがありました。
■ 「リタイア後の人生」についてのとらえ方
また、本書は、日本と海外(特に欧州)のリタイア後の人生に
ついての考え方の違いにも触れられています。
これ↓は私の体験談ですが・・・
昔、アメリカでショッピングモール内をお土産探しを兼ねて、
1人でうろうろしていたときの話です。
その中に「グリーティングカード専門店」みたいなお店がありました。
たくさんのカード(誕生祝い等々)があるので面白がって見ていたら、
かなりな数の「Happy Retirement !」カードがあることに気づきました。
見てみると、結構ほのぼの、のほほんとした絵柄のカードが多いです。
「これって・・・日本の定年退職のイメージとは合わないなあ・・・」 と
思ったのを覚えています(それくらい印象的でした)。
日本で「定年」というと、どうしても少し寂しいイメージがつきまといます。
「お疲れ様でした」という言葉はあったとしても、「うらやましいですね」と
いう言葉はあまりないような・・・。
本書は、そういう日本の「定年」のイメージに異論を唱えています。
あまり私が言うよりも・・・ぜひご一読ください。
ちなみに私は、「リタイア」した後にもできる趣味として、
スクーバダイビングがあるのですが、他にもやりたいことが
あるのじゃないの?(やってみたら?) という気がしてきました。
私にとってスクーバは一時は「本業」にしようかと思ったことも
あるくらいハマったものです(だからインストラクターにもなりました)
今は本業にするつもりはないのですが、趣味としても、年齢に
あまり関係なくできる、いい趣味だと思いますよ。
今日の記事作成時間は51でした。
では、また明日!
「ムダな時間」と「ムダな努力」の違い
こんにちは。水口です。
今日は最近読んだ新刊に関連した話です。
■ 「ムダな時間」と「ムダな努力」
何ヶ月か前に、ふと思い浮かんだ言葉があります。
それが・・・
「ムダな時間」は存在しても、「ムダな努力」は存在しない
というものです。
ふと浮かんだ言葉なのですが、なぜか気に入っています。
なぜ気に入ったんだろう? と考えてみると・・・
「ムダな時間」は、文字通りムダに過ぎていく時間です。
あまり考えずに行動してしまうことや、計画の無さが原因で
起こることです。これはある程度自覚できるものです。
(もちろん、少ないに越したことはありません)
しかし、「ムダな努力」というのは本当は無いような気がします。
そもそも、私は「ムダな努力」という言葉が好きではありません。
本当に努力したならそれをムダにしてはいけないと思いますし、
簡単に「ムダな努力」と言えるのなら、本当は努力していないの
ではないか? とも思います。
そのココロは・・・
もし、努力が結果に結びつかなくても、その失敗を次に活かせれば、
ムダにはなりませんし、その努力自体がスキルアップにつながると
したら、やはりムダとは言えないと思います。
しかし、「努力したこと」自体に満足してしまうのは嫌いです。
あくまでも失敗を次に活かすことが前提です。
「努力」が結果に結びつかないこと自体は悔しいことですし、それを
簡単に納得しないからこそ、次につながるのではないでしょうか。
■ 最近読んだ新刊で・・・
これを、うまく説明してくれている本がありました。
(最近購入した新刊です)
(『』内は引用です)
『 いま企業を支配しているのは「パフォーマンス・カルチャー」。がんばろうが、
がんばるまいが関係ない。大事なのは実績であり成果だという考え方なのです。
こういうと、「じゃあ、努力は評価しないのか」という反論がすぐにあがります。
そんなことは、いってない。努力はもちろん大変だし、他の人より努力しなけれ
ば、仕事というゲームには勝てません。ただし、評価の対象はあくまで、努力
ではなく成果なのです。
それでは、成果をともなわない努力は無駄なのかといったら、それも違います。
そのときは、なぜ成果が出なかったのか考えに考えて、それを次の仕事に活かせ
ばいいのです。そうやって倦まずたゆまず努力を続けていれば、いずれそれは必
ず成果に結びつく。だから、努力は決して無駄にはならないのです。』
私が「ムダな努力」は存在しない(存在させないようにしなければいけない)と
思っているのは、まさにこの文章と同じ理由です。
ちなみに、上記の引用は↓この本からです。
「残業ゼロ」の人生力
「デッドライン仕事術」の著者、吉越浩一郎さんの新刊です。
この本、またあらためて紹介したいと思いますが、私も考えさせられる
ところがある本で、おすすめします。
■ 「ムダな努力」になるかどうかは自分しだい
さて、先の言葉(これは私の言葉です)、
「ムダな時間」は存在しても、「ムダな努力」は存在しない
は、こう言い換えた方がいいかもしれません。
「ムダな時間」を無くすことも重要だが、
「努力」を「ムダな努力」にしないことはさらに重要
「努力」を「ムダな努力」にしてしまうかどうかは、
自分しだいだということです。
うーん。もっといい言い方があるような気もするけど・・・(汗)
とにかく、「ムダな努力」という言葉は禁句にしたいなと思うわけです。
今日の記事作成時間は39分でした。
では、また明日!
