2005年09月24日     このエントリーをはてなにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク

時間管理術の7つの嘘 その5 : 人にまかせれば、うまくいくのか? (4)

  重要な仕事をするための時間を確保するには、
  まかせられる仕事は人にまかせる。


この考えは、時間管理・タイムマネジメントについて書かれた本には、
必ずといっていいほど登場します。

これは確かに、うまくやれば効果的です。しかし、そこに落とし穴が
あることは、前回までに述べてきたとおりです。



残念ながら、この落とし穴について書かれた本はほとんどありません。


その理由は、それらの本が個人の時間管理について書かれた本だから
なのでしょう。私が述べた落とし穴は、「組織をマネジメントする」
という領域の話になってしまうのです。

しかし、私は「人にまかせる」ことを考える上で、組織として見る視点は
外すことができないものだと考えています。

その方が、結果として、個人の仕事もスムーズに進むように思えます。
(その理由は最後に述べます。)



では、私の考える「組織として見る視点」について以下に述べます。
3つあります。


1−そもそも、その仕事は必要なのか?というところから
  考え始めるべきである。

  自分がやることになるなら、その仕事はやらない。

  という仕事でも、

  人がやってくれるなら、「まあ、念のためにやっておこう」
  と判断してしまいがちです。


  これが極端になると、自分が手柄を立てるためには、
  人は使えば使うほど得だ、ということになってしまいます。

  このように、安易に人に頼むことは、実はすごく利己的に
  なってしまう可能性があるのです。


  こう考えてみてください。

  そのように、周りの人の仕事をムダに増やす人が、あなたの
  部下にいたとしたら・・・どう思いますか?


  自分がそうならないためには、一段上の視点から見て、
  ムダな仕事をさせていないか?と考えることが必要です。



2−仕事の振り分け方は、個人の能力・手持ち時間を考慮した
  「全体最適」「適材適所」で考えるべきである。

  あなたが2時間かかる仕事が、

  Aさんに頼むと3時間かかる。
  Bさんに頼むと5時間かかる。

  という場合、どちらに頼むべきでしょうか?
  もちろんAさんですよね。

  では、同様に、


  あなたが2時間かかる仕事が、

  Cさんに頼むと10時間かかる。
  Dさんに頼むと15時間かかる。

  という場合はどうでしょうか?


  この場合は・・・、


  どちらにも頼むべきではないです。

  その仕事はあなたがやるべきなのです。

  CさんDさんにやってもらうのは、あまりにもムダが多いです。
  その仕事以外の仕事をまかせるなり、一部をヘルプしてもらう
  なりして、その場は乗り切るべきです。
  
  もちろん、CさんDさんが短時間でできるように、仕事を教える
  必要はあります。しかし、納期が迫っているときに、付け焼刃的
  に教育することは避けるべきです。
  そういう教え方をすると、たいてい失敗します・・・経験談です。


3−各個人のスキルアップと合わせて考えるべきである。

  2で述べたことに合わせて、

 ・その仕事を教えるのにどれだけ時間がかかるのか?

 ・その仕事はどれだけ頻繁にやる仕事なのか?

  ということを考えるべきだと思います。


  めったにやらない仕事から教えてしまうと、教えた方は悲劇です。
  せっかく教える時間を取ったのに、なかなか自分の仕事が減りません。
  気をつけましょう・・・。



「組織として見る視点」として、以上3つをあげましたが、これらを意識
することで、結果として個人の仕事もスムーズに進むことが多いです。

それは、主に感情とモチベーションの影響によるものです。


例えば、

頼まれた仕事が、実は大して重要じゃない仕事だった、と分かったときの、
頼まれた側の心理的ダメージは結構大きいものです。

私はそういう場面を何度か見てきました。


  以前の職場で、いつも仕事を快く引き受けてくれていた人がいました。
  その人は女性で、若いのに母性的な優しい雰囲気がありました。

  いつもは仕事のグチなどを言うことはなかったのですが、あるとき、
  初めてグチを言うのを聞きました。それは、頼まれて、長い時間を
  かけてやった仕事がムダになったことが分かったときだったのです。

  その口調と落胆ぶりは、結構重かったですね。
  それ以来、私の心にちょっと引っかかっています。
  (その仕事を頼んだのが私ではなかったのが救いですが・・。)


