「判断」と「決断」の違いって?
こんにちは。水口です。
ちょっと前の話になりますが、このブログのこの記事↓にコメントを頂きました。
「要因と原因の意味の違い」 「要因と原因の使い分け」について
コメントをくれた羽さんが紹介してくれたのが、このサイト↓
(ありがとうございます!)
Difference Between Cause and Factor | Difference Between | Cause vs Factor
「differencebetween.com」というサイト(英文)です。
文字通り、「○○と□□の違い」についていろいろな記事があります。
で、そのCause(原因)と Factor(要因)ですが、
この二者は取り替えが効かない(意味が異なる)という記述の後、
Cause(原因)の方は、ある結果を生み出したもの。
(「the producer of an effect」とも言い換えられると書かれています)
Factor(要因)の方は、(物や手順、プロセスなどに)影響を及ぼすもの。
(ただし、学術などの分野によって、意味するところが微妙に違うとも
書かれています。たとえば、数学ではfactor=因数だったりしますね)
という意味のことが書かれています。
この説明は、分かりやすいですね。
とりあえず、私は自分のイメージとほぼ同じで安心しました。
■ 「判断」と「決断」
そして・・・、この話(原因と要因)で思い出したのですが、
「判断」と「決断」の違いも、案外分かりにくいかもしれませんね。
広辞苑によると
「判断」は 『ある物事について自分の考えをこうだときめること』
「決断」は 『きっぱりときめること』
とあります(両方とも一部引用です)
普通に決めると「判断」で、きっぱり決めると「決断」なのでしょうか・・・。
それだと、ちょっと変ですよね。
そんなことを書いたのは、最近こういう本↓を読んだからです。
(2月発売の本ですが、私は割と最近、書店で見つけて購入しました)
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判断と決断 ―不完全な僕らがリーダーであるために
著者:中竹 竜二
東洋経済新報社(2011-02-18)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る
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著者は早稲田のラグビーの監督をされていた方で、4年間の在任中に
全国大学選手権で2連覇した方です。現在は日本ラグビーフットボール
協会コーチングディレクターを務めているそうです。
上記の本も、そのラグビーの監督をするという立場でのエピソードが
書かれていますが、大きなテーマになっているのが「判断」と「決断」。
(『』内は引用です)
『 判断と決断の一番の大きな違いは、その時間軸にある。
判断は過去から現在に起こった事柄について下すもの。
決断は未来に起こり得る事象に対して下すもの。』
『 そして、出発点と終えたあとの状態が違う。
判断をすべきときは、ことの大小はあれ、人が「混沌」の中にいるとき。
として、判断を終えたあと、ものごとはある指標・基準において整理され
た状態になる。
決断すべきときは、人が選択肢を前に迷っているとき。決断を終えた
あと、人は新しい一歩を踏み出し、選んだゴールや方針に向けて行動を
起こす。』
とあります。
言われてみれば当たり前という感じもしますし、おおむねこういう意味合いで
使ってはいますが、言葉として厳密に使い分けているかといえば自信がない。
私はそんな感じでした。今後は意識して使い分けてみようと思います。
もっと簡単に言うなら・・・。
「判断」はある種の「頭の整理」。
「決断」はある種の「意思決定」。必ずその後に「行動」がともなう。
と言ってもいいかもしれません。
そして、仕事でも何でもそうですが、たいていは判断(現状分析など)をしてから
「決断(意思決定して行動に移す)」ことが多いもの。
本書では、
判断が甘いと、決断もそれに引っ張られてしまう(その結果失敗することもある)。
だから、判断は非常に重要。
しかし、あくまでも、判断は決断の一つの材料にすぎない(判断は過去の事象
に基づくもので、決断は未来に起こり得ることも含めて考えるべきだから)。
という主張がなされています。
個人的には、未来に起こり得る様々な事象(や影響する要因)を想定することが
「判断」に含まれる場合もあると思うのですが・・・ (たとえば、メーカーにおける
品質保証などでも、(これまでにはなかったけど)起こり得る不具合を想定して
その影響度等を整理し、判断する手法があります)。まあ、それは置いておいて、
『 強い決断とは、単にいくつかの選択肢から方針を決めることではない。
決めたゴールに向かって踏み出し、それを実現するために行動していくこと
だと僕は思う。』
という著者の主張には、激しく同意します。
微妙に話が変わるかもしれませんが・・・、
組織のなかには、「判断材料を集めることばかり指示して、肝心の決断を
なかなか下せない人」もときどきいます。これこそ(あえて厳しく言えば)、
「時間のムダ」ですよね・・・と思います。
今日の記事作成時間は60分でした。
では、また次回!