「上級の時間術」
こんにちは。水口です。
今日は本の話です。
■ 上級の時間術
自分の執筆中には、他の人の「時間術」系の本は
基本的に読まない私ですが・・・、この本はちょっと特別です。
上級の時間術
小石雄一さんの「上級の時間術」という本が出ました。
小石さんは時間の使い方や、人脈作りの本など、
多数の著書を書かれている方です。
この本、なんと26冊目とのこと。
今、3冊目(教材執筆を入れて4冊目)の
私から見るとすごい数です。
ご存じない方のために・・・、
小石雄一さんは「週末の達人」という勉強会を運営されています。
私も講師を勤めることがあるので、このブログでも時々紹介していますが、
もちろん、私以外の方が講師を勤める勉強会もあります。
実は、その数はすごいんです。
・・・といいつつ、正確な数は把握していないのですが(汗)、
週2〜3回以上は、ゲスト講師を呼んでの勉強会を開催されていると思います。
勤め人でありながら、週に何回もの勉強会を運営し、
また、自らも講演を引き受け、本も執筆する。
しかも、それを継続している(20年!)って、すごいことだと思いませんか。
これは、なかなかできることではありません。
さて、小石さんの「時間術」系の本は、これまでにもたくさん出ています。
私は過去に出版された時間本はほとんど読んでいるので、
もちろん小石さんの本も読んでいます。
読んでいて感じたのは、小石さんは基本的な部分で、とても
合理的な考え方をされていることです。
たとえば、時間(あるいは人生)についての考え方として、
「なにかを得ようとすれば、なにかを手放さなくてはいけない」
という基本的な原則があります。
もちろん、効率を上げることも重要ですが、時間が有限なものである以上、
「何に集中するか?」という選択はとても重要です。
小石さんはその選択において、すごくしっかりした「軸」を
持っている人だと感じます。
ですから、自分の目標に対して、合理的な「行動」を取れるということです。
(「合理的な判断」で止まらず、行動まで移しているところもポイントです)
そして、今回の本、 「上級の時間術」はどういう本かというと・・・、
この本には、小石さんの体験や考え方が込められています。
きれいごとではなく、生々しい話もあります。
そして、そこから学べることが大きいと思います。
表面上のノウハウだけでなく、考え方や行動への移し方の部分でです。
■ 「やらないことを決める」 には痛みがともなう
たとえば、時間の使い方の話には、
「やりたいことをやるためには、やらないことを決めること」
という考え方がよく出てきます。
この話は、考え方としては非常に正しいです。もちろん私も意識しています。
(企業における、事業分野の「選択と集中」という概念とも同じです)
しかし、そういう話を聞いて、「そうか!」と納得した人の中で
実際に行動できている人は少ないです。
なぜなら、「やらないことを決める」ことには、必ず痛みがともないます。
人間、「何かを捨てる」という決断はなかなかできないものです。
そんな自分を変えたい人には、特にこの本をおすすめします。
おすすめの読み方は・・・、
ひとつひとつのノウハウに対して「自分に当てはまる」「当てはまらない」と
取捨選択しながら読むのではなく、著者が選択の「軸」をしっかり持っている
(自分の頭で考えて築いてきた)ことを読み取ってみてください。
そういう読み方をすれば、ノウハウ主体の本とは違う、大事なものが
得られると思います。
小石さんはよく「考えるだけでなく、行動しよう」という意味のことを
おっしゃいますが、その真意が伝わってくる本でもあります。
気になった方は、ぜひご一読を。
小石さんと私は、「時間」つながりでもありますが、
「金沢市出身」つながりでもあります。
本の中に「バッグに折り畳み傘を常備」というエピソードが
あるのですが、これって金沢出身らしい技ですね。
(金沢という街は雨が多いので、折りたたみ傘が重要です)
今日の記事作成時間は67分でした。
では、また明日!
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