  他にも、これに近い例をいくつか見てきましたが、
  それらに共通してることが1つあります。

  ムダな仕事をさせられた相手の仕事に対しては、次に頼まれたときに、
  ちょっと躊躇してしまうのです。
  一度心理的ダメージを受けているから、当然といえば当然です。


この話を教訓とするならば・・・

ムダな仕事を人に頼んでいると、段々と自分の仕事を一所懸命に
やってくれる人が少なくなってくる、ということになります。
職場の雰囲気だけでなく、仕事の生産性にも影響するわけです。

これは、組織の中で働く場合にはボディブローのように効いてきます。
ですから、そうならないための注意はするべきだと思います。




このように、「ほとんどムダな仕事」を人にさせるのはダメですが、
仕事の中には、「ムダになるかもしれない仕事」もあります。

がんばって提案書を書いても、その仕事が受注できなければ、その仕事
は一種のムダと言えるわけです。こういう仕事を頼むときにはどうすれば
いいのでしょうか?


私の考えを一言で言うとこうです。


  「一緒にゲームに参加させること」です。


これがどういうことか、頼まれる側の立場で考えてみましょう。

  頼まれてやった仕事がムダになった場合に、後からその事情を説明
  されたら、どう思うでしょうか?

  いくら説明しても、言い訳のように聞こえるのではないでしょうか。


  もし、頼まれた時点で、その仕事の狙いや背景が説明されていれば、
  どうでしょうか?

  その仕事が、結果としてムダになってしまっても、結構納得できる
  と思いませんか?


これが、「一緒にゲームに参加させる」ということです。

前回の記事で、仕事を頼むときには、最後に背景を説明する。と
言ったのはこういう意味もあるのです。



7つ嘘 その5はこれで終わりです。

今回の記事は人間関係の問題を含んでいますので、結構重いテーマだと
思いますが、いかがだったでしょうか?

私は、今回の記事を書きながら、過去の出来事を思い出したりしたので、
ちょっとヘビーでした・・・。この記事がお役に立つとうれしいです。


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Posted by 水口和彦 at 18:21Comments(2)TrackBack(0)
2005年09月22日     このエントリーをはてなにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク

時間管理術の7つの嘘 その5 : 人にまかせれば、うまくいくのか? (3)


前回は、

  自分の時間が足りなくなり、困ってから、
  人にまかせようとしても、たいていうまくいかない。

  仕事が発生した時点で、人にまかせるかどうかを判断
  した方がうまくいく。

ということと、その理由について述べました。


今回は、人にまかせる場合のやり方について、少し考えてみます。

ロタール・J・セイバルトという人が書いた『時間管理学』という、
とっても大層な名前の本に、『権限委譲の6Wのルール』
というものが出てきます。


これは、人に仕事をたのむ時に、チェックリスト的に使うものとされて
います。以下の6つの要素を明確にしておくべきだということです。

いわゆる「5W1H」をアレンジしたものですが、参考に引用します。

 (『』内は引用です)
『権限委譲の6Wのルール
  何を(WHAT)? 
  誰に(WHO)?
  なぜ(WHY)?
  どうやって(IN WHAT WAY)?
  どんな手段で(WITH WHAT)?
  いつ(WHEN)?        』

  (162ページ1行目より抜粋)


 5W1Hと比べると、「どこで(Where)」が無くなっています。
 人に仕事を頼むときはあまり使わないためでしょう。

 そして、「どうやって(How)」が2つに分かれています。
 上の翻訳があまり適切ではないので、私の言葉で置き換えると、
 「どんな方法で?」「何を使って?」となります。


確かに、人に頼む前にこれらの要素を明確にしておくことは重要だと
思います。

しかし、実際に人にまかせる場合には、これらの要素を伝えれば、
それでいいのでしょうか?