『会議室なんていらない』と主張する本。おすすめです。
こんにちは。水口です。 今日は「会議」の話です。
■ 時の記念日に見直したい 「会議」での時間の使い方
この↑見出しは、10日の「時の記念日」という機会に「時間の使い方」を
見直してみませんか? という主旨です。
ちなみに、私が Asahi.com(朝日新聞社)で連載している記事です。
(記事はこちらです↓)
asahi.com(朝日新聞社):時の記念日に見直したい「会議」での時間の使い方
- ショッピングコラム「となりのビジネス達人」
「会議での時間の使い方」「会議の時間短縮」は、企業向けの講演でリクエスト
されることも比較的多く、これまでにもしゃべってきましたし、本にも書いたりして
きました。上記の記事はその一部抜粋という感じです。
「会議は定刻にスタートする」
「予定の時刻に終わらせる」
「会議の席で資料を「朗読」しない」
「議事録は素早く配る」
(議事録作成に手間をかけない)
といったテーマを取り上げています。どれも当たり前ですが、これらが徹底されて
いる会社は少ないはずです。
おそらく、どの会社も昔(15〜20年前頃)と比べると会議の効率は上がっては
いると思います(※昔はもっとひどかったということです)。それでも、本当に効率
よく会議が運営されている会社は、まだまだ少数派です。
■ 「そうそう!」と言いたくなる? 会議不要論
さて、その会議に関して・・・ こんな意見もあります。
(『』内は引用です)
『 私にとって、とりわけムダに思えてならないのが、会議である。かつて私も、
ムダな会議を繰り返してきた一人である。メンバーが会議室に集まっても、
なかなか本題には入らない。ようやくはじまっても、発言するのはせいぜい
二〜三人。そても報告書を配って、読み上げるだけだったりする。揚げ句に、
何も決まることなく「しっかりやろう」で終了。行動はなし。貴重な時間が浪
費されている。しかも書類作成と同様、出席することが「仕事」と思っている
者や、勉強の場と考えている者もいるから、余計に困る。』
(115ページより引用)
上記記事の私の言い方よりも、もっと激しく、ある意味痛快に「会議」の弊害
について語っています。
これらには私も基本的に賛成です。「発言しない人間は会議に出席するな」と
私も思っています。でも、普通はここまで厳しい言い方はできないものです。
大胆に、しかも実行力を伴って、組織改革を断行してきた企業トップだから
こそ、言えることかもしれません。
というこの文章、こちらの本↓からの引用です。
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壁を壊す
著者:吉川 廣和
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2007-11-02
おすすめ度:
クチコミを見る
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「DOWAホールディングス(旧同和鉱業(株))」という歴史のある会社、言い換え
れば古い体質の会社の組織改革を断行した、吉川廣和氏(現同社会長・CEO)
が書かれた本です
この本、仕事上、会社や組織の「改革」に関わる人は必読です。
ノウハウ本というよりは、「会社改革ドキュメンタリー」という感じで、その分凄み
もありますし、考え方に筋が通っています。参考になるところが多いのは保証
します。
■ 会議室なんていらない?
さて、上記の「会議」の話には続きがあります。吉川さんは本社オフィスを縮小
した際に、なんと会議室そのものを無くしてしまったそうです。
(オフィスはフリーアドレスなので、適当な打ち合わせスペースはあります)
これが当初不評だったそうですが、興味深いのがその後の話。
会議室を無くした後、こういうルールにしたそうです。
・ 会議室を使いたければ、同じビル内の貸し会議室を使う
(費用はその部署もちで)
・ あるいは、本社から車で20分の研修センターを使ってもよい
(移動費用は会社負担してくれる)
こう決めると、結局、そこまでして「会議室を使おう」という部署はほとんど出て
こなかったそうです。そこまでやるほど「本当に重要な会議」は実はほとんど無か
ったということです。
吉川さんは
『会議室がなければ使いようもないが、あれば使いたくなるのが
サラリーマンというものかもしれない』 (117ページより引用)
と述べていますが、確かにそうかもしれませんね。だからこそ、形から入る
(会議室を無くしてしまう)のが効果的かもしれません。
【余談です】
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私は経験上、同じような内容の打ち合わせなら、「会議室」を使うよりも、
「オフィス内のテーブル」を使った方が、打ち合わせが早く終わる気がします。
なぜ会議室だと長くなりがちなのか? その理由は分かりません。
「わざわざ会議室を取ったから使わなきゃもったいない」と思うのか?
会議室は他から見えないので気が緩んでしまうところがあるのか?
どうなんでしょうね・・・。
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さて、あなたの会社の会議は、どうでしょうか?
本当にその会議には「そのメンバー全員」が必要で、「その会議室」が
必要で、「それだけの時間」が必要なのでしょうか?
考えて(考えてもらって)から会議を開くようにしてみてはいかがでしょうか。
今日の記事作成時間は54分でした。
では、また明日!
「言うは易く行うは難し」の○理論と 「無難な」○理論、どっちを取るか?
こんにちは。水口です。
今日は、用語解説でもあり、経営のあり方やリーダーシップにも関連した
話です。
■ 「性悪説」的なX理論と「性善説」的なY理論
こんな記事がありました。
「性善説」経営 vs 「性悪説」経営。あなたの会社は?
(プレジデント) - Yahoo!ニュース
(『』内は引用です)
『 不況で業績が悪化すると統制的な手法で組織を締めつけ、業績を上げよう
と試みる経営者が多くなる。一時的には業績が上がるかもしれない。ただ、長
い目でみると多くの場合、従業員の士気を低下させ、組織を疲弊させるだけ
の結果に終わる。
この問題を考えるうえで参考になるのがマグレガーの「X理論・Y理論」である』
『 X理論とは、単純に言うと性悪説である。人間は生来怠け者でできるだけ
仕事をしたくないと思っている。従って大抵の人間は統制や命令、あるいは
処罰で脅されなければ企業目標の達成に十分な力を出さない。また、普通
の人間は命令されるほうが好きで、責任を回避したがり、安全を望むという
考えである。
これに対しY理論は性善説である。人間は生来仕事が嫌いということは
なく、条件次第で仕事は満足感の源にも懲罰にもなる。従って統制や命令、
処罰だけが企業目標の達成に力を発揮する手段ではなく、やりがいのある
仕事を与えれば人は自ら働く。また、普通の人間は条件次第で責任を引き
受けるばかりか、自ら責任を取ろうとするという考えである。』
(上記サイトより引用)
とあります。
この「X理論・Y理論」というのは割と有名なものですが、そう話題になるもの
でもないので、初耳の方も多いかもしれません。
こちらの本↓に書かれているものです。
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企業の人間的側面―統合と自己統制による経営
著者:ダグラス・マグレガー
販売元:産能大学出版部
発売日:1970-08
おすすめ度:
クチコミを見る
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↑古い本のせいか? 写真がありませんね・・・。