私はそうは思いません。


私が、会社の中で仕事をしてきた経験の中で、いろんなことを頼んだり、
頼まれたりしてきました。その中で、同じことを頼むにもやり方がいろいろ
あることが気になってきました。

  Aさんに頼まれた場合・・・

   話が長いし、結局何をやってほしいのか分かりにくい。
   しまいに聞くのがいやになってしまう。


  Bさんに頼まれた場合・・・
 
   すんなり聞けて、何をやればいいのかが、はっきり分かる。


この人たちの差がどこにあるのかが、気になったのです。

そういうことを考えながら研究した結果、私は4つのステップを
使うようになりました。この順番が重要なのです。


1− まず、頼みたいことをストレートに言う

   今までの、どの職場にもいたのですが・・・
   最初に、「なぜこの仕事をやらないといけないのか?」
   について延々と語る人がいます。

   人に仕事を頼むことに気が引けるのか?
   それとも、断れない雰囲気を作ろうとしているのか?
   それは分かりませんが、 頼まれる側の立場に立つと、
   はっきり言って迷惑です。話がなかなか見えてきません。

   私は、まず用件をストレートに言った方がいいと思います。


2ー 次に、それに伴う詳細な条件を言う

   例えば、私がやっていた仕事の場合、

   何を、どこから、いくつサンプリングして、どの機械を使って、
   こういう条件で測定して、データはこうまとめる。

   といった感じです。

   もちろん仕事の内容によって変わりますが、
   5W1H的な詳細を伝えるわけです。

   このステップはできるだけ簡潔にします。
   相手が分かっていると確信できる部分は、
   省略することもあります。


3− 次に納期を伝える

   ここまで話を聞いたら、「いつまでにできそうか」が、イメージ
   しやすくなっています。ここで仕事の納期について話をします。

   上のステップを言わないで、納期を押し付けるのは、単なる
   「パワハラ(パワーハラスメント)上司」です。気をつけましょう。

   両者納得の上で、気持ちよく仕事をしてもらうことが、相手の生産性
   を高く保つためには必要だと思います。

   ただし、安易に納期を遅らせてもよい、というわけではありません。
   あくまでも、デッドラインを考慮した上での交渉をします。

   場合によっては、納期を優先するために、上の条件を変更することも
   必要になります。


4− 最後に、その仕事の背景を言う

   「なぜその仕事をしなければいけないのか?」ということを相手に
   伝えなくても、おそらく仕事はできるでしょう。

   しかし、これを伝えると、仕事の質が上がることがよくありました。
   相手がもっといい方法を考えてくれたりするのです。

   ですから、私は背景について説明することにしています。
   もちろん相手のモチベーションに影響する、ということもあります。


   しかし、頼む相手が一番聞きたいのは、上にあげた3つの項目です。
   ですから、背景は最後に持ってくるわけです。



以上の4つのステップは、普通に話をするときとは順番が逆転して
いますが、仕事を頼むときには効果的なやり方だと思います。

特にいいところは、相手のやる気が高くても、低くても、
うまく伝わりやすいことです。

また、Eメールを使って伝える場合にも効果的な手法ですので、
一度試してみてはいかがでしょうか?



参考文献
ロタール・J・セイバルト(前回のローター・J・ザイヴァートと同一人物)
(上野 俊一訳)
時間管理学:セルフ‐マネジメントによる成功への道.
産能大学出版部,1992
時間管理学―セルフ‐マネジメントによる成功への道



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2005年09月21日     このエントリーをはてなにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク

時間管理術の7つの嘘 その5 : 人にまかせれば、うまくいくのか? (2)

 重要な仕事に集中するためには、まかせられる仕事は人にまかせる。


と、時間管理本でよく言われていることに対して、
それがうまくいかなかった例を前回述べました。


バタ男の失敗の原因の1つは、

  仕事を人にまかせる動機が、「その仕事を忘れて安心したい」
  というものだったため、適切なフォローができていなかった。
  (フォローすることも忘れてしまった)

  人にまかせる = 嫌な仕事を自分の目の前から消すことになって
  しまっていた。
  (目の前から消したい、という心理がフォローを忘れる原因となった)

ということでした。


しかし、バタ男の行動には、これだけでなく、
もう1つまずいところがあったのです。



それは、仕事をまかせるタイミングです。


「タイミング」といっても、

  相手の機嫌がよさそうなときを狙って頼もう!