※ この新版が刊行されたのが1970年。今のビジネス書ほど字が大きくない
ですから、ページ数以上にボリュームのある本です。私が読んだのは昨年
だったと思います(多分)。
さて、X理論、Y理論に話を戻します。
X理論は、「性悪説」的。人をまとめるためには、「アメとムチ」を使わなければ
いけないという考え方に近いです。
Y理論は、「性善説」的。人をまとめるためには、「やりがいのある仕事」や、
「魅力的なビジョン」が重要だという考え方に近いです。
これは、人は本来どちらの性質を持っているか? という議論をするのが狙い
ではなく、「どちらの方針で経営するべきか?」という、思想的な側面が強い
話です。
■ 現在多くの企業が「X理論」に走りがちでは? という話
先の記事では、
『 また、経営者が短期的な成果を追いかけると、X理論的な方向へ行き
がちになる。厳しいノルマを課し、裁量は与えず、目標を達成できなかったら
ペナルティで追い立てる。しかし、そんなやり方をしたら会社がおかしくなって
しまう。 』
『 見方を変えると、(Y理論のアプローチでは) 時間をかければ会社を良く
できるということでもある。業績が低迷すると短期的な数字を求めX理論
に走りたくなるが、そこを辛抱するのが真の経営者である。
Y理論に基づいた経営を行えば、社員のミスも出てくるだろうし、すぐV字
回復ということにはならない。だが、それを承知で10年先、20年先には必
ず良くなるという長期的視野で取り組むことが大切だ。
そうすれば社員も「ここは良い会社」と感じて懸命に働いてくれるだろう。 』
(上記サイトより引用。括弧部のみ追記)
とまとめられています。
私も、この考え方には基本的に賛成です。
「どちらのアプローチが業績を上げられるか?」という点について、なかなか
定量的な議論はできないのですが・・・。
「X理論」、つまり、アメとムチ(報酬やペナルティ)によってやる気を引き出す
やり方には限界があると考えています。
(3倍報酬が出ても、3倍やる気になることは実際には無いわけです)
一方、「Y理論」的な、仕事の面白さ、事業の社会貢献や「やりがい」といった
ものが人の力を大きく引き出すことは、大いにあり得る話です。
「Y理論で経営すべきだ」というのは、ある部分「きれいごと」的な面もあります
が、それに近いチームや組織が実際にあるのも事実であり、実現不可能だと
いうわけではありません。
もちろん、働く側から見て「Y理論」的な経営の方が魅力的なのは、言うまでも
ないことです。
しかし現在は、たとえば「成果主義」や「株主重視の経営」「雇用の不安定化」
等々、社会としても企業としても、短期的な側面に注目がいきがちですし、
「X理論」的な側面が強くなっているように思えます。
■ 「言うは易く行うは難し」のY理論と 「無難な」X理論
「Y理論」には「言うは易く行うは難し」の面があります。
たとえば、組織のモラルが低下していたりする場合は、まずはX理論的な
アプローチが必要なこともあるでしょう。
また、ちょっと変な話ですが、仕事自体のやりがいが全然無かったり、
最悪の場合、仕事の中で「人をだます」ようなことをしなければいけない
場合は、Y理論は意味がありません。
つまり、
最高のX理論経営 < 最高のY理論経営
最低のX理論経営 > 最低のY理論経営
となるわけです。そういう意味では、「X理論経営の方が無難」 ということに
なるわけですね。
実際のところ、「ビジョン」を掲げている企業は多いですが、それが「Y理論」的
に有効に機能している例は、それよりもずっと少ないわけで・・・、そう考える
と、ついついX理論的に走りがちになるのも理由があるわけです。
それはそれとして、「それでも、Y理論による経営を信じる」 そんな経営者が
増えることを望みたいですね。私はまだまだですが、できればそうありたいと
思います。
もちろん、あなた自身もそうあってくれるとうれしいです。
(「今はまだ」という方も将来は分らないですよ)
そのためにも、「X理論・Y理論」という言葉を覚えておいては
いかがでしょうか。
補足です。
こちらも参考になると思います。
ダグラス・マグレガー X理論とY理論
|世界のビジネスプロフェッショナル 思想家編|ダイヤモンド・オンライン
今日の記事作成時間は55分でした。
では、また明日!
『俺は、中小企業のおやじ』 おすすめ本:経営者の方はぜひご一読を!
こんにちは。水口です。
『俺は、中小企業のおやじ』 というタイトルは、私のことではありません。
(私もオジサンですが(笑)、「中小企業」というよりは零細企業です)
そのタイトルの本が、面白いんです。
■ 「俺は、中小企業のおやじ」 鈴木修著
昨日の私の新刊について、もう少し説明しておきたいのですが、
その前に、ぜひとも紹介しておきたい本があります。
こちら↓です。
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俺は、中小企業のおやじ
著者:鈴木 修
販売元:日本経済新聞出版社
発売日:2009-02-24
おすすめ度:
クチコミを見る
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著者の鈴木修氏は、自動車の「スズキ」の会長兼社長の方です。同氏が
(おそらく)最初で最後の著作として書かれた本だそうで、興味があって読ん
でみました。
ビジネスのスキルやノウハウということではなく、経営のあり方の1つのモデル、
考え方として、経営者の方(とそれを目指す方)には、一読をおすすめしたい
本です。
■ スズキという会社
現在の不況下において、スズキという会社は、赤字を出さずに運営している、
少ない自動車メーカーの1つです。
昨年に、他社に先駆けて減産して在庫を減らしたのが良かったと言われて
いますが、その減産を決断したのが、その鈴木修会長です。
ですから、「先を読み」「トップダウンで指示を出す」、いわゆる「カリスマ」的な
経営者像を想像してしまいます。そんな興味を持って、上記の本を読んで
みましたが、良い意味で予想が外れたという感じです。
ちなみに、この本には特別な経営ノウハウ的なものは、あまり無いように
思えます。
書いてあることは、基本的に「当たり前」のことばかりです。
私が思うに、そのポイントは3つ。
自社の強みを活かすこと
(また、強みを作ること:インド進出の話など)
堅実に経営すること
(無駄を無くすことや、現場重視という姿勢も含めて)
顧客視点を持つこと
(「アルト」開発の経緯や、ディーラーのトイレの改善の話など)
どれも、当たり前のことです。ただ、この当たり前のことに、とても誠実に取り
組んできたことがこの本からうかがえます。そこに、強さや凄さを感じます。
そしてもう1つ、この本にはいくつもの失敗談や著者の反省が語られています。
これは、大企業(←あえてそう呼ばせてもらいます) の経営者が書いた本では、
ちょっと異質に感じます。
経営上の判断について、素直に失敗を認めることは、なかなかできるものでは
ありません。普通は「そういう判断をせざるを得なかった」という理由(ある意味
言い訳)を示すものです。大きな会社、上の役職になるほど、そういうものです。
(これも一種の「大企業病」です)
それを鈴木会長は、あっさり反省点を述べられていたりします。そこに驚かされ
ます。
他の会社と比較してどうというわけではありませんが・・・、確かにスズキには、
「ワンマン経営」的なところがありますが、その分、逆にいわゆる「大企業病」的
なものは非常に少ないのではないかと思います。(3兆円企業なのに)
そこもスズキの強みなのかもしれません。
■ 「トップダウン・イズ・コストダウン」
鈴木会長がGMの会長に言った言葉として、
「トップダウン・イズ・コストダウン」
という言葉が出てきます。
これは、プロジェクトの話がなかなか進まないことに業を煮やした鈴木会長が
GMの会長に言った言葉だそうです。正確には、
(『』内は引用です)
『 ミーティングやリサーチばかりでノー・ディシジョンでは困る。スズキなら
ファイブ・ミニッツで決まる。
ボトムアップ・イズ・コストアップ、トップダウン・イズ・コストダウン』
と言ったそうで、通訳無しで通じたというのが面白い話です。
この真意は、「会議、会議ばかりで決断を先延ばしするのはやめよう」と
いう意味だと思います。大企業にありがちな「熟慮に熟慮を重ねる」的な、
意思決定の先送りはやめようということです。
(決して「ボトムアップ」をすべて否定しているわけではないと思います)
実際、「意思決定を早く」することは、無駄な仕事を減らすことにもつながる
わけで、メリットがとても多いものです。
※ 逆に、「熟慮に熟慮を重ねる」式の意思決定では、何度も調査や試算、
資料や報告書作成がくり返されます。それにどれだけのコスト(時間)が
かかっていることか・・・。普通の企業にいると、そういう例はよくあります。
これは、トップの力量が問われることでもありますし、誰にでもできることでは
ない。でも、厳しい状況下ほど、そういうリーダーが必要になってきます。
ですから本書は、現在のこの状況でこそ、経営者の方に読んでみてほしい本
です。経営者の方はぜひご一読を。
また、単純に読み物として見ても面白いと思いますし、読むと元気の出る本
ですから、経営者以外の方も、興味があれば読んでみてください。
私としては今月読んだ本で、今のところベストです(← 自分の本以外で・・・)
今日の記事作成時間は46分でした。
では、また明日!