といった話ではありません・・・。
(それはそれで処世術として、必要かもしれませんが。)



前回のバタ男の失敗例では、こうでした。

 バタ男が仕事A、B、Cを受けていた
     ↓
 仕事Bに時間がかかり、他の仕事ができなくなってきた
     ↓
 仕事Cを他の人(タレ男)にまかせた


これがまずいのです。
何がまずいかって言うと、順番がまずいのです。

私が言いたいことは、こういうことです。


  自分が困ってから、人にまかせようとしたときは、
  たいていうまくいかない。

  人にまかせるかどうかは、その仕事が発生した時点で
  決めてしまった方がうまくいく。


これは、自分自身の経験や、周りの人の仕事ぶり、そして、
仕事を頼まれる立場にいる人から相談を受けたことをベースに
導き出した結論です。

   簡単なことなのですが、この結論を見出すまでには
   5年は、かかってますので、あまり軽くみないように・・(^_^;)



  ちなみに、この結論には「デッドライン・リマインドの法則」が
  深く関わっています。

  「デッドライン・リマインドの法則」とは、

    人が「その仕事をやらなければならない!」と思い出すのは、
    今からやり始めたら、なんとか間に合う、という時である。

  というものです。思い当たるフシはありませんか?
    ※ちなみに、この法則は別名、「二度寝の法則」ともいいます・・。



自分の手元に仕事を溜めてしまうと、仕事が間に合わなくなりそうな、
ギリギリになってから思い出してしまいがちです。

そうなってから、あわてて人にまかせようとしても、良い結果は
得られないことが多いです。

「人にまかせる」ということは、自分ではコントロールできない不確定な
要素を自分の仕事に持ち込むことと同じです。ギリギリの状況で行うこと
は避けるべきです。


では、どうすればいいのでしょうか?


仕事が重なってバタバタしてしまいがちな人は、普段から仕事を人に
振ることが重要です。

ポイントは、自分の手元に仕事がきたら、すぐに人に振ることです。

忙しくなってから振るのではなく、忙しくなる前からやるのです。
普段は振る仕事の量は少なくてもかまいません。仕事を振る練習を
していると思って、実践することです。


時間に余裕があるうちに、人にまかせること。それが、まかせる側も
まかされる側もハッピーでいられる秘訣の一つだと私は考えます。




  アイゼンハワー方式や、「GTD」のワークフローのように、書類を
  分類する時点で、「人にまかせるもの」を分けてしまうやり方は、
  こういう面でも有効だと思います。

  私のメール術でも、この考え方を一部取り入れています。



 (解説)アイゼンハワー方式とは・・・

   机を4つに区切って、書類などを、
 
   『1.捨てるもの
    2.人に任せるもの
    3.重要(急ぎ)なもの
    4.特別な場所     』

   に分ける方法です。
   (『』内は下記文献の21ページ6行目より引用)



次回は「人にまかせる」ことについて、もう少し考えてみたいと思います。


参考文献
ローター・J・ザイヴァート,ヴェルナー・ティキ・キュステンマッハー
(小川 捷子訳)
すべては「単純に!」でうまくいく.飛鳥新社,2003
すべては「単純に!」でうまくいく
すべては「単純に!」でうまくいく


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Posted by 水口和彦 at 22:12Comments(0)TrackBack(0)
2005年09月19日     このエントリーをはてなにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク

時間管理術の7つの嘘 その5 : 人にまかせれば、うまくいくのか? (1)

いきなりですが、スティーブン・R・コヴィー 著の「7つの習慣」
という本では、このように書かれています。

 (『』内は引用です)
『私たちが目標を達成するには二つしか方法はない。時間を投入して自分で
 実行するか、ほかの人に任せるかのどちらかである。            』

 (243ページ 10行目より)

この本では、人に任せることを『デレゲーション』と呼び、効果的に
人にまかせることが重要だと述べられています。


確かに、人にまかせれば自分の仕事が減るはずですし、その分を重要な
仕事に回せば、仕事がうまく進められるような気がします。

この考えはとても魅力的なものです。
時間管理について書いている多くの著者が、同様の考えを述べています。



でも、本当にそうなのでしょうか?

ほかの人にまかせればOKなのでしょうか?



私はちょっと違うと思います。

人にまかせようとするときには、そこに多くの落とし穴があることを
知っておかなければなりません。

その落とし穴にはまると、人にまかせてうまくいったつもりが、後に
なって、かえってバタバタさせられることがあるのです。



その落とし穴について、考えてみましょう。
また「バタ男」に登場してもらいます。


 とある企業に勤める「バタ男」。いつも間際になってバタバタして
 しまうのが悩みのタネです。自分の時間の使い方を見直そうと思い、

  『できる人の時間活用術! 1日は48時間に増やせる!』

 という本を読んでみました(※・・・架空の本です)。

 そこには、

  「仕事に優先順位をつけて、人にまかせられる仕事はまかせよう!
   そして、重要な仕事に集中しよう! 」

 と書かれていました。


 バタ男は考えました。

 今、彼のToDoリストには、優先順位A・B・Cの3つの仕事が
 あります。今週はBの仕事に思わぬ苦戦をしています。

  「このままでは時間が足りない・・・。」

 そう思ったバタ男は、人に任せることのできる仕事を探しました。
 Cの仕事なら、他の人にまかせても大丈夫そうな気がします。

 「誰かにやってもらおう。」そう思って、バタ男が白羽の矢を
 立てたのは、同じ課の後輩である「タレ男」でした。
 そして、タレ男はその仕事を気持ちよく引き受けてくれました。

 タレ男に仕事を頼んだおかげで、バタ男の心配ごとも減り、安心して
 仕事Bに集中できるようになりました。



 そして、3日後・・・


 バタ男は、納期までに仕事Bを片付けることができました。
 難しい仕事でしたから、今は達成感でいっぱいです。

 仕事Bが片付いて安心したバタ男は、仕事Cを思い出しました。
 Cの納期は明日です。バタ男はタレ男に聞きました。

  「そうそう、タレ男、あれ、もうできてる?」

 タレ男は言いました。

 「いや、まだっす。あのあと、課長に別の仕事頼まれちゃって。
  課長にも困りますよ。思いません?あの人いつもそうでしょ。
  これ、木曜までに頼むよ。とか、急に言ってきて。
  僕はちゃんと別の仕事があるって言ったんですよ。でも、
  課長が言うんですよ、得意先に納める大事な資料だから。
  とかね。大事なんだったら、もっと早く頼めよ、って感じ
  ですよね。こんなんだからウチの会社はだめなんですよ。
  いつも僕言ってるじゃないですか、こんなんじゃダメだって・・・・・


 タレ男の、言い訳ともグチとも取れるしゃべりをBGMに、
 バタ男の意識はだんだん遠くなっていくのでした・・・。
  (ちなみに、タレ男は「文句たれ」だったのでした・・・。)


 そして、その夜、バタ男は夜中まで残業していたそうです・・・。



   ※この話は、一部私の体験に基づいたフィクションです。



なぜ、バタ男のもくろみは、うまくいかなかったのでしょうか?

課長が悪い?、タレ男が悪い? ・・・いや、確かにそうかも
しれませんが、私はバタ男自身にも問題があったと思います。


どこに一番問題があったのでしょうか?

私はこう考えます。

バタ男の失敗の原因は、タレ男に仕事をまかせた時点で、その仕事の
ことをすっかり忘れてしまっていたことにあります。

自分の仕事である、仕事Bに取りかかっている間も、タレ男にまかせた
仕事Cの進み具合をチェックすることぐらいはできたはずです。

それをやらなかったため、タレ男にまかせた仕事が進んでいないことに
気づくのが遅くなってしまったのです。もっと早く気づいていれば、
誰か別の人にたのむなり、課長と交渉するなり、打開策があったはず
なのです。


これは、

仕事を人にまかせる動機が、「その仕事を忘れて安心したい」
というものだった、ことに原因があると思います。

 人にまかせる = 嫌な仕事を自分の目の前から消すこと

になってしまっているわけです。
まさに「臭いものにはフタ」状態です。


仕事をたくさん抱えているときには誰でも、

 「早くその仕事を忘れて、安心したい」

という欲求があると思います。

しかし今回は、仕事の責任はあくまでもバタ男にあるというケース
でした。責任も含めてタレ男に委任したわけではなく、作業を依頼
したわけです。

この場合、バタ男はこの仕事のことを忘れてはいけないのです。

と言うと、すごく当たり前のことのように聞こえると思います。
しかし、これはついつい陥ってしまうワナなのです。
(私も経験しているから言えるのですが・・・。でも、こういう
 経験はしないにこしたことはないですよね。)



そして、バタ男のやり方には、よくないところがもう1つ
あるのです。

それについては・・・次回に説明します。



参考文献
スティーブン・R・コヴィー (ジェームス スキナー、川西 茂訳)
7つの習慣:成功には原則があった!.キング・ベアー出版,1996
7つの習慣
7つの習慣―成功には原則があった!



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Posted by 水口和彦 at 22:33Comments(0)TrackBack(2)

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