「プロジェクトマネジメントで克つ!」: プロマネ本ではなく、リーダーのための本です
こんにちは。水口です。
今日は昨日に続いて、年末年始に取り寄せて読んだ本の話です。
■ 「プロジェクトマネジメントで克つ!」
新しい本ではないのですが、最近この本↓を読みました。
プロジェクトマネジメントで克つ!
著者:宮田 秀明
販売元:日経BP社
発売日:2002-07
おすすめ度:
クチコミを見る
著者は東京大学工学系の教授で、海洋工学を専門にされている方です。
レース用のヨットを開発し、「アメリカズカップ」という世界最高峰のレースに
挑んだ経歴を持つ方です。
ちなみに、この本は「プロジェクトマネジメントで克つ!」というタイトルですが、
「プロジェクトマネジメント」について解説した本ではありません。
※ 一般的に、「プロジェクトマネジメント」と言うと体系立った計画作成と管理
の手法のことを指しますが、この本にはそういう話はほとんど出てきません。
出てくるのは、「プロジェクト」を進めていく中での「マネジメント」の話、言い換え
れば、「チームマネジメント」という感じです。
本の内容は、そのアメリカズカップへの挑戦の経緯の話がメインで、その中に
チームをマネジメントするための考え方が、ところどころに配置されています。
私は元が技術屋なこともあり、全体として面白く読めたのですが、技術的な
話が苦手な方は、ちょっと読みづらいかもしれません(ヨットの開発・レースに
おける戦略の立て方などに興味深い点が多く、役に立つと思うのですが)。
もし挫折しそうな場合は・・・、ところどころに配置されているチームマネジメント
の考え方の部分だけでも読んでみてください。
というわけで、おすすめの部分を紹介しておきます。
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p.32 「創発パターン」
p.45 「チーム編成」
p.55 「スカンクワークス」
p.67 「リーダーのスキル」
p.100 「デザイン」
p.184 「ミーティング」
p.192 「意思決定」
p.226 以降 (第9章全部)
―――――――――――――――――――――――
個人的には、これらを読むだけでも、中途半端なビジネス書より役立つように
思います。いずれも著者の経験を踏まえた独自性がある話なので、人によって
は「目からウロコ」になるかもしれません(特にマネジメント経験のある方は)。
どちらかというと、すでにマネージャーやチームリーダーの役割に就いている人
におすすめの本です(そうでない方も、やる気があれば是非ご一読を)。
■ 目標の3つの形
本の内容から1つ紹介します。
著者は、目標には3種類の形があると言います。
(『』内は引用です)
『一つは数字にできるほど合理的思考の延長上に据えられる目標である。
例えば「5年以内に収入を倍にする」「時速300キロの営業運転を実現させる」
「経費を2割削減する」「パソコン用のCPUで1ギガのクロック数を実現させる」
などだ。
もう一つは、目標がビジョンとして与えられる形である。「月に行こう」「ガンを
撲滅しよう」「この分野で世界一になろう」などがこの形に当てはまる。
最後の形は、少しいいかげんである。「何でもいいから楽しいこと、役に立つ
ことをしたい」という具合だ。ランダムな発想で、意欲だけが頼りである。
三種類の目標の類型に沿って、三つの創発プロセスのパターンがある。
「合理的計算型」「ビジョン駆動型」「ランダム思考型」である。 』
(32〜33ページより)
この文章を読むと、1つめが「数値で表せる目標」、2つめが「数値で表せない
目標」のようにも取れますが、著者の言わんとしていることは、そうではなくて、
こういうこと↓だと思います(以下は私の解釈です)。
□ 合理的計算型
1つめは、目標達成の「ゴールまでの道筋が見える」タイプの進み方です。
(必ずしも成功するとは限りませんが)、どういう課題をクリアすれば目標に
到達できるかが見えているわけです。
この場合、ゴールから逆算して計画を立てていくことができます。
□ ビジョン駆動型
2つめは、「遠くに目標があり、方向が見える」タイプの進め方です。
その目標に到達するのはいつになるか分からないが・・・、進むべき方向
は見えているわけですから、道をそれることはあまりありません。
「ゴールまでの最短距離を目指す」というよりは、理想を追い求めて、
研鑽し続けるというイメージもあります。
□ ランダム思考型
3つめは、「面白そうなら、いろんな方向を試してみよう」という進め方です。
やってみなけりゃ分からないのを前提に、「いろいろ試してみる」わけです。
道そのものが初めから無いということです。
もちろん、失敗も多いわけですが、思いもよらない大きな成果が得られる
こともあります。
そして著者は、『しっかりした組織は、三つのパターンをうまく組み合わせる』と
述べています。言われてみれば、確かにそうかもしれません。
たとえば、私にとって身近な例で言うと、
研究開発部門 → 「ランダム思考型」
(新製品を開発する)
生産技術部門 → 「合理的計算型」
(製品を量産化する)
製造部門・品質管理部門 → 「ビジョン駆動型」
(製品の品質・生産性を継続的に高めていく)
に近いイメージです (実際には単純には分けられませんが、これらの要素
が強いのは事実です)。
そして、会社全体としての経営方針には、このすべてが含まれるわけです。
■ 「成功法則」の嘘?
ここからは、上記の本から外れた話に入っていきます。
私は、先の話は、会社だけでなく個人でも同じだと思います。
たとえば、いわゆる「成功法則」的な話として、
・ゴール(目標)を明確に設定すること
・そのゴールから逆算して計画を立てること
・その計画を実行していくこと
を行えば目標を達成できる。といった話があります。
これは、上記の「合理的計算型」の考え方です。
「目標の明確化」や、「逆算して計画すること」は、日常の時間管理
でも大事なことですし、理にかなったことです。
ただ、長期的な目標、あるいは「人生」というプロジェクト全体を通して
みれば、必ずしも「合理的計算型」だけでは進まないものだと感じます。
たとえば、「資格を取得する」「会社を立ち上げる」等の具体的な目標には
「合理的計算型」が役に立ちます。
あるいは、「年収いくらになる」という目標を持って、「合理的計算型」で
進んでいくことも大事だと思います。
しかし、人間それだけでは生きていけないように感じます。
「高い志を持つ」という、「ビジョン駆動型」がやる気を高めてくれますし、
「分からないなら、考えるよりもやってみる」という「ランダム思考型」に
チャレンジするのは、それ自体がワクワクするものです。
「合理的計算型」が有効だというのは正しいと思いますし、それが前提に
あって構わないのですが、それがすべてじゃない。と私は考えています。
でも、現在は「合理的計算型」の「成功法則」にとらわれてしまっている
人が増えつつある気がして、ちょっと気になります・・・。
そういう意味で、この3つの分類で考えてみるのもいいかもしれませんね。
※ ちなみに、目標の類型はこの方法が唯一のものというわけでは
ありません(私自身はこれと似た考え方を使っていますが、分類は
4つで考えています)。
今日の記事作成時間は91分でした。
では、また明日!